トヨタイムズスポーツ
2023.03.08
シェア: Facebook X

URLをコピーしました

東京マラソンに懸けるそれぞれの想い "陸上人生の集大成" "車いす絶対王者への挑戦"

2023.03.08

「東京マラソン2023」を前に同大会の意義やコース解説、パラアスリートの鈴木朋樹選手を中心とした出場選手たちの意気込みを取材。スタジオゲストには陸上長距離部の西山雄介選手が登場!

3月3日に配信されたトヨタイムズスポーツは、沿道での声出し応援が解禁された「東京マラソン2023」を特集した。トヨタの陸上長距離部から宮脇千博選手と野中優志選手が出場し、車いすマラソンでもパラ陸上の鈴木朋樹選手が優勝候補の一角を担う大会。番組では世界陸上男子マラソン日本代表の西山雄介選手をスタジオゲストに迎え、レースの見どころを徹底解説したほか、陸上長距離部の層の厚さや鈴木選手のライバルを紹介した。競いあって強くなることが、来年のパリへの道につながる!

大阪マラソンで西山和弥、畔上和弥がMGC出場権獲得

1年後に迫ったパリ2024オリンピック。マラソン日本代表の選考レースが、今年10月に東京で開催されるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)だ。今年の東京マラソンや大阪マラソンは、大一番のMGC出場権を得るための重要な大会となる。

番組の冒頭の話題は、前週に行われた大阪マラソンの結果から。陸上長距離部2年目の西山和弥選手が日本勢トップの6位でゴールし、初マラソンの日本最高タイムとなる2時間6分45秒を記録した。その結果、自己ベストを更新した畔上和弥選手とともに“W和弥”がMGC出場権を獲得した。

豊田社長からは選手たちに「順位より自分の走り、昨日の走りより今日明日の走りが良ければそれで良し。悔しさは未来の喜びのエネルギー源と思いましょう。うれしさはもっと強くなるパワーに。全員完走よくやった。日本人トップおめでとう、MGC獲得おめでとう」というメッセージが寄せられた。

両選手のメッセージ動画も届けられ、西山和弥選手は「苦しい場面が何度もありましたが、皆さまのご声援が力になり、今回のタイムにつながったと思います」、畔上選手は「MGCで良い走りができるように引き続き練習を頑張りたい」と話していた。

陸上長距離部から6人が代表選考レースへ

陸上長距離部には、“和弥”だけでなく“西山”も2人いる。今回のスタジオゲストは、6年目の西山雄介選手。昨年に初マラソンの別府大分で優勝し、世界陸上でも日本人過去最高タイムを記録した。MGCへの出場権は既に獲得しており、現在はトラックなどでスピードを高める練習を重ねている。

大阪マラソンの結果について、「MGCに向けて一緒に取り組めることが自分としても楽しみ」と話す西山選手。「トヨタの今までの最高記録が2時間7分台だった。いきなり6分台の大台に乗ったので、チームとしてもっと上を目指していかないと」と、チームメイトの活躍に刺激を受けている。

トヨタは大石港与選手、松本稜選手、丸山竜也選手もMGC出場権を獲得しており、放送時点で計6人。他のチームにはない多さで、陸上長距離部にハイレベルなメンバーがそろっていることを示している。西山選手は「オリンピックに向けて全員が向かっていく中で、激しい戦いになると思います」とMGCへの展望を語っていた。

「陸上人生の集大成」宮脇千博の覚悟

今年の東京マラソンを走るのは、ベテランの宮脇千博選手と新加入の野中優志選手。MGC出場を目指して意気込みを語る2人のメッセージVTRが紹介されたのに続き、西山選手が各選手のキャラクターなどを解説した。

宮脇選手は部に在籍して13年で、今回の東京マラソンには「陸上人生の集大成」として、退部を覚悟のうえで臨む。「気さくな方で。チームの状況をすごく見てくれる選手。相談に乗ってくれて、何か悩んだら宮脇さん、という後輩が多いですね」というのが、西山選手からの印象。粘り強い走りが特徴だ。

野中選手は今年2月に移籍してきたばかりで、東京マラソンが加入後の初レース。「自分が強くなるためにすごく考えている選手なので、今後がすごく楽しみ」と西山選手も期待している。

コースマップで見どころを解説

番組では「東京マラソンコースマップ」を作り、見どころを徹底的に解説した。都庁をスタートして最初の約5kmが下り坂で、ゴールの東京駅までは平坦な道が続くコースはスピードが出やすく、「後半にどれだけ足を残せるかがポイント」と西山選手は語る。

マップの図解に加えたのが、レースを観戦する際に注目すべき地点と、選手が苦しくなってくる地点の2つのポイント。コース上に似顔絵入りの印を貼って、西山選手がその理由を説明した。番組後半では、鈴木朋樹選手にも2つのポイントに印を貼ってもらっており、その違いを比べてみるのも面白い。

