リアルよりもリアルにトヨタのモノづくりに触れられるバーチャル工場見学サイトがオープン。プロジェクトメンバーがこだわり抜いた特長とは?
ドアをずらして取り付ける理由とは?
プロジェクトメンバーの一人としてサイト制作に携わった林美帆は、幾度となくモノづくりの現場を訪れ、とにかく足で稼いでサイトをつくり上げたと語る。
林
何度足を運んでも、私たちにはモノづくりの奥深さの100分の1も見えていないのでは?と思えるほど、壮大なことに取り組まれていました。
印象的だったのは、現場の方にとってはごく当たり前のことでも、私たちから見るとハッとさせられることがたくさんあったことです。
そういう私たちの驚きや素直な心の動きを、どんな言葉や映像で切り取ればできるだけ多くの方々に伝わるのか、本当に考え続けた1年でした。
特に印象に残った事例として、林は溶接工程でのドアの取り付けについて教えてくれた。
林
さまざまな形状の鉄のパネルが溶接でつなぎ合わされてクルマの形に仕上げられていくのですが、ドアについては上方に少しずらして取り付けられるんです。
なぜだろうと不思議に思ったのですが、実はその後の組立工程でウィンドウガラスなどの部品が装着されると、ドアが自重で下がって本来の正しい位置になる。要は完成形を見越してあえて位置をずらしているのです。
そうしたモノづくりの現場に蓄積された知恵やノウハウが、1台のクルマにはたくさん詰まっていることを知って、驚きと感動を覚えました。
もう一人のメンバーである安藤なぎさは入社3年目。プロジェクトが立ち上がった時点では、まだ2年目の新人だった。
クルマはおろかトヨタについても知識が少ない中、エンジン製作や鋳造について解説するコンテンツを担当することになり、勉強の毎日だったという。
安藤
工場の現場で使われている(教育用の)テキストをお借りしたのですが、クルマに疎かった私にはそれでも知識を得るのがとても大変でした。勉強していざ工場に取材に足を運んでも、分からないことばかりでした。
ただ、その都度、工場の方々が丁寧に教えて下さって、一緒にモノづくりの現場を体験させていただく中で、クルマづくりについてもっと知りたいと思えるようになったんです。
メンバーでは若手の私がもっとも一般の方の目線に近いと思ったので、私が取材で得た感動をお客様に感じていただくにはどういう見せ方が最適か、実体験を活かすことを心がけました。
さらに、安藤は興味深い後日談を聞かせてくれた。曰く、まだ社会人になって日も浅いこともあり、クルマを所有することなどまったく考えていなかったのだが、最近、愛車としてヤリスを迎え入れたのだ。
安藤
現場を取材していく中で、このように想いや誇りを持ってモノづくりに励まれている方々がつくったクルマであれば、ぜひ自分でも乗りたいと思ったんです。
モノづくりの現場からさまざまな驚きや感動をもらったと語るメンバーたちは、それをあるがままに表現すべく、取材や撮影からコピーの考案まで、すべてに全力を注いだ。
取材時期は、まだ空が白む前に工場に赴き、帰宅する際にはすでに夜の帳が下りている、という日々の連続だったという。
喜多
言葉ひとつを決めるのにも、実はものすごく長い時間を費やしました。さまざまな案を出しては、何度も修正を繰り返しながら、つくり込んでいきました。