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「下請け」でも「仕入先様」でもなく「仕入先さん」 6万社と共存共栄へ 想いと実態

2024.10.10

トヨタの調達本部は、仕入先とどう向き合ってきたのか? 現在のサプライヤー数や改善の取り組みは? さらには創業時から受け継がれる心得に迫った。

イコールパートナー

ここまでトヨタの調達の規模感や価格改定の考え方について見てきた。ここからは、拡大労使懇にも参加していた調達本部の熊倉本部長、加藤副本部長に話を聞いた。

まず2人に聞いたのは、仕入先と向き合うスタンスについて。

加藤副本部長

1992年に入社後、生産管理部門などを経験したのち、2007年より調達部門へ、北米への赴任を経て22年より現職。

豊田章男社長(当時)に「君を副本部長に(任命する)」と言われたときのことをずっと大事にしないといけないなと思っています。

(豊田社長は)「仕入先さんから『話しやすい』『声を聞いてくれる』と言ってもらえるように。それはポジションとか肩書きがどうなっても忘れちゃいけない」と言われました。

仕入先さんとは、“共存共栄”とか“対等”とか“上も下もない”、と常に僕らは思っています。とはいえ発注する立場と受注する立場ですから当然、上下とか感じるところがあると思うんですが、(仕入先さんから)声をかけていただけるような調達マンでありたいなと思っているんですよね。

とかく今、適正取引も一つのテーマですけれども、困っていることをいかに聞かせてもらえるか、というところは、本部としても個人としても大事にしたいです。

熊倉本部長

1985年にトヨタ自動車に入社して以来、調達部門一筋、欧州への赴任やダイハツ工業・豊田自動織機への出向を経験し、2020年より現職。

たくさんの仕入先さんがある中で、みんなそれぞれの立場があって、会社の状況も違うし、つくっている製品やサービスといった商品も違います。最近も自動運転とか電動化とか、新しい技術が入ってきて、昔と違う仕入先さんがたくさん出てきています。

でもやっぱり気持ちは一つにしてやっていかなきゃいけないと思います。

そこに対して加藤君が言ったみたいに、本音で話し合える関係をつくっていくというのが、1つの大きな武器になるんじゃないかなと思います。時代によって環境が変わるので、判断に迷うこともありますが、相互信頼とかイコールパートナーという価値観に常に立ち戻るようにしています。

仕入先さんとの関係を強めながら、良いものをつくっていく。そういうことを意識して進めています。

ちなみに熊倉本部長が調達副本部長として、豊田自動織機から戻ってきたのは2020年。このとき豊田社長からは「仕入先さんとの気持ちが一つになるようにしてほしい」と言われたという。今も向き合い方は一貫している。

そして、そんな現場の困りごとを把握し、気持ちを一つにするためにも、加藤副本部長はSSAに期待を寄せる。

加藤副本部長

(トヨタは)Tier1さんとしか直接取引の話ができない、これは機密や独禁法上しかたないんですね。ですけどSSAは、取引の話ではなく改善を進める活動なので、Tier2Tier3Tier4…の方と一緒につくり込むことができるというか、どんな困りごとがあったのか知ることができます。

みんなが一緒になって取り組める良い活動だと思っています。

ですので、むしろTier2Tier3Tier4…の方と、一緒にやるイメージがありますね。

SSAを通じて原価低減が図られた分については、「仕入先さんに(利益を)受け取ってもらっています」と熊倉本部長。仕入先が取引するのは、トヨタ以外もあるため他のカーメーカーとも足並みをそろえて進めているところだという。

ただ、先に紹介した通り、トヨタにおけるサプライチェーンは6万社にも及ぶ。Tierの深いところまで浸透させていくのは一朝一夕にはいかない。

熊倉本部長

SSAにしても適正取引の浸透にしてもTier1経由で、それこそチェーンをたどるようにやっていくわけです。

でも6万社全部となると確証は持てないです。SSAにしても6万社全部を訪問してやるわけにはいかない、もどかしさがあります。

どこまでできているかは、いつも追いかけていきたいところですし、逆に言うと十分ではないところもたくさんあるんじゃないかと、悩ましいところです。トヨタの部品をTierの深いところでつくってもらっていて、たどっていかなきゃその仕入先さんまで行きつかない。

いろいろな形で実態を吸い上げて、謙虚に話を聞いて対応していかないといけません。

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