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【知財功労賞受賞記念】デザイントップと知的財産部の話から見えた絆

2026.04.24

クルマのデザインを決めるデザイナー。クルマに含まれるさまざまな権利を保護する知的財産部。もっといいクルマをつくるために、日々奮闘する両者の間には、強い絆があった。

繰り返される“再定義”

ハンフリーズCBOが強調した“意志”。これは、今回評価された「ハンマーヘッド」や「スピンドルグリル」でも同様だ。

例えば現行のプリウスは、「エコカーでありながらダイナミックな走りもできること」、レクサスであれば「毅然とした姿」という意志が出発点としてある。

こうした意志を、形にするために、デザインと機能を集約していったものが、トヨタの「ハンマーヘッド」やレクサスの「スピンドルグリル」「スピンドルボディ」であり、重要なことは形ではなく、そこに込めた意志だという。

ハンマーヘッド。形が決まった後に、シュモクザメの頭部のイメージが近いという事でこの名前に
スピンドルボディ。「スピンドル」には、糸をつむぐ道具である“紡錘”の意味がある

ハンフリーズCBO
「スピンドルグリルとはこういうものだ」と固定概念になってしまうと変わらなくなってしまいます。だから「壊す」=「無くす」ということではなく「再定義を繰り返す」ということなんです。

この繰り返しで、一番難しいのは、このスピンドルグリルの評判がいいことなんです。世界中で「良い」と言われていて、(意匠権でも)押さえています。

ですが(言い換えれば)変えられない状態になっています。会長はそういう時「良くても、壊そう。良くても、次のところに行こう」と言います。

昨年のジャパンモビリティショーで披露された、レクサスの「LS クーペコンセプト」なども、こうした考えのもとにできたクルマだ。

「手段は多少変えているかもしれませんが、意志は無くしているのではなく、進化しています」とハンフリーズCBOは語る。

ただ、こうした時に難しくなるのが、一口に「ハンマーヘッド」や「スピンドルグリル」といっても、クルマによってデザインが異なるということ。

ハンフリーズCBO
我々はコピペ(コピー&ペースト)したクルマをつくっているのではなく、アルファードのニーズ、ヤリスのニーズ、ランドクルーザーのニーズ、いろいろなニーズがある中で、それぞれのベストを目指しています。

そして、どのニーズを満たすクルマであっても“トヨタ”を感じたいんです。例えばRAV4とプリウスは、クルマの形が全然違います。

RAV4はアウトドアでタフで楽しいクルマ、プリウスはツルンとした見た目でエコでダイナミックなクルマ。でもハンマーヘッドのモチーフをうまく使うと、クルマの形が違っても、ハンマーヘッドからトヨタを感じることができます。

意匠権の中で、僕らがバリエーションを出せる範囲を持っていることは、すごく大事な話だと思います。

RAV4とプリウス、形の異なるハンマーヘッドを、いかに“バリエーション”として、意匠権でカバーしていくか。これは知財部の技の見せどころでもある。

服部
一つの意匠権では保護できる範囲に限界がありますが、類似意匠を出願する「関連意匠出願」という制度を使って保護を強化しています。

この制度を利用する事によって、ハンマーヘッドのバリエーションを網羅的に保護することができます。

発明を守る

昨年のジャパンモビリティショー、今年の東京オートサロンでは、各ブランドを象徴するクルマが並び、来場者の注目を集めた。ここで登場したコンセプトカーにも、もちろん意匠出願がされている。

ハンフリーズCBOは「みんなが貢献してくれたと思っています」「(意匠登録も)きちんと一緒にやらないと、一生懸命つくったものが、台無しになりますから」と振り返る。

ハンフリーズCBO
以前、内山田(竹志前会長)さんと話した時に、いわゆる特許の話は、お金を儲けるためのものじゃなくて、自分たちのプロパティ(財産)をプロテクトするものだと言っていました。

プリウスの生みの親、内山田前会長。photographs by Noriaki Mitsuhashi / N-RAK PHOTO AGENCY

(権利は)よく他の会社に売るといった話に捉えられがちですが、そうではなくて、自分たちが一生懸命、お金と時間とイマジネーションをかけた発明を、ちゃんと守るため、会社を守るためのものだと思うんです。

とても大事です。

内山田前会長とのエピソードは、竺原、服部も初耳だったようで、改めて知財部として会社に貢献していく決意をのぞかせた。

服部

ブランドアイデンティティになるような意匠というのは、多くのクルマに採用された後であれば「これがブランドアイデンティティだ」とわかるのですが、最初のクルマでこれがブランドアイデンティティになるかどうかを判断するのは、なかなか難しいんです。

そのため、デザイナーといろいろ話して教わったり、こちらから聞き出したりするなど、相互のコミュニケーションが非常に大事になってくると思います。対話を大切にしながら、ブランドアイデンティティも含めて、特徴のあるデザインをしっかりと権利として押さえていきたいと考えています。

竺原

トヨタで汗をかいて考えたものを知的財産権で守るのが大前提です。それによってトヨタのビジネスをしっかり守っていく。知財の問題でトヨタのビジネスを止めないということが、知財部の大きな方針ですので、改めてそれが大事だなと実感しました。

意匠も特許も他の知財権でも、しっかり活動していきたいなと思います。

クルマのデザインがどのように生まれ、知財部がどのように守っていくのか。3者の言葉からは、互いの仕事ぶりに対する信頼や、未来に向けた想いが感じ取れた。

ここで用意していた質問が終わり、インタビューを終えようとしたのだが、竺原が「あと…」と続けた。

ここからは特に3人の会話を想像しながらご覧いただきたい。

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