トヨタイムズ

新型ランドクルーザーの走りはいかに育まれたのか【試乗編】

特集 2021.08.05 UPDATE

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オフロードコースにて新旧モデルを比較試乗

2021年8月2日、国内デビューを果たした新型のランドクルーザーたる300シリーズ。先代である200シリーズが登場したのは2007年なので、実に14年ぶりのフルモデルチェンジとなる。

トヨタイムズではその進化を探るべく、本格的なオフロードコースを擁する愛知県豊田市の総合アウトドア施設「さなげアドベンチャーフィールド」にて、300シリーズの開発に携わったキーパーソンらの取材を実施した。

当日、さなげアドベンチャーフィールドに集まったのは、開発を担当した主査の横尾貴己をはじめ4人。

20年以上にわたりランドクルーザーの開発や車両評価に従事し、オフロードの車両評価を熟知する車両技術開発部の上野和幸CX。
凄腕技能養成部門に所属しモリゾウとニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦するなど、サーキットやオンロードを専門とする大阪晃弘GX。
そんな2人の開発ドライバーに加え、トヨタ車体所属の社員ラリードライバーとしてダカールラリーの市販車部門に15年近く参戦し、ランドクルーザーを何度も優勝に導いてきた三浦昂(あきら)選手にも参加してもらった。

「どこへ行っても、生きて帰って来られる」「信頼性、耐久性、悪路走破性」といった、歴代のランドクルーザーが継承してきた幹となる価値が、300シリーズではどのような乗り味となって進化しているのか?

それを体験しながら、聞き役を務めるのが、スーパーGT選手権で3度のチャンピオンに輝き、TOYOTA GAZOO Racingのアンバサダーにしてニュルブルクリンクでも豊富な経験をもつレーシングドライバー脇阪寿一氏だ。

今回の取材でモデレーターを務めていただいた脇阪寿一氏

前日に雨が激しく降ったため、コース状態は、決して良好とはいえなかった。

「乗り比べると、違いが明らかに分かりますから、こちらから行きましょうか」

横尾主査に促され、脇阪氏はまず先代200シリーズの運転席に体を滑り込ませ、助手席には上野CXが、そして後列シートには横尾主査と三浦選手が乗り込んだ。
まずはコースコンディションを確かめつつひと回りし、それから新型ランドクルーザー GR SPORTに乗り換えた。

オフロードでの走破性とオンロードでの自然なフィールを両立

さなげアドベンチャーフィールドは、さまざまなタイプのオフロード路面が再現されたオフロードコースだ。

この日はコースの大部分がぬかるみ、滑りやすい状態だったとはいえ、新旧のランドクルーザーにとっては、難しい道ではない。
だが、新型ランドクルーザー GR SPORTに乗り換えて、脇阪氏の表情が明らかに変わった。路面の激しい凹凸のため、いつ来るとも知れないボデーのバウンドに備えるような様子は消え、明らかにリラックスしながら、顔をほころばせるのだ。

脇阪氏

ステアリング操作が軽いのはもちろん、路面の凹凸でステアリングをとられるようなキックバックがおさえられています。
乗り心地の面では、ドンッという突き上げもない。それに地面を4輪が蹴り出すトラクション自体も、明らかに良くなっていますよね。

わだちやコブのある急な坂道を「クロールコントロール」をオンにして下る際にも、300シリーズのサスペンションはストロークが十分で、接地が失われにくい。

20年以上にわたりランドクルーザーの開発に従事してきた車両技術開発部の上野和幸

上野CX

ドライバーによるブレーキ操作では、左右のタイヤが均等に制動されますが、クロールコントロールでは4輪の制動力を独立してコントロールすることで、クルマの姿勢を保ち、下り坂での横滑りを防ぎます。
ドライバーは、アクセルペダルにもブレーキペダルにも触れる必要がなく、ステアリング操作に集中できるんです。

ガレ場を模した岩場のコース上でも、新型ランドクルーザー GR SPORTは明らかにタイヤの空転が少ない。

200シリーズで走ったときは、前後左右に揺すられていた乗員の頭部の動きが、明らかに落ち着いて、凹凸を乗り越える場面でも車速が上げられる。

上野CX

“ヘッド・トス”といって、荒れたオフロードでは頭を左右に揺すられるような強い衝撃があります。

200シリーズももちろん悪くないのですが、300シリーズでは4輪の接地がより失われにくくなっています。タイヤが地面から離れて再接地するときに大きな衝撃は生じやすいですから、そうした衝撃が少なくなったということです。

横尾主査は、14年ぶりのフルモデルチェンジを実施するにあたり、あらゆる側面で現行モデルより劣る部分があってはならないことを意味する「現行同等以上」を実現させつつ、五大陸走破の一環として200シリーズでオーストリアを走った経験から、「楽に運転できること」を新たな目標に掲げた。

ランドクルーザー300シリーズの開発を担当した主査の横尾貴己

横尾主査

海外ではオフロードでも、長距離を走るユーザーが多いですから。乗る人の疲れを軽減することは、生きて帰って来られる確率を高めることにほかなりません。

「道が人を鍛え、人がクルマをつくる」とは、ランクル伝統の開発思想である。

“世界一苛酷なラリー”と評されるダカールラリーという究極のステージで、200シリーズを走らせてきた三浦選手は、意外にもこの日が、オフロードにおける新型ランドクルーザー GR SPORT の初試乗となった。

トヨタ車体所属の社員ラリードライバーとしてダカールラリーに参戦している三浦昂選手

三浦選手

目の前を流れる景色の激しさに対して、実際にクルマに伝わってくる揺れが、ありえないぐらいソフトでした。
200シリーズも優れたオフロード車両ですが、300シリーズは別次元だと感じます。ロードホールディングがさらに良くなっているので、タイヤが接地している時間が長いんです。タイヤが宙に浮いているというのは、ドライバーとして何もできずただ接地を待つしかない時間ですから。
これをラリーカーにしたら? さらに強くなると思います。

その進化ぶりは、ステアリングを握ればはっきりと感じられる種類のもの。
実際にオフロードを走らせ、体験してみて、違いが明確に分かるのが300シリーズの進化だが、オンロードでの味つけを担った大阪GXは、こうも語る。

凄腕技能養成部門に所属しニュルブルクリンク24時間耐久レースにも参戦する大阪晃弘

大阪GX

“楽に走れる”というキーワード。これが、お客様に育てられてきたランクルの高い信頼性・耐久性・悪路走破性に、我々オンロード側の開発スタッフが言う“自然なフィール”を結び合わせる手がかりとなりました。
新しいテクノロジーも用いつつ、オフロードでの走破性とオンロードでの自然なドライビングフィールを両立できたと思っています。

凹凸が激しい路面でもサスペンションが大きくストロークしてタイヤが接地している様子がよく分かる

インタビュー編では脇阪氏をモデレーターとして、開発を担当した横尾主査、開発ドライバーの上野CX、大阪GX、そしてダカールラリーの経験を新型ランドクルーザー開発にフィードバックしてきた三浦選手にインタビューをして、新型ランドクルーザーの進化について掘り下げる。

インタビュー編へ続く

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