コラム
2021.11.19
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歴代カローラのカタログでたどる、日本のライフスタイルの変遷と自動車(後編) 〜バブル崩壊後の7代目から12代目〜

2021.11.19

バブル以降から今に至るまでのカローラの進化は?歴代カタログを時代背景とともに振り返ると、いろんなことが見えてきた。

今から55年前の1966年、多くの人が憧れるマイカーの象徴として誕生したカローラ。

日本の明るい未来と豊かな暮らしを象徴するような、一歩先の「夢」や「憧れ」を体現してきたカローラだが、バブル崩壊以降はどのように進化してきたのだろうか?

そんな変遷がわかりやすく現れているのが、カローラの歴代カタログだ。前編に引き続き、今回もカローラの歴代カタログを振り返りながら、時代背景とともにその軌跡をたどってみたい。

7代目:1991〜1995年/高級・感動のカローラ。

7代目カローラを発売した1991年は、世界的に波乱含みの年となった。年の始めには湾岸戦争が勃発。さらに年の瀬には、旧ソ連が崩壊し、アメリカと旧ソ連の冷戦がついに終わりを迎えた。

バブル経済は崩壊したものの、日本は湾岸戦争のために1兆円以上を支援。華やかな経済の残り香に呼応するように、カローラは6代目に引き続き、7代目も高級路線を推し進めた。

そのため7代目の内外装は、高級ライン「セルシオ」を意識した、極めて高品質な仕上がりに。エンジンには、従来のスポーツツインカムに加え、パワーよりも効率を重視した、通称「ハイメカツインカム」のDOHCエンジンを採用。

その後、ハイメカツインカムは、クラスを超えてトヨタ車の主力エンジンへと成長していく。ラインナップには4WDモデルも追加された。

表紙

あえて車両のイメージ写真がない表紙はこれが初。極めて高品質で高級感ある内外装への期待をふくらませる演出。

P4〜13

余すことなく上質な外装やレカロ製シートを取り入れた内装を魅せるページネーションが特徴的。

P24〜25

カローラにふさわしく、誰にとっても運転しやすい仕様のひとつとして、昼夜問わず、視認性の優れた電子コンビネーションメーターをアピール。

8代目:1995〜2000年/大衆車本来の経済性を追求。

1995年以降、バブル経済が崩壊し、不況に転じると、国内で混乱をきたすさまざまな出来事が頻発。不良債権を抱えた金融機関が相次いで破綻するほか、阪神大震災や地下鉄サリン事件などの重大な災害やテロ事件が起きた。

こうした世情を背景に、8代目カローラは、カローラ本来のシンプルで使い勝手のいいコンパクトセダンへと原点回帰し、大衆車本来の経済性を追求した。

不景気の一方で、Windows95の発売をひとつの契機とし、IT時代の到来へ。そうした時代の変化にあわせて、カローラは軽量化し、最適化していく。

また、基本の4ドアセダンにプラスして、派生モデルが多数生まれたのも、8代目の特徴。2ドアクーペおなじみのカローラ・レビンやワゴン、バンに加え、4ドアハードトップのカローラ・セレス、ミニバンのカローラ・スパシオなど、カローラの一大ファミリーを形成した。

表紙

あえて車両全体のフォルムではなく、ボンネット上からの寄りの写真を使用した大胆な表紙。こうした試みは、8代目が初めて。

P2〜3

カタログを開いた最初の見開きには、表紙同様、上から8代目カローラを撮影した写真を使用。冒頭のテキストにも、原点回帰してさらに進化し続ける思いが綴られている。

P4〜13

表紙からは一転し、スリム化してよりスタイリッシュになった8代目のポートレートを10ページにわたって配し、強く印象づける。

P14〜17

トータルバランスとコストパフォーマンスに優れたカローラの価値観に、軽量化と低燃費化が加わったことを紹介。

9代目:2000〜2006年/新たな価値へ、ゼロからの出発。

2000年に突入すると、さまざまなミレニアルイベントのほか、IT革命によって時代は情報化社会へと大きくシフト。

新たな時代に向けて、カローラはこれまでの保守的なイメージから一新。ゼロからの再出発を掲げ、流麗でモダンなフォルムに生まれ変わった。

これを機に、1972年から続いていたスポーツモデルのレビンを廃止。人気のワゴンは同モデルより「フィールダー」という名称に改められ、商用からライフスタイルに寄り添うことで、これまで以上にクルマの用途を広げることに寄与した。

