「社長やってくれない?」と内示を受けたのはサーキット。「チーム経営」を掲げるニューリーダーの生放送の7つのシーンを振り返る。
「一人ではなくチームで経営してほしい」
シーンⅢ:次期社長を選んだ人事案策定会議のメンバー、フィリップ・クレイヴァン取締役のインタビュー映像を受けて
富川キャスター
章男さんに単刀直入にお聞きします。佐藤さんが後継者にふさわしいと思った決め手は何だったんでしょうか?
豊田社長
まずは若さだと思いますね。それとクルマが大好き。本人はマスタードライバーが笑顔になるクルマをつくるのが大好き。この2つは最低条件だと思いますね。
それと、もう1つ言うのであれば、(トヨタの)「思想」「技」「所作」を(身につけようと)クルマづくりの現場で必死に努力をしてきた。そこを何度も見てきました。
トヨタのトップにつく人は、やはりそれらを現場で体現する人であるべきだと思っていたので、適任だと思います。
もう1つ、本人にも「一人で経営しようと思わずに、チームで経営してほしい」とお願いしています。
一緒に検討している新チームが、みんなで力を合わせて、やってくれるんじゃないかと期待しています。
富川キャスター
1年弱、ずっと近くで章男さんを見てきて、すごく高感度センサーを持っている方だと思うんですね。「これだ!」と感じたときに、すぐ行動される。それがトヨタの強さだと、感じているんですけれども、今回もセンサーが働いたのでしょうか。
豊田社長
僕は肩書きよりも、役割とか、個性がいちばん生かせる適材適所はどこなんだろうという見方をしています。
「私の後継者は37万人(の従業員)全員だ」と言い、「チームにお願いをしたい」と考える中で、彼には社長という役割が適任なんじゃないかと思いました。
それを大きく後押ししたのは、CBOを私の後任としてやってもらったことです。レクサスをニューチャプターに大きく変革したと思います。
そして、彼のもとには、いろんなエンジニアがいます。「モリゾウとともにやろう」という仲間もいますが、大きな会社だと「モリゾウにあんまり近いのはね…」と(言う人もいると思います)。
モビリティ・カンパニーに変革していく中で、ここまでは私の“個人技”で引っ張ってきた部分がありますが、今後、トヨタがさらに持続的に自律的に成長していくためには、私からちょっと離れたところで、チームが適材適所で力を合わせてやっていくことが必要です。そこにかけてみたいと思います。
若さがありますからね。新チームには、是非ともご期待いただきたいと思っています。
「従業員37万人に全力で向き合え」
シーンⅣ:リモートで参加した報道陣に「社長の内示にどう返事したのか」と問われ
佐藤次期社長
(昨年12月の)タイのレースのあと、実は儀式的なものは何もなく…。先ほどの会話が正式な内示です。
ただ、それ以降、本当に多くの時間を割いて、ときに対面で、あるいは、LINEやSlackのようなツールを使いながら、経営トップとしてこれまで考えてきたこと、今課題だと思っていることなど、新体制発足へさまざまなやりとりをさせていただいています。
今、豊田社長と私の間でやっているコミュニケーションで、実践的な移行の準備が進んでいるのではないかと思います。
1つ、CEOという職を拝命するにあたって、私がどう受け止めたか補足します。
トヨタはグローバルな会社です。本当に地域に密着して、それぞれの地域のお客様に寄り添って、グローバルなクルマづくりをしている会社です。「そのことを忘れるなよ」言われているのだと思いました。
そして、執行役のトップとして「従業員37万人に全力で向き合え」と。クルマづくりはチームプレイです。自分ひとりでできることは何もありません。誰ひとり欠けてもクルマはできないんです。
我々トヨタの最大の財産は従業員、“人”なんです。その“人”に「真正面からぶつかっていけ」ということが、この職に込められた章男社長の想いなんじゃないかと受け止めています。そこに向き合えるよう、全力で準備をしているところです。