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2023.09.08
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チームジャパンで宇宙に挑む! ルナクルーザー開発の現在地

2023.09.08

JAXAが2029年の打上げを目指す月面でのモビリティ「有人与圧ローバ」として、トヨタが研究開発する「ルナクルーザー」。その研究開発状況についての報道向け説明会で語られたこととは?

自動車産業と宇宙産業を融合して……

続いてオフロード自動運転。道も地図もない月面でのオフロード自動運転は、月面探査において非常に重要な技術だと、山下は語った。

山下

地上と違いGPSが使えないため、ルナクルーザーは走ったことのない場所で自ら自分の位置を推定し、さらに障害物や路面勾配など周辺環境を把握、安全に走行できる経路を策定しなければなりません。これには大変難しい技術が必要です。


例えば自己位置を推定する航法技術には、電波を用いる電波航法、恒星の位置から姿勢角を推定するスタートラッカー、三次元の加速度から速度、移動量を推定する慣性航法など、課題にチャレンジすべく新たな技術を開発しています。

現在は、RAV4を改造したテスト車両を用い、月面を模したテストコースで自動運転機能の開発評価を進めている。

山下

こうした月面での自動運転技術は、地球上で道なき道を安全に走ることのみならず、災害時における遠隔・自動での状況確認や、危険な地域への物資輸送などにも貢献できると考えています。

最後はUXだ。月面探査ミッションでは、2人の宇宙飛行士が1カ月間、狭い車内で生活することを想定している。

実際の月面探査では、荒涼としたモノクロの月面を、1日最大8時間、6日連続でオフロード走行する必要がある。

そんな状況においては、クルーの精神的負荷が非常に高く、作業効率や意欲の低下につながる。また、目視による走行ルートの判別が困難なため、操作や判断ミスのリスクも高いという。

山下

このような環境の中でも、クルーにはできる限り快適な居住空間と操縦機能を提供し、精神的な負担や、操作ミスのリスクを低減したいと考えています。

この数年間の開発の進捗について申し上げると、原寸大のキャビンモックアップを製作し、リアルな居住空間を想定したさまざまな研究、およびドライビングシミュレーターを用いた検証を着実に進めています。

地球から遠く離れ、限られた狭い空間で極限状態に置かれた人に、安心・快適な移動や、パブリックとプライベートを両立させた健やかな生活を提供する。

こうした研究を通して、自動運転やパーソナルモビリティなどクルマの在り方が多様化する現代において、人中心のモビリティ設計に貢献していきたい、と山下は意気込む。

山下

これまでコアとなる技術について説明してきましたが、ルナクルーザーには、ほかにもさまざまな開発要素があります。

例えば、空気のない月面における放熱、与圧車体の構造、地球との通信など、枚挙に暇がありません。

さらに、これらの要素を1台の月面探査車にインテグレートするための開発が、大変重要です。こうした取り組みは決してトヨタだけではできません。

協業各社様との連携により、自動車産業と宇宙産業を融合させて、29年の打ち上げに向けチャレンジしていきたいと考えています。

トヨタには、「道が人を鍛える。人がクルマをつくる」という思想がある。
過酷さという点では究極ともいえる月面でのモビリティへの挑戦。

それは、佐藤恒治社長が掲げる「クルマの未来を変えていこう」という方針のもと、モビリティカンパニーへの変革を目指すトヨタのクルマづくりに、必ずや結実することだろう。

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