また、プラットフォームを新たに開発し、ボディは5ナンバー枠いっぱいまで拡大。さらに、ホイールベースを135mm伸ばしたことで、室内の居住性が格段にアップグレードした。

表紙

新たなミレニアルに向けて、それまで保守的な印象のあったカローラは、流麗でモダンに生まれ変わった。そんなカローラを象徴するようなエンブレムが表紙。

P2〜3

今後、加速度的に進化するIT技術やインターネット社会を想定して生まれた、9代目カローラへの思いが込められている。

P4〜5

前輪と後輪の間を広くとったロングホイールベースにより、居住性がアップし、乗り降りがスムーズに。また、流麗なボディラインによって空気抵抗が抑えられ、ハンドリングの安定性や燃費の低減にもつながっている。

10代目:2000〜2012年/新たな指標を掲げて。

10代目誕生当時の大きなトピックスといえば、まずは2008年に起きたリーマン・ショックが記憶に新しい。リーマン・ブラザース社の倒産は、アメリカ史上最大の企業倒産といわれ、世界経済を揺るがせた。

2011年には、未曾有の大地震となった東日本大震災が起き、国内では、東日本大震災の余波により、経済が悪化。震災後の日本は自粛ムードに覆われた一年となった。

震災直後から豊田章男社長は、長期スパンを見据えた東北の復興支援を決意。その経緯については、過去記事で紹介している。

暗いニュースばかりのなか、トヨタは新たな指標を掲げ、海外仕様車とは異なるプラットフォームとして、「アクシオ」のサブネームで日本専用設計車を発売。

さらに10代目においては、「実用車の雄」を自負し、後退・車庫入れ時に絶大な威力を発揮するバックモニターを全車標準装備とした。

表紙

10代目カローラのカタログ表紙で、「COROLLA(カローラ)」の文字以上に強調さたせたのは、 日本専用モデルのサブネーム「Axio(アクシオ)」。「アクシオ」とは、ギリシャ語で「価値がある」の意味。

P2〜11,16〜19

フォルムは9代目のイメージを踏襲。10ページにわたり、アクシオをゆっくり堪能できるベージネーション。

P22〜25

誰もが快適で安全なドライブができるよう、最先端のシステムとして、バックモニターを全車標準装備。

11代目:2012〜2019/カローラの原点から、次の未来へ。

2012年には、自立式電波塔としては世界一の高さを誇る、東京スカイツリーが開業。同年、誕生したのが、11代目となるカローラだ。

2013年以降、安倍内閣が掲げた経済政策・アベノミクスにより、景気は若干ではあるものの、回復傾向へ。クルマ市場では、3K(軽・高級・環境)偏重が続いていた。

トヨタは時代の変化に素早く対応し、カローラ史上初のダウンサイズを実施。プラットフォームを一新し、全長は50mm短縮。コンパクトで使いやすいカローラ本来の魅力に回帰した。

ラインナップは従来通りの4ドアセダンのアクシオ、ワゴンのフィールダーで、2013年にはアクア用のシステムを最適化させたハイブリッドモデルをアクシオ、フィールダーともに設定。33km/LJC08モード)と、低燃費を誇る仕様となっている。

表紙

最新モデルらしく、現代的でスタイリッシュなイメージの11代目カローラ アクシオのカタログ表紙。

P4〜11

夫婦共通の趣味のゴルフをしに行ったり、孫を連れて海まで足をのばしたりする、家族のリアルなライフスタイルを想定。

P16〜17

夫婦をベースに、息子夫妻や孫など、家族みんなにとってやさしい空間であることをアピール。

「+αの思想」をベースに進化し続けてきたカローラの最新モデル(12代目)

歴代カローラのカタログをあらためて紐解くと、そのときどきのニーズを超えた「80点主義+α」の思想をベースに、進化を続ける軌跡が見えてきた。

そして世界的なパンデミックを経た現在、カローラの最新モデルとして、カローラ初となるSUVが加わった。もちろん、この新型車カローラ クロスには、次世代に求められるさまざまな機能や性能が凝縮されている。

これまでの55年の歴史と同様、多くの人々の一歩先の期待値を超えながら、これからもカローラの進化の歴史は続いていく。

(編集・庄司 真美)

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