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【全社緊急課題】長納期をトヨタ労使が徹底議論

2022.11.25

出口が見えない新車の長納期問題。「全社緊急課題」の解決へ、クルマづくりに関わる各部門のトップとグループ・販売店を含む労組の代表が議論を深めた。

全社総出の長納期対応(販売)

クルマづくりに関わるさまざまな部門から、長納期への対応が説明されるなか、最後に取り組みを語ったのは販売部門。

特に影響が深刻な地域として、国内販売事業本部の赤尾克己 副本部長がメーカーとお客様との間に立つ現場スタッフの頑張りを伝えた。

さらに、コロナの影響で販売店の受け入れ体制が縮小傾向だったこともあり、今後、せっかく運ばれた1台がお客さまに速やかに届けられなくなる事態を回避すべく、全国のトヨタの中古車を扱うトヨタユーゼックのヤードが使えないか。

また、納車前点検やオプション取り付けを行う新車点検センターのキャパシティが不足した際に、全国にあるデンソーのサービス拠点と連携ができないかなど、検討を進めていると発言した。

もう一つ、この場で紹介したのが、何十年も続くトヨタの需給の仕組みを大きく変えるJ-SLIMJapan Sales Logistics Integrated Management)というシステム。

これまで、納期は3カ月先までしか示せなかったが、その先まで知らせることができるようになるという。

赤尾副本部長は「こうした改善をまずは新型プリウスで先駆け、来年以降は全車種に展開して仕組みを変えていけたら」と今後の展開めどを語った。

J-SLIMについては、友山茂樹 同本部長がさらに補足。「短期的な対応に限らず、これを機に、従来の商品、生産、調達、需給、販売のあり方に、大きくメスを入れて抜本的な改善を図る必要がある」と指摘する。

友山本部長は、副社長を退いた後、20211月にエグゼクティブフェローに就任し、TPSの伝道師として活動。今年7月に本部長となり、国内の長納期の問題に向き合っている。

納期が見えるようになることで、生産制約がタイムリーに改善でき、内示精度の向上にもつながるほか、確実な高回転・短期型のリースが可能になるなど、さまざまなビジネス変革につなげることができるという。

「長納期問題を将来の変革に向けたチャンスと捉えて、さらなるCS(顧客満足度)強化、競争力の強化につなげていきたい」と今後の発展に期待を示した。

仕入先課題への向き合い(人材確保)

自動車産業550万人への貢献を目指して、議論を重ねているトヨタ労使。今回も、全トヨタ労連の星野義昌副会長が挽回生産に備える仕入先の声を伝えた。

星野副会長は、ほぼ全ての会社で、経営者が人材確保に苦労している実状を説明。

特に自動車関連企業が集積する愛知県では、同じ産業内で人の取り合いになっていること。中小企業では、新卒採用が激減し、直近数年、全く採用ができていない会社があること。補おうにも、大手の期間従業員の方が条件も良く、自社の正社員が転職していくケースもあること――。

さらに、円安の影響などで外国人労働者も集まりにくく、「会社間の要員確保の現状を丁寧に確認し、人材確保に困る会社へのサポートをお願いしたい」と申し出た。

これを受けて、伊村隆博 生産本部長は「仕入先は前工程。部品が一個でも届かなければ、生産ができない。我々は一心同体で、仕入先から販売店まで、すべてのたすきがつながって初めて、一台のクルマができる」と指摘。

仕入先に対して、グループを挙げて応受援できる仕組みの必要性に触れ、中長期を見据え、人を派遣する人財バンクの構築を進めていると述べた。

仕入先課題への向き合い(適正取引の浸透)

全トヨタ労連の星野副会長は、続けて、トヨタが仕入先の困りごとを受け止め、価格改定の見送りや費用負担を拡大していることに、感謝の声が挙がっていることを共有。

「同様に取り組む企業も出てきており、グループ内で適正取引の浸透が進んでいる」と実感を語った。

そんな中で、さらなる活動の進展を期待して、旧型補給品の取引が負担となっている、困りごとへ寄り添う活動を業界全体に広げてほしいという声も出始めていると報告した。

トヨタの考えを聞かれ、回答したのは日本自動車工業会(自工会)のサプライチェーン委員会 調達部会の部会長も務める加藤貴己 調達副本部長。

2019年から旧型補給品の適正取引の浸透に努めており、古い型の保有が場所や資金面で仕入先の負担になっているとして、廃却できないか確認を進めているという。

また、こうした取り組みを、業界全体に広げていくべく、自工会で自動車14社が好事例を学び合う場を用意している事実を紹介。

「課題は多いが、ようやくこの12年くらい、同じ想いを浸透させることができ始めているので、しっかり進めていきたい」と述べた。

厳しいときこそ試される労使の関係

今年最後の労使懇の結び。光田聡志書記長は、組合を代表してこう総括した。

「トヨタで働く者として、お客様に申し訳ないと思いながらも、心のどこかで『部品が来ないから』という気持ちがなかったか、一人ひとりが胸に手を当てて考えて、今後やるべきことに全力で取り組んでいくことが重要」

「こういう厳しいときだからこそ、労使の関係が試される。職場の組合員が全力でお客様のために取り組めるよう、障害になっている困りごとがあれば、組合としてしっかり拾い上げて、会社と議論をさせていただきたい」

続いて、会社を代表して、前田副社長が締めくくった。

「今日時点での情報を正しく伝えていくことがとても重要だが、緊急事態では状況が刻々と変わる。状況を正しく理解し続けることがとても大事。今日はスタートでもゴールでもなく一断面」

「労使懇のとき以外でも、情報のやり取り、話し合い、対応の検討を販売店、仕入先の皆様とも一緒になって、労使が続けていくことが大事」

3回に及んだ労使懇も年内は今回が最後。デジタル化や全員活躍といった継続テーマを議論しつつ、その時々に応じた経営課題や職場課題について、労使で議論を深めてきた。

来年も2月に、春交渉が始まる。自動車産業550万人への貢献を目指し、トヨタ労使の話し合いは続く。

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