全国の販売店トップが集う場で、豊田章男会長が語った創業のDNA。90年の節目を迎える代表者会議で再び心を一つにするために呼びかけた。
2つの悔しさ
金子理事長
一方で、感謝の気持ちが大きくなればなるほど、私にはどうしても拭いきれない2つの「悔しさ」が湧き上がってまいります。
1つは昨年の年間販売台数が150万台に届かなかった悔しさです*。たった今、台数より大切な挑戦をしていると申し上げたばかりですが、国内生産300万台、うち半分の150万台を国内で販売する。これは“日本のモノづくり”を維持する上で、絶対に死守しなければならないラインだと思っております。
*2025年の国内トヨタ・レクサス車登録台数147.8万台(軽自動車を除く)。
昨年、これが達成できなかったことは本当に悔しく、忸怩たる思いであります。もちろん、昨年の147.8万台は、受注停止やクルマが思うように届かなかった中で、J-SLIM(販売物流管理システム)を徹底的に活用したリードタイムの短縮など、工夫を凝らし現場の一人ひとりが汗を流しながら積み上げて来た尊い台数です。
ただ、その中でまだやれる余地があったのではないか。TSL(Toyota Sales Logistics、トヨタ販売物流方式)による現場オペレーションの改善など、もっともっと改善を重ねれば、国内で150万台の販売を死守できたのではないか。
この悔しさは、きっと本日ご参加の皆様もお持ちであろうと思います。
需給全体をみればまだまだ課題は残るものの、メーカーの需給緩和に向けたご努力に報いるためにも、この一年、各社において、物流をはじめとしたさらなる改善を積み重ねるとともに、DNAとして受け継がれた「販売のトヨタ」の底力を発揮し、必ずや年間150万台以上の販売台数を達成したいと思います。メーカーにおかれましても、ぜひ強力な後押しをお願いいたしたいと思います。
2つ目の悔しさは、昨年末に開催されました、トヨタの世界大会「WORLD ARIGATO FEST. 2025」で感じたものです。
本来であれば2020年の世界大会で、日本の販売店の取り組みを世界のトヨタの仲間に向けて紹介する予定でしたが、新型コロナウイルスの影響により、世界大会自体が中止となりました。
今回、改めて世界の仲間に向け日本の取り組みを共有できる絶好のチャンスでしたが、残念ながら、開催地でありマザーカントリーである日本の取り組みがフォーカスされることはなく、大きな悔しさとして残りました。
ましてや、今回の「WORLD ARIGATO FEST. 2025」には、世界の販売店や取引先だけではなく、投資家や自治体関係者も招かれたと伺っております。だからこそ「日本はまだまだ投資する価値がある」「トヨタが牽引するこれからの日本は面白いぞ」と世界に示す絶好の機会だったと痛感し悔しさもひとしおでありました。
この悔しさをバネに、日本のトヨタはまだまだ強くなれる。私はそう確信しております。
昨年、日本のトヨタには大きな変化がございました。「国内販売事業本部」が「日本事業本部」へと改称され、マリン事業やエアロモビリティ事業が合流するなど、母国・日本から陸だけにとどまらず、海や空の移動までを担うモビリティカンパニーへと変革していくという強い覚悟が明確に示されました。
秋には、ウーブン・シティの街開きがあり、「WORLD ARIGATO FEST. 2025」では、陸・海・空の新しいモビリティが披露されました。構想や概念として語られてきたモビリティ社会が、具体的な「モノ」や「形」として示され、いよいよそれを地域に落とし込んでいくフェーズに入ったのだと実感しています。
そうした中、これから、私たちが示すべき価値は、この日本でトヨタブランドをとことん磨き上げ、世界中のトヨタの仲間が、他のメーカーが、こぞって視察に訪れ、憧れとともに目標とするような未来のモビリティ社会をつくりあげることです。
メーカーは、モビリティや技術・サービスを開発し、販売店は、それらを地域やお客様の困りごとの解消にどう活用するか知恵を絞り、実行する。そこに確かなニーズとたくさんの笑顔があるからこそ、持続可能なビジネスとして成立するのだと思います。
メーカーだけでは成し得ない、地域への落とし込み。それには、誰よりも地域、地元を愛し、知りつくした我々トヨタの販売店の力が必要なのです。
「世界に先駆け、この日本から陸・海・空を含めた新たなモビリティ社会をつくる」。こんな夢のある挑戦を一緒にさせてくれるのはトヨタ自動車だけです。
販売店の皆さん、やってやろうじゃありませんか。そしてやるからには、簡単に真似できない、圧倒的に安全・安心で便利な、笑顔溢れるモビリティ社会をこの日本からつくり上げようじゃありませんか。
「世界に先駆け、日本のトヨタが未来を創る」
そんな強い決意のもと、トヨタ自動車の皆様と両輪で力をあわせ、果敢にチャレンジし、次回の「WORLD ARIGATO FEST.」では、世界のトヨタの仲間たちや投資家の方々にその成果を披露し、「日本のトヨタここにあり」「モビリティは日本の文化」と胸を張って言えるようにしたいと思っております。
最後になりますが、この先は全てがチャレンジ。誰にも正解がわかりません。そうした中、勇気ある決断をするのは本当に怖いことですが、かつての先人達は、クルマで日本を豊かにするという強い信念をもって挑戦し、今日のクルマ社会の礎を築きあげました。
そのDNAは、今を生きる私たちにもしっかりと継承されているはずです。今こそ私たちトヨタ販売店がメーカーの皆様とともに、未来のモビリティ社会を創出すべく、新たな夢と希望に向けて挑戦する時です。
我々日本のトヨタ販売店、そしてその集まりがト販協であります。どんな時もメーカーを信じ、ともに歩むパートナーとして、時にはリスクを取りながら未来に向けて挑戦していく、そんな集団でありたい。この場をお借りして、その覚悟をお伝えし、私のあいさつとさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。
「やってやろうじゃありませんか」。右こぶしを高く掲げた金子理事長。その想いを豊田章男会長もしっかりと受け止める。
豊田会長のスピーチは、年頭あいさつでも語ったトヨタ創業の想いから始まっている。冒頭には、年頭あいさつでも使った映像が販売店代表者会議のために再編集されて流れた。