発表に先立つ9月4日、豊田が新型カローラツーリングを"味見"した。マスタードライバーの評価やいかに。
2019年9月17日、7年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型カローラ、カローラツーリングが発表された。初代が誕生して今年で53年、12代目を迎えるロングセラーモデルのカローラは、社長の豊田にとって、社会人になって初めて自費で購入した、思い入れの深いクルマでもある。発表会では、そんな想いをビデオメッセージで届けた。
発表会に先立つ9月4日、豊田はトヨタテクニカルセンター下山(愛知県豊田市)で新型カローラツーリングを試乗し、マスタードライバーとして最後の“味見”をした。
ハイブリッドモデルに乗った豊田は、助手席に技術副社長の吉田、後席にチーフエンジニアの上田を乗せてコースへ出た。約10分の試乗から帰ってくると、豊田と吉田の顔に何やら笑みが。乗った感想を聞かれた豊田は、こう答えた。「初めてのクルマに乗ると、一緒に乗っている人の会話より、クルマに集中しちゃうんだけど、普通の会話ができてるでしょ。普通のドライブができている」。クルマづくりの“最後のフィルター”がうなずくと、周囲の技術者からほっとため息が漏れた。
試乗した下山のテストコースは、4月に一部運用を開始したばかりだった。先が見えないコーナーの連続や激しいアップダウンなど、世界一過酷なサーキットとして知られるニュルブルクリンクを彷彿させる1周5.3キロメートルのコースは、「悪いところはすぐにばれる」と吉田がこぼすほど、クルマの“アラ”を探すには絶好の場で、開発者泣かせの試験場だった。
豊田が下山で開発車両を評価するのは、これが初めてだった。しかし、車内では助手席の吉田にクルマの乗り味をフィードバックするだけでなく、カローラらしさについて語り合い、カローラとの思い出話に浸る一幕もあった。車両も道も初めての中での運転にもかかわらず、リラックスしてドライブを楽しんだようだった。
試乗後、その理由を豊田はこう解説した。「曲がりたいところで曲がっていく、止まりたいところで減速してくれる。アクセルとか、その辺のことが違和感なく、ストレスなくできているから話せている」。初めての道を慣れないクルマで走るとき、ドライバーは不安になるもの。それでも、意のままに、ストレスなく、走り、曲がり、止まる。だから安心して会話も楽しめる。それは、運転の楽しさにこだわり続ける豊田ならではの誉め言葉だったのかもしれない。