リアルよりもリアルにモノづくりを体感! 「トヨタバーチャル工場見学」とは?

2023.05.24

リアルよりもリアルにトヨタのモノづくりに触れられるバーチャル工場見学サイトがオープン。プロジェクトメンバーがこだわり抜いた特長とは?

オンラインでクルマづくりの現場を見学できるトヨタバーチャル工場見学サイトがオープンした。

トヨタのモノづくりを分かりやすく伝えるための工夫やサイトに込められた想いについて、プロジェクトに携わったトヨタ会館(愛知県豊田市)のスタッフに取材した。

メンバーの指針となった河合おやじの言葉

部品調達や物流の滞りによる工場の稼動停止をはじめ、コロナ禍は自動車業界、とりわけ生産の現場に大きな影響をもたらした。

それは、トヨタのクルマづくりについて多くの方々に知っていただくために、60年以上も前から行ってきた工場見学についても例外ではなかった。

トヨタでは、これまで元町、高岡、堤(いずれも豊田市)の3工場を中心に工場見学を実施し、国内外から年間13万人もの来場者を受け入れてきた。累計の見学者数は約1330万人にも及ぶ。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受け20217月、工場見学の休止を余儀なくされた。

工場見学の運営を担うトヨタ会館に籍を置き、「トヨタバーチャル工場見学」のプロジェクトをグループ長として率いた喜多亜貴子は語る。

喜多

工場見学を休止してから、多くのお客様から「また見学したいです」という声をいただきました。

そこで、工場見学に代わって何かトヨタのモノづくりに触れていただける機会を設けられないかスタッフみんなで考え、オンラインで工場を見学していただけるサイトを立ち上げよう、という結論にいたったのです。

トヨタにおける工場見学の歴史は非常に長く、1939年に豊田喜一郎自らが「案内規定」を策定し、トヨタ最初の自動車工場である挙母(ころも)工場で小規模な工場案内を開始したことに端を発します。

案内規定には「案内者は礼儀を重んじ言語を丁寧にする」と記されているのですが、そうした意識とともに、トヨタのモノづくりや、それを支える人づくりについて知っていただきたいという豊田喜一郎の想いを、私たちも受け継いでいかなければと考えました。

トヨタならではのバーチャル工場見学とはどのようなものであるべきか。どういう軸でトヨタのモノづくりを紹介するのがいいのか。「メンバーとともに頭を悩ませた」と、喜多はプロジェクトが発足した当時を振り返る。

そしてその答えを探るべく、役員から生産現場の職人まで、数多の人々にヒアリングを重ねた。

喜多

最終的に河合おやじ(河合満エグゼクティブフェロー)から、「トヨタの強みは、改善が進化していくことにある」というお話をいただきました。

「改善後は改善前」という言葉がありますが、トヨタでは改善を続けることによって常にモノづくりが進化していく。そして、その進化を担っているのは「人」なのだと。

そこで、今回のバーチャル工場見学サイトでは、「人中心のモノづくり」を軸に構成するべきだという結論に達しました。

働く人の知恵や工夫であったり、改善への飽くなき探求心であったり。そういったものをしっかり感じていただけるバーチャル工場見学になるように、現場の方々に話をうかがいながら、検討を重ねました。

ヒアリングや取材のために話を聞いたのは、実に40人以上。彼らのモノづくりへのこだわりや想いをより多くの人々に伝えるために、どのようなコンテンツやサイト構成がベストなのか。

喜多をはじめとするプロジェクトのメンバーはアイデアを出し合いながら、1年をかけてサイトをつくり込んでいったという。

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