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2023.09.27
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F1 撤退を決めた豊田章男が 14 年経った今"F1 を目指すドライバーの夢"を後押しした訳

2023.09.27

「トヨタ系のドライバーは F1 には乗れない...」ファンでさえそう思っていた。しかしそれを打ち破るような発表があった。そこにある豊田章男の想いとは?

F1 をやめた豊田章男と平川を応援するモリゾウ

前置きが長くなってしまったが、前述の背景を踏まえ、鈴鹿でモリゾウこと豊田章男が話したことをお伝えしたい。

自身のことを「F1をやめた人」と言いながら、なぜ平川選手のF1挑戦を後押ししたのか?さらに、なぜF1の会場まで足を運んだのか?

豊田章男

もともと私は、社長時代に“F1参戦をやめた人”なんです。やめてからもずっといろんな形でレースに関わってきて、どのドライバーも私には言いませんけど、やっぱり彼らは「世界一のドライバーと言われたい」し「世界一速いクルマに乗ってみたい」「そこで自分を成長させたい」という想いがあると薄々感じていました。

「だけど(それには応えられない)なぁ…」と自分では思っていました。その中で、この話(マクラーレンから平川へのオファー)が出たんです。

やはり、ドライバーにとって“自分がクルマとセットで成長できるチャンス”があるなら、そのチャンスを作ってあげる必要があるな…と。それが、トヨタの会長というよりは“モリゾウの役割”なんじゃないかなと思いました。

だから今回、マクラーレンのチームに感謝を伝えたときも“モリゾウとして”、平川選手の応援団的な立場でアナウンスメントに加わりました。

「マクラーレンへの感謝」と「平川選手へのエールを送る」ために、私自身がキャスティングしたのは“豊田章男会長”ではなく“モリゾウ”でした。

自分自身を「トヨタ自動車の会長である自分=豊田会長」と「ドライバーである自分=モリゾウ」を切り分けて話していた。

豊田章男が繰り返し使う言葉のひとつに「ドライバーファースト」がある。モータースポーツにおいて「ドライバーが乗りやすいクルマづくり」を目指すというものであり、トヨタが技術力を詰め込んだ「エンジニアファーストなクルマ」をつくってもダメ、ドライバーの意見にエンジニアがいかに耳を傾けて乗りやすいクルマをつくっていけるかということである。

豊田章男自身がドライバーであるからこその考え方であり、この考え方が浸透してきたからこそ、WRCWECもチーム代表をドライバー(ヤリ=マティ・ラトバラ、小林可夢偉)が務めるように変わってきた。

また、GRヤリスなど市販車開発にもプロドライバーが早期から参画し、その結果生み出される商品というアウトプットも変わってきている。

平川へモリゾウから“同じドライバーとして”の後押し

マクラーレンのリリースに記載された平川のコメントには「モリゾウへの感謝」が綴られており、感謝の宛先は「同じドライバーとして応援してくれているモリゾウさん」と書かれていた。

平川亮選手のコメント(マクラーレンF1チームリリースより)

マクラーレンF1チームにリザーブドライバーとして加入できたことをうれしく思います。ザック(・ブラウンCEO)とアンドレア(・ステラ チーム代表)に感謝しています。

すでにチームに合流してシミュレーターを体験しました。2023年の残りのレースに向けて、準備は万全です。

この場を借りて2つの感謝を伝えさせてください。1目はTOYOTA GAZOO Racingへの感謝です。2つのチーム(TGRとマクラーレン)でドライバーを兼任できるようにしてくれたことに感謝しています。

もう1つは同じドライバーとして私を応援してくれているモリゾウさんへの感謝です。彼は私に「もっと成長できるチャンスがあるなら、そのクルマに乗るべきだ」とドライバーとしてのアドバイスをくれました。このチャンスを活かして、自分が成長した姿を見せて恩返しをしたいと思っています。

モリゾウは同じドライバーとしてどんな応援をしたのか? 記者からの質問にモリゾウもこのように答えている。

モリゾウ(豊田章男)

やっぱりドライバー個人には「世界一速いクルマに乗りたい」という夢があることは確かなんですよね。その夢の実現はトヨタ自動車ではできないという気持ちは、トヨタ育成ドライバーにはあったと思うんです。

決して彼らは口には出しません。私もドライバーとして、ほかのドライバーと話している中で、はっきり言う人はいませんが、そんな“わだかまり”みたいなものがあったと思うんです。

そのようなことで“心を痛めていた”ときに、マクラーレンさんから、ありがたい話をいただいたというのが今回のきっかけだったと思います。

トヨタの育成ドライバーですが、平川というドライバーを見てもらって、ル・マン勝者であることも含め、いろんな評価をしてもらい、リザーブドライバーに選んでいただけました。

このチャンスを活かさない手はないなと思い、平川本人もそういうクルマに乗りたいという意思が明確でしたから、だったら後押しするよということになりました。

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