競技用車いすにもトヨタの技術

特集のタイトルにあるように、東京マラソンは「2度楽しめる」。同じコースを車いすマラソンでも走り、1つのレースで複数の楽しみ方があるのが特徴だ。視聴者からは、職場の人も一般ランナーとして走るというコメントもあり、楽しみ方も応援の仕方も多様性に富む。

トヨタから車いすマラソンに出場するのは、2020年の東京マラソンを大会記録で優勝しており、アジア記録保持者でもある鈴木朋樹選手。大会前に練習しているところを、森田京之介キャスターが取材した。

森田キャスターがまず注目したのが、「レーサー」と呼ばれる競技用車いす。さまざまな箇所にトヨタの技術が使われており、足を置くための箱状の部分も内製で作られている。軽くするために薄いカーボンが採用され、空気抵抗の処理なども解析して開発された。

車いすのスピードをカメラで体感

車いすマラソンの選手はレース中、身体をずっと前傾姿勢にして走っている。「3輪しかないので、上体を上げてしまったら重心が高くなる。そうするとハンドルを切った時に後輪が浮いてしまうんです」と鈴木選手。日常生活で使う車いすとは目線が全く異なり、「乗用車からスポーツカーに乗り換える」感覚だという。

番組では、鈴木選手のヘルメットにカメラを装着してもらい、その目線での走行シーンを撮影した。地面すれすれでの時速約20kmのスピード感には、西山選手も驚いていた。東京マラソンでの平均時速は30km、最高時速は50kmになるそうだ。

それ以上に西山選手を驚かせたのが、鈴木選手のたくましい筋肉。同期入社で入社式の際に連絡先を交換した仲だが、「体つきが全然違う」と成長ぶりに感心していた。視聴者も「鈴木選手、身体大きくなった!?」とコメントしており、筋肉がさらに鍛えられたことは誰の目に見ても明らかだ。

絶対王者マルセル・フグに挑む鈴木朋樹

昨年1年間はあえて持久力のトレーニングに集中した鈴木選手は、今年に入ってスピードも磨いている。優勝に向けて最大の強敵となるのが、絶対王者と呼ばれるスイスのマルセル・フグ選手だ。パラリンピックのマラソンはリオと東京の2大会連続で金メダルを獲得しており、世界記録保持者でもある。

何度も勝てずに悔しい思いをしてきた相手に対して、「今年の東京マラソンでいうと、マルセルと一緒にレースがしたい。ある程度彼についていくスピードもついてきている実感はある」と鈴木選手は話す。

車いすマラソンでは、集団で走る選手たちが風よけのために先頭を交代しながら走るというシーンがあり、後続を引き離したり好記録を狙ったりするうえで重要な戦略の一つとなる。勝つためには協力しあうことも必要で、「2人でいることで自然と平均時速は上がりますし、ペースはもっと速くなると思います」と鈴木選手。レース終盤まで絶対王者から引き離されずに、ずっと一緒に走り続けることが勝負のカギを握る。

世界トップに勝負を挑む鈴木選手の姿勢に、西山選手は「その選手がいるからこそ、競いあって高めあえるというのもある。鈴木選手は世界で一番の選手が目標で、同期としてもすごく刺激をもらっています」と共感していた。

東京マラソンの結果は

放送後の3月5日に行われた東京マラソンの結果は、男子マラソンで野中選手が24位、宮脇選手が42位。野中選手はMGC出場権まであと21秒という惜しいレースだった。車いすマラソンでは、鈴木選手が1時間24分31秒で2位。マルセル選手と一騎打ちのレースに敗れはしたものの、1年前の東京マラソンと比べ、その差はおよそ半分に縮まった。パリまではまだ1年以上ある。どこまで詰められるか、追い越すのか、目が離せない。

宮脇選手は「とても苦しい42kmになりましたが、皆さんの応援のおかげでゴールまで戻ってくることができました。これが陸上人生でのひと区切りだと思います。たくさんの方に応援していただいて、幸せな陸上人生を送ることができました。本当にありがとうございました」と陸上長距離部のインスタグラムで語っていた。清々しい表情で最後まで走り切った宮脇選手には、素晴らしい未来が開けているに違いない。

レベルの高い部員同士がお互いに高めあい、さらなる向上を目指す陸上長距離部。絶対王者と一緒に勝負をすることで、より速く走ることができる鈴木選手。まだまだ続くパリへの道に、声援を送り続けよう!

毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2023年3月10日)は、パラアルペンスキーを特集する。1月の世界選手権ではスーパー大回転の金メダルを獲得し、好調の森井大輝選手。日本代表の合宿を取材し、その速さの秘密に迫る。今シーズンは陸上に専念中の村岡桃佳選手も、ゲストとしてスタジオ初登場の予定。ぜひ、お見逃しなく!

Facebook facebook X X(旧Twitter)

RECOMMEND