コラム
2023.10.03

トヨタにスタートアップ秘密結社? "A"が起こすイノベーション

2023.10.03

イノベーションを起こす、謎の「A-1コンテスト」に迫った。Aの意外な意味も明らかに!

スポーツ医療、プログラミング教育、フードロスの解決・・。

トヨタではクルマ以外の幅広い事業テーマに関するビジネスコンテストが有志の活動で行われている。しかし、社内でもそのことは広くは知られていない。

活動名は「A-1コンテスト」。取材すると、“A”に秘められた驚きの意味が明らかに。

阿呆(あほう)がイノベーションを起こす

A-1Aは“阿呆”(A-ho)のAです。阿呆のナンバーワンを決めるコンテストです」

開口一番、A-1の発起人であり、新事業企画に携わる土井雄介が答えた。一瞬耳を疑ったが、その裏にはこのような想いがあるという。

先進プロジェクト推進部 土井主任

A-1のAが意味する阿呆は、トヨタ自動車の創業者、豊田喜一郎の言葉から引用しています。

1937年の創業当時、トヨタは自動車産業におけるベンチャー企業でした。

大財閥ですら挑まなかった事業に喜一郎は「こんな事業を向う見ずにやる者は、よほどアホーだと私自身も思っています。誰もあまりやらない、又やり難い事業をものにしてみる所に人生の面白味がある」と話し、仲間とともにクルマづくりに挑んだ。

創業以来続くトヨタのイノベーションスピリットを、今に生きる社員を主役にして体現したい。それがA-1を始めた一つの理由です。

喜一郎の想いは多くの仲間を集め、現代まで続くクルマづくりの礎を築いた。

「世のため、人のため」というイノベーションスピリットを持つ人が輝ける場所をつくりたい。トヨタ創業の歴史がA-1の出発点となっていた。

トヨタをもっとおもしろくしたい

土井はさらに、A-1の根底にあるトヨタの思想、『産業報国』について語った。

トヨタにはグループ創始者である豊田佐吉の遺訓をまとめた「豊田綱領」があり、全社員が立ち返るべき哲学として息づいている。

その一項である『産業報国』は、自分のため、会社のためを超え、『お国のため、社会のため』に働く大義を説いている。

土井主任

誰かのために何かをしたい。そう思っている人がトヨタにはたくさんいます。その人たちが自身の想いと向き合い、普段の職場を越えた仲間づくりができれば、きっと世の中に新しい価値が生まれる。

A-1でそれを実現できれば『産業報国』にもつながり、トヨタという会社がもっと面白くなると信じています。

土井自身、かつてはベンチャー企業やコンサルタントでの就職を考えていたが、トヨタの『産業報国』という思想に感銘を受け、入社を決めている。

「誰かのために」なるビジネスを考えるA-1。その立ち上げにあたり、トヨタの役員による協力もあったという。

なぜ、有志活動としてのビジコンに力を貸すのだろうか。

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