4年ぶりの開催となったタテシナ会議。事故撲滅はいつの時代も共通の願い。過去に学び、未来へつなげるため、企業の枠を超えて議論が交わされた。
自然豊かな長野県茅野市の蓼科高原にたたずむ聖光寺。
交通事故死者の慰霊と事故撲滅を祈念し、1970年にトヨタ自動車とトヨタ販売店が建立した。以来、毎年7月17、18日の両日、トヨタのトップや全国の販売店の代表者が集まり、交通安全に祈りをささげる夏季大祭が行われている。
53回目となった今回も豊田章男会長や佐藤恒治社長らが訪れ、境内に並べたろうそくに火を灯す「萬燈供養会(まんとうくようえ)」などを執り行い、交通事故犠牲者に鎮魂の祈りをささげた。
また4年ぶりに「タテシナ会議」も実施。2019年に始まったこの会議では、自動車業界のトップらが参加し、交通事故による死傷者ゼロに向けた議論や仲間づくりが進められている。
コロナ禍を挟んで2回目の開催となった今回は、スズキやSUBARU、マツダといったメーカーのほか、サプライヤーからはアイシンやデンソー、保険会社からも、あいおいニッセイ同和損害保険、三井住友海上火災保険など、関係業界のトップら約100人が出席。
三位一体*の安全対策や、高齢者の死亡事故防止などが俎上に上がった。
*「交通事故死傷者ゼロ」の実現には、「安全な車両開発」、「人に対する交通安全啓発活動」、「交通環境整備への参画」のクルマ・人・交通インフラの三側面(三位一体)からの活動が必要という考え方。
550万人を代表する面々が一堂に集う中、会議は司会を務めた豊田会長による「今⽇⼀⽇は安全を最優先に考えよう」という呼びかけから始まった。
全4ページ、9,000字超の記事だが、これを読んでいる間は読者の皆様にも交通安全を最優先に考えていただきたいと思い、さまざまな立場の参加者のコメントを紹介する。
世界に発信する第一歩に
蓼科⼭聖光寺の⼤祭は、いつもこの時期に⾏われております。
今から約50年前、⽇本で交通事故の死亡者が⼀番多かったころ、交通戦争と⾔われていたその時に、「なんとか交通事故でお亡くなりになる⽅をゼロに持っていこうじゃないか」ということで建⽴されました。
当時、交通事故で1年にお亡くなりになられる⽅が16,000⼈いました。現在では3,000⼈を切るようになっていますが、当初の⽬的の「交通事故でお亡くなりになられる⽅を『ゼロ』に」というところまでは、まだまだ程遠いと思っております。
そんな時に50年を迎える1年ほど前、ギル・プラット博⼠に安全運転に対して、ここ蓼科の聖光寺の⼤祭の前に、安全会議ということでご講演をいただきました。その時、ギル・プラット博⼠のご発⾔で、「全世界では2013年125万⼈の⽅が交通事故で亡くなっておられます」とありました。
最近、2021年は130万人と増えております。全世界が130万⼈の中で⽇本が3,000⼈。ですからぜひとも、この安全会議が世界に発信することにより、我々は日本での交通事故ゼロを願ってきましたが、550万人を代表したこの場が、世界に発信するような第一歩となることをお願いしたいと思います。
「今⽇⼀⽇は安全を最優先に考えよう」と、世の中は今、環境問題が話題になっていますが、安全という⼀番最優先にしなければいけないことを、今⽇⼀⽇、そして、この⼀時間少々はお付き合い頂きたいと思います。
続けて行われた基調講演。一人目はモータージャーナリストでトヨタ・モビリティ基金(TMF)の理事でもある岡崎五朗氏が、これまでの安全技術や法規制、インフラ整備の歴史を紹介した。