9月22日に初会合が行われた経団連モビリティ委員会。200社を超える申し込みがあったという注目の組織は今、何をしようとしているのか?
基本Ⅲ:初会合で話し合ったことは?
初会合では、自動車産業が果たしてきた雇用、納税、経済波及効果などの実績に加え、モビリティ産業のこれからの発展の可能性と成長に向けた課題を確認しあった。
途中、出席者のカーボンニュートラルに対する意見を把握するため、豊田委員長の提案で、急遽アンケートも実施。
カーボンニュートラルの実現に向けては、「選択肢を狭めず、すべての選択肢をとるべき」、ルールについては、「それぞれの国で登り方を決めるべき」という意見が多数に。自動車産業の取り組みに共感した人が集まったことがうかがえる結果となった。
また、GXやDXなどの変化を通じて、自動車産業がモビリティ産業へと発展することで、観光、物流、金融などの産業と新たな価値が創造できることを説明。
2030年までの試算として、現在の60兆円の経済効果は約100兆円に、550万人の雇用は700万人に、さらに、15兆円の税収は25兆円になるというデータも示された。
さらに、モビリティ社会 * を見据えた税制についても議論に上がり、中長期目線で見直していく必要があることを確認した。
*クルマの保有にとらわれず、さまざまな移動サービスが普及した社会基本Ⅳ:今後の活動は?
来年5月には広島でG7サミット(主要国首脳会議)が行われる予定だ。
日本に合った、日本ならではのカーボンニュートラルの道筋(山の登り方)や「多様な選択肢」の必要性を各国のリーダーに示す貴重な機会になる。
それに先立ち、G7各国の経済団体はG7ビジネス・サミット(B7)も行い、共同提言をまとめていく。
また、秋に行われる予定の総理を含む関係閣僚と自動車産業とトップとの議論も、モビリティ委員会が窓口となる予定だ。
自動車産業はこれまでも、世界一高い自動車関係諸税の軽減と、複雑な税制体系の簡素化を政府に要望してきたが、いまだ、抜本的な見直しには至っていない。
一方、モビリティ産業がCASEやカーボンニュートラルなど、大きな変化に直面する中で、クルマユーザーが納めた税金が何に使われていくかについての議論は待ったなし。
自動車関連の税制を抜本的に見直し、中長期目線で日本の未来と競争力強化のために使われるよう、働きかけていく。
まとめ:目指すのは日本の競争力向上
経団連モビリティ委員会。それは、産業の枠を越え、オールジャパンでカーボンニュートラルに取り組んでいくための第一歩だ。
豊田委員長は「日本が世界でも存在感のある国となるように、日本の競争力強化をブレない軸としたい」と力を込める。
脱炭素を目指す際に忘れてはいけないのは、自動車業界は、今日に至るまで、最もCO2削減に貢献してきた産業だということだ。
過去20年を振り返ると、燃費の向上や、ハイブリッド車を中心とした電動車の普及にいち早く取り組み、CO2削減で世界トップの23%を実現してきた。
2050年カーボンニュートラル実現に向けても、自動車産業を中心に始まった仲間づくりの輪を広げ、日本の競争力を上げていく。
カーボンニュートラルに向けた多様な選択肢を追求してきた日本の自動車産業。共感の輪を産業の外にも広げ、「社会実装」を加速させていく。