小説『トヨタの子』は いかにして生まれたのか 作者 吉川さんに聞く

2024.06.17

豊田喜一郎生誕130年の節目に刊行された小説『トヨタの子』。作者・吉川英梨さんに制作秘話を聞いた。

「『もっといいクルマをつくろうよ』 おじいさん、あなたの言葉だったのですね。この小説を読んで、二度泣いた。」

小説家の吉川英梨さんが書き下ろした「トヨタの子」が、発売となります。

冒頭のメッセージは、この本の帯に私が寄せたメッセージです。

ストーリーは、私がタイムリープするという奇想天外なもの…、いたずら坊主の章男少年がトヨタ創業者の喜一郎に会いに行くというお話です。

これは、小説『トヨタの子』(講談社)の出版に合わせて、豊田章男会長が自身のインスタグラムに投稿した一文だ。



作者の吉川さんは、『新東京水上警察シリーズ』(同)などで知られる、ミステリー作家。今回、制作の裏側を聞いた。

もともとトヨタに詳しくなく、豊田喜一郎の存在も知らなかった吉川さん。「書けないと思ったので、(執筆依頼も)保留にしてもらった」という。

しかし喜一郎の伝記を通じて、幾多の試練にも諦めない姿、想いを感じ取り心が動いた。

トヨタ産業技術記念館や旧豊田紡織本社事務棟(トヨタグループ館)、旧豊田喜一郎邸など、喜一郎ゆかりの地では、どんな着想を得たのか。

経済小説でありながら、伝記でもあり、はたまた異世界モノでもある。この世界感が生み出されることになった、章男会長とのエピソードや、タイトルにもつながる印象に残った場面など、動画でしか聞けない話が満載だ。

章男会長はかつて、喜一郎のことを「唯一褒められたい人」と語っていた。インスタグラムは、このように続いている。

生前の祖父は、苦労ばかりしていて、いいところを見ることなく、57歳の若さで亡くなっています。私は、そんな祖父に会ったことがありません。でも、ずっと、会いたいと夢見ていました。

会ったらなにを話そうか?そうしたらなんて声をかけてくれるんだろう?

本音を言えば、一言でいいから「褒めてもらいたい」。そんなことばかり考え続けていました。

どれだけ夢見ても会えなかったおじいちゃんに、この小説でやっと会うことができました。吉川さん、本当にありがとうございます。

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