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【ベクトリクス・ジャパン】充実したアフターサポートに勝機を見出す、EVの新カテゴリー

2024.10.11

『ジャパンモビリティショー 2023』に参加した、革新的なスタートアップに焦点をあてる「モビリティの未来を担う仲間たち」。第5回は、"バイクでもクルマでもない"モビリティの開発を進める「ベクトリクス・ジャパン」を取材。

2023年秋に開催された『ジャパンモビリティショー2023』。自動車産業のみならず、多様なモビリティ関連企業が一同に会し、「未来の日本」を創造する場として東京モーターショーから名称・コンセプトを変更し開催された。

この連載では、『ジャパンモビリティショー 2023』に参加した、革新的なスタートアップに焦点をあてていく。未来をともにつくる仲間たちが、モビリティをどう考え、どのような想いで事業を展開しているのか。ジャパンモビリティショーから生まれる物語、その先に広がるモビリティの可能性を探っていく。

誰でもすぐに乗れる・働ける、モビリティが未来の生活を支える

小型商用三輪EVI-Cargo」を販売するVECTRIX JAPAN(ベクトリクス・ジャパン)。本拠地はシンガポールにあり、製造は台湾、デザインはイタリアというグローバルなメーカーだ。

同社の誕生は1996年のアメリカだが、2018年に現オーナーへ経営が移り、「新生ベクトリクス」としてスタートした。そして、過去のモデルを一切引き継がず、イチから開発をスタートした車両がI-Cargoである。

最大積載量が100kgと一般的な三輪スクーターよりも重い荷物を載せることができること、走行中やカーブを曲がる際に車体が傾斜しない設計のため、誰にでも運転しやすいことがI-Cargoの主な強み。“クルマでもバイクでもない” 軽バンと三輪スクーターの良さを融合させたような新しいカテゴリーのモビリティだ。

「物流の2024年問題に対応すべく、普通免許を持っていれば誰でもすぐに乗れる・働ける、ことをコンセプトに開発しました。当初はラストワンマイルの配達・物流をメインに考えていましたが、地域の生活を支える電話、電気、水道、ガスといったインフラの工事・保守・点検などでの活用も想定しています」

そう語るのは、代表取締役の山岸史明さん。自動車ディーラーなど、これまで長く自動車業界で活躍してきた経験を活かし、もっとも力を入れているのは充実のアフターサポート、安定した部品供給体制だと語る。

「日本の方々に安心してお使いいただくためには、充実したアフターサポートが重要です。そこがなくては、事業を長期安定的に展開することもできません。自動車業界での経験があるからこそ、私たちはその基準と同等の新興EVメーカーを目指しています」

背景には、日本の消費者は「品質に厳しい」という世界的な認識がある。逆に言えば、日本で認められれば、東南アジアを皮切りに世界へと市場を広げるチャンスがあることを意味する。

「製造・品質管理は、技術力が高く、日本車の製造も手がける台湾のユーロン・モーター(裕隆汽車製造股分有限公司)にお願いしています。この台湾という場所に意味があって、台湾は沖縄と地理的に近いので、天気予報にも出てくることもありますし、なんとなく想像がつきやすい身近な存在なんです。例えば、台風などで船が出なくて納車が遅れるときも、その状況がすぐに理解できるので、お客様にも納得していただけます。品質の良さと同時に、そうした安心をお客様にお届けしていきたいと思っています」

企業マッチングから生まれるモビリティの未来像

『ジャパンモビリティショー 2023』では、Startup Future Factoryに参加し展示をおこなった。

「従来のモーターショーは一般消費者向けの展示会でしたが、ジャパンモビリティショーのStartup Future Factoryは、企業マッチングを前提としているため参加しました。BtoCからBtoBの世界、一方通行ではなく相互に関係していく世界が生まれたことは、名称変更も含めてとても良いことだと思っています」

新興メーカーにとっては、さまざまな企業とタイアップしながら新しいビジネスが生まれることに大きな魅力があるという。

「スタートアップには、資金面・人材面含め、モビリティの未来を描く専門部署を設けることが難しいのが現状です。そのため、このような企業マッチングの場で、私たちだけでは想像できない未来、モビリティの新しい使い方・アイデアをいただけることは非常にありがたいです」

脱炭素以外のメリットも複合的に提案していきたい

バイクとクルマの両方の長所を併せ持つ、新たな商用EVモビリティ「I-Cargo」。現在は法人販売のみだが、今後もこれまでにないカテゴリーを創出することで社会課題の解決を目指す。

「カーボンニュートラルの実現に向けて、EVの普及は必要不可欠だと考えています。そのためには利便性の向上を考えなくてはいけません。家庭用コンセント(100V)で充電できる交換式バッテリーや、アフターサポートの充実もそこにあります。さらに、普通免許で運転できるI-Cargoを活用することで新たなドライバーの雇用創出を目指すなど、脱炭素以外のメリットも複合的に提案していきたいと考えています」

今後数年の間に、三輪EVバイク3種、EVスクーター2種、ビッグスクーター1種の発表も予定しているという。

「今後もお客様のニーズをとらえながら、幅広いラインナップを揃えていく予定です。最終的に小型EV市場を席巻し、 “暮らしに身近なスモールモビリティのリーディングカンパニー”として、地域毎の課題と綿密な連携を図りながら、皆様の日常生活をEVを通じて支えていけたらと考えています」

最後に、本連載のお決まり質問である「モビリティとは?」という問いを投げてみた。

「タイヤが付いていて、何かしらのエネルギーで動くという意味では大きな進化のない世界です。つまり、使用用途の進化こそがモビリティと呼ばれる世界なんだと思います。そういう意味で、モビリティとは、成熟した社会における利便性の拡充だと考えています」

いよいよ、来週1015日から18日に幕張メッセ(千葉県)で『ジャパンモビリティショー ビズウィーク 2024』が開催される。

昨年のジャパンモビリティショー最終日に行われた大反省会と銘打ったトークセッションの中で、自工会の会長だった豊田は、初めて実施したスタートアップ支援企画について、「1+12ではなく、34になる物語が生まれる可能性を感じた。いいサイクルが回ってくると日本にも未来を感じられる」と話していた。

今年のブース出展は、スタートアップ 150 社(予定)、事業会社 58 社の、計208社が参加し、各社の事業課題、その解決方法などが掲示され、交流を促す。未来のモビリティ社会に向け、今年はどんな新しい物語が生まれるのだろうか。

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