今シーズンもスーパー耐久を通して増え続けたカーボンニュートラル社会実現に向けた仲間たち。カーボンニュートラルを「真剣に」、「楽しんでいる」仲間たちの姿を取材した。
水素エンジンとCN燃料を体験してもらうためのカート
イベント広場では水素エンジンとカーボンニュートラル燃料で走るレーシングカートも初お披露目もされた。GR車両開発部の伊東直昭主査はレーシングカートの目的をこう話した。
伊東主査
S耐で皆様にいつも見ていただいている水素エンジンカローラ(32号車)、カーボンニュートラル燃料のGR86(28号車)ですが、一般のお客様にこれらの技術に乗っていただくという機会がつくれないかと考え、レーシングカートにこの技術を取り入れました。
今後、いろいろなイベントで出していきますので、ぜひ皆さんに乗っていただいて、実際に水素エンジンがどんなものか、カーボンニュートラル燃料がどんなものか体感していただきたいと思っております。
コンセプトとしては水素エンジンのカートはハイスペック寄りの性能にしています。カーボンニュートラル燃料のカートはどちらかというと、子供たちでも乗れるようなレベルにしております。
エンジンはヤマハ発動機さんに協力いただき、水素エンジンカローラの技術をそのまま入れています。インジェクターもカローラと同じものを使っております。
カーボンニュートラル燃料のカートは、ヤマハさんのMZというエンジンが載っていますが、ガソリンでも走れますし、カーボンニュートラル燃料でも走れます。
こちらは、ローパワーに抑えていますので、カーボンニュートラル燃料がどんなものかお子さんの勉強のツールとしても使っていただけるかなと思っております。
11月16日から開催されたラリージャパン2023では、豊田スタジアムでこのカートを使ったレーシングドライバーによるデモランも行われている。
イベント広場で発表された新しい取り組みはまだまだある。
水素タンクの端材を建築素材として再利用する
総合建設会社の大林組とトヨタがサーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進を目指し共同開発した「リカボクリート工法」の説明も行われた。
MIRAIなどの水素タンクをつくるときに使う炭素繊維(CFRP)。廃棄物の量を極限まで減らす取り組みをしても製造の都合上、どうしても端材が出てしまうという。
そして、この端材は表面にコーティングされている樹脂が硬化してしまうため、今までCFRPの性能を保ったままで再利用することが難しく、電炉で鉄をリサイクルする工程での原料としてしか利用できなかった。
この端材を活用するために大林組とトヨタが共同開発したのが「リカボクリート工法」だ。独自の熱加工で、タンク製造後に樹脂が硬化してしまった端材表面層からCFRPをはがす技術を確立した。
CFRPの性能を保ったまま連続的にはがすことができるようになったため、コンクリート補強用短繊維への加工が容易になっているという。
また、このCFRPを使用することにより、従来コンクリートに混ぜていたポリプロピレン製短繊維の3分の2の添加量で同等以上の性能を発揮できるようになり、新品の炭素繊維と比較してCO2排出量が1/15に、通常の補強鉄筋と比較しても、1/9に低減できようになる。
さらに、鉄筋は時間が経つとコンクリートのなかで腐食し、膨張してコンクリートを破壊してしまうことがあるが、CFRPは腐食しないため、耐久性も期待できるという。