
「細くてもいいから長いお付き合いをさせてもらいたい」。一過性でなく、継続的な地域との結びつきを願うトヨタ。改善に、スポーツに、トヨタらしい復興支援を取材した。

最大震度7を観測した能登半島地震から1年、石川県志賀町とトヨタは地震対応をきっかけとした連携協定を結んだ。
被災当時、トヨタの災害対応のスペシャリストが駆け付けた。朝倉正司シニアフェロー。南アフリカで起きた2022年の大規模洪水をはじめ、数々の現場で陣頭指揮を執ってきた。
今回は「工場」ではなく「町」の復興支援。TPS(トヨタ生産方式)の視点で、全国から届く大量の支援物資を住民にいきわたらせる改善に取り組んだ。
現場で活躍したのがトヨタの運動部OBだ。「ご飯を2倍食べる代わりに5倍動く」活躍ぶりで、まずは改善の基本である4S(整理・整頓・清掃・清潔)に着手。
その後、しゃがんで行っていた仕事は立って楽な姿勢に。モノであふれていた部屋は一筆書きで移動できるように。輸送トラックはルートを見直し、1日18便から6便に。作業者は60人から20人になり、職員も休暇が取れるようになったという。
トヨタの強みを生かした支援はもう一つ。運動部OB・OGがスポーツを通じて被災者と交流を深めた。
中能登町では、女子ソフトボールの元日本代表が、小中学生を対象にソフトボール教室を開催。
1年たった今も、土砂崩れでグラウンドが使えず、満足に練習ができない子どもたち。憧れの選手の指導の下、大好きなソフトボールができる喜びに笑顔が弾けた。
3月には、トヨタのラグビー部・ヴェルブリッツのホーム戦で、志賀町が物産展を開くなど、交流はさらに深まっている。
朝倉シニアフェローは言う。「細くてもいいから長いお付き合いをさせてもらいたい」。
「復興支援は一過性で終わらせない」という考えは、豊田章男会長が社長時代から大事にしてきたトヨタの被災地との向き合い方だ。
地域で愛され、必要とされる「町いちばん」の会社であるために、トヨタに何ができるか。地道に、現地現物で、被災地の声に寄り添う。そんな等身大の取り組みに、トヨタらしさを感じていただきたい。