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評価ドライバーとエンジニアによる、クラウンセダン個性追求の現場に迫る!

2025.02.04

4つのボディバリエーションからなる16代目クラウン。今回はセダンの評価ドライバーとエンジニアに密着!セダンで実現したかった乗り味とは。

4つのボディタイプを展開する新型クラウン。

それぞれのモデルは、クラウンネス(=“静粛性” “快適性” “上質さ”)と称される、歴代クラウンによって培われてきた乗り味が追求されている。
その一方で、それぞれのモデルには各ボディタイプならではの異なるキャラクターも与えられている。

こうしたクルマの乗り味づくりで重要な役割を果たすのが、評価ドライバーだ。

トヨタイムズでは、クルマの乗り味がいかにつくられるのかを明らかにすべく、クラウンシリーズ各モデルの開発に携わった評価ドライバーとエンジニアを取材。今回は、セダンにおける“乗り味づくりの現場”に迫る。

こだわったのは重厚で上質な乗り味

上質な走りと快適な乗り心地をベースに、ドライバーズカー、ショーファーカーいずれのニーズにも応える、新時代のニューフォーマルセダンをテーマとするクラウン セダン。

新時代の正統派セダンを象徴する、ニューフォーマルセダン。

チーフエンジニアの清水竜太郎は、とにかく乗り心地の良さに徹底的にこだわったという。

清水

MIRAI、16代目クラウンの開発主査として車両全体の開発を取りまとめる。2023年10月よりZSチーフエンジニアとしてクラウン・センチュリー・ミライを担当。

豊田(章男)会長も語っていますが、やはりクラウンの型はセダンです。セダンこそが、15代にわたって脈々と続いてきたクラウンの世界観を象徴しています。

そこで、お客様に「まさにクラウンだよね」と感じていただけるような、重厚で上質な乗り味のクルマを目指すとことから、開発をスタートさせました。

歴代のクラウンと同様、ドライバーズカーとして運転して楽しいクルマにもしたいと、開発メンバーに伝えました。

車両性能開発を担当したMS制御開発部の佐々長孝と、サスペンションやタイヤの設計を担当したMSプラットフォーム開発部の平木康裕の2人のエンジニアは、清水から出たキーワードをもとに、新しいクラウンセダンがどのようなクルマであるべきか、それを実現させるためにはどういった技術や諸元が必要なのか、まず開発概要をまとめたという。

佐々

1993年から技術部門で操縦安定性、乗心地性能開発の実験評価を担当。現在は、MIRAI、クラウンセダンの車両性能開発を担当するエンジニア。

例えば、緊張感なく寛げる後席空間を提供するためには「ロール速度はゆっくり」に、使用シーンや目指すべき性能のイメージをスライドにまとめました。チーム全体で乗り味の方向性に対して認識を合わせるためです。

画像は当時16ページあったスライドの一部をまとめたもの。

清水さんに資料をもとにプレゼンテーションしたところ、「イメージしていたことがすべて書かれています」と言っていただきました。

清水

普段はゆったりとした動きで、振り回しても安定して走れる」、そんな二面性を実現させたいと言ってくれたのですが、まさにその通りだと思いました。

二面性を実現するために「スポーツ」「コンフォート」といった走行モードを使い分けます。そのためにはAVS(電子制御サスペンション)が必要になります。

乗り味に特化した開発概要に仕上げてくれたのですが、プロジェクトメンバーの認識合わせに非常に役立ちました。

突破口となった革新的技術

セダンにはほかの3モデルとは異なる点がある。車高が低いオーセンティックなセダンのため、MIRAIなどに用いられているFR用のプラットフォームを採用したことだ。

清水

MIRAIは乗り心地も操縦安定性も、非常に優れたクルマです。それをベースにするわけですから、ほかの3モデルに比べて有利なスタートラインでした。

片山

2016年にはドライバーとしてニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦するなど、モータースポーツの現場でも運転技能の向上や“もっといいクルマづくり”に尽力している、評価ドライバーで凄腕技能養成部に籍を置く。

MIRAIは前後重量配分が理想とされる50:50を実現していることもあり、もともと動的性能にとって素性のいいクルマです。

MIRAIの実績を活かせるので、たとえばセダンならではの回頭性の良さについては、実現しやすかったと思います。

一方で、走りの上質感については、まだまだ改善の余地があると感じました。

そこで開発チームは、ショックアブソーバーの減衰力を下限まで下げた先行開発車を用意。ところが、片山のフィードバックは厳しいものだったという。

左からMS制御開発部の佐々、チーフエンジニアの清水、凄腕技能養成部 FDチームの片山。
佐々

片山さんが整備場の建屋から走り出して5メートルくらいのところで止まったんです。「質感が足りないな」と。どうしたらいいのか、頭を抱えました。

ただ、テストコースでは意外と走れる印象でした。素性のいいプラットフォームのおかげだと思いますが、減衰力を下げる方向でもクラウンとして成立すると考えました。

「減衰力を下限にした状態から適合していくというのはかなりレアなケースです」と語るのは、車種担当評価ドライバーのリーダーとして、足まわりの適合を担当した車両技術開発部の徳田一也だ。

徳田

入社以来、操縦安定性・乗心地開発に従事する、評価ドライバー。

減衰力を下げるとアタリの柔らかさは出せるのですが、車速が高まるとボディがゆれるような挙動が出てしまいます。減衰力を少し戻してみると、今度は上質さが損なわれてしまうので、堂々巡りの状態でした。

佐々さんや平木さんたちとチューニングを重ねて、タイミングをみて清水さん、片山さんに試乗してもらいました。すると「もうちょっと」という言葉が返ってきました。これを繰り返しながら、目指すべきレベルの擦り合わせをしていきました。

乗り心地を良くするという方向性はチーム全員で共有していたが、どこまでのレベルを目指すのか、ターゲットについて認識を合わせるのに苦労したという。

上質な乗り味の追求について突破口が見出せないでいるなか、サスペンションやタイヤの設計を担当したエンジニアの平木がショックアブソーバーの先行開発を行う部署から、ある革新的な技術を見つけてくる。

平木

MSプラットフォーム開発部にて、クラウンセダンのサスペンション・タイヤホイール・運動性能設計を担当するエンジニア。

ショックアブソーバーには内部のオイルの漏れを防ぐオイルシールというパーツが付いているのですが、その部分の摩擦を従来よりも下げた低フリクションオイルシールというアイテムです。

このオイルシールを採用することで、初期摩擦が減ることによる動き出しのスムーズさと減衰効果を両立することができるため、極低速域から滑らかな乗り味を実現することができます。

まだ開発途中で問題も山積みだったのですが、何とかカタチにしたいと思いました。

サスペンションは樹脂製チューブで覆われている。足まわりの微細な振動がおさえられ、走り出しの質感が向上するためだ。

それにより、乗り心地の良さが劇的に改善され、評価ドライバーの片山からも「これならいける」という言葉をもらった。

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