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モータースポーツ普及へ一手!? トヨタが開発する新技術に迫る! 第5戦もてぎ

2023.09.29

クラッチペダルもない、シフト操作もない!? ATだけどMTよりも速い⁉ モータースポーツの常識を変え、裾野を広げるかもしれない技術開発にトヨタが挑む。

「モータースポーツをサステナブルに」。モリゾウこと豊田章男会長の活動を振り返ると、一つひとつにそんな強い意志を感じずにはいられない。

あるときは、草の根のラリーに参加して大会を盛り上げ、またあるときには、サーキットで水素エンジン車を駆り、脱炭素への多様な選択肢を訴える。

取り組みを挙げればきりがないが、そんなモリゾウがモータースポーツをさらに発展させるべく、今、光を当てているものがある。それが新開発の8速スポーツAT DAT(ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)」だ。

9月23日にモビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)で行われたENEOSスーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE 5戦、モリゾウはこの新技術を載せたGRヤリスで参戦。チームで5時間を完走した。

MTより速いAT

レースにはMT(マニュアル・トランスミッション)車が使われることが多い。ドライバーのスキルがあれば、ATより速く走れることが理由の一つだが、このDATは「MTよりも速いAT」を目指して開発されている。

普通のATと何が違うのか? ROOKIE Racingでスーパー耐久(S耐)32号車の監督も務める石浦宏明ドライバーはこう説明する。

普通のATは、サーキットを走ったりするとき、(その機構上)ちょっと滑っている感じがするというか、(ギヤが)直結している感覚が薄いんです。

でも、DATDは「Direct」。走り出してからカチッとロックされる状態なので、アクセル操作に対して、リニアに反応して、ラップタイムもロスなく削れます。

例えば、MTのクルマでコーナーに入るとき、通常、事前にギヤを落とします。DATでは、フルブレーキングを感知すると、勝手にシフトダウンし、次の加速に備えてくれます。普段、僕らが運転するのと同じように、操作を先読みしてくれるんです。

普通のATはコーナーにそのまま入り、アクセルを全開にしたときにはじめて、「加速が必要だ」と判断して、ギヤが落ちます(=キックダウン)。それだと、すごくタイムラグが出てしまいます。

圧倒的多数のAT乗りに選択肢

GRヤリスのチーフエンジニアで、DATの開発も担当する齋藤尚彦主査はその狙いを「モータースポーツのすそ野拡大」だと話す。

GRヤリスの開発が始まった)2016年からモリゾウさんやプロドライバーの皆さんにいろんなことを教わり、「楽しいクルマってこういうもんなんだな」というのが少しずつわかり始めてきました。

あるとき、モリゾウさんから「MTを運転できる人って少ないよね」「走る楽しさを広めたいね」と言われたんです。そこからです、DATに取り組むことになったのは。2020年の後半ごろからイメージを考え始めました。

運転免許統計(警察庁交通局運転免許課)によると、2022年に普通自動車の運転免許試験に合格した117.6万人のうちの7割強の85.7万人がAT限定。

さらに、日本自動車販売協会連合会(自販連)の発表によると、2019年に国内で販売された新車(乗用車)の98.6%がATであるという。

大多数を占めるATドライバーへ、いかにモータースポーツの門戸を開けるか。そんな問題意識から構想がスタートしたDATは、2021年に早川茂副会長を開発ドライバーとして、初心者でも気軽に楽しめるTOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジへ実戦投入。

TGRラリーチャレンジでDATのヤリスをドライブする早川副会長

翌年からは、タイトル経験者の眞貝知志選手をドライバーに全日本ラリーへも参戦。

今年は、サーキットで行うレースへとフィールドを拡大し、さらに高速・高G領域、ロングランといった厳しい環境で鍛えている。

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