前年並みの実績となったトヨタの2027年3月期 第1四半期決算。自己株式取得の発表もあり、株主還元と成長投資を進めていくことが説明された。
トヨタは2026年8月4日、2027年3月期 第1四半期決算(2026年4~6月)の内容を発表した。
実績と通期の見通しは以下の通り。
2026年4~6月期の営業利益の実績は、前年同期比マイナス1,026億円の1兆634億円。中東情勢の影響を受ける中でも、為替影響に加え、原価改善、バリューチェーン収益の拡大やハイブリッド車(HEV)の増販により、前年並みをキープした。
2027年3月期通期の営業利益見通しは、中東向け代替物流ルートの構築による販売回復、バリューチェーン事業の強化をはじめとする営業面での改善努力を織り込み、前回比4,000億円増の3.4兆円を見込む。
そんな中、トヨタは市場買付による1兆円の自己株式取得を発表した。(期間は2026年8月5日~27年8月4日)
市場との対話、一層深める
自己株式取得とは、会社の利益を株主に還元する方法の1つであり、株式会社がこれまで発行した株式を、自ら買い戻すことを指す。配当金のように株主が直接的に還元を受け取る方法ではないが、1株当たりの価値を高めることで、株主に利益をもたらす効果がある。今回は、市場から買い付けを行うことで、流通する株式数が減り、市場での需給改善も期待される。
あわせて今回、過度な自己株式保有を避けるため、上限1兆円の取得と同時に、発行済株式総数の1.37%に当たる2億株の自己株式を消却することも決めた。
これまでトヨタは、商品・事業・財務の強固な基盤を活かして、競争力強化や収益力向上の取り組みを進めてきた。一方で、市場からの評価という点では、まだまだ向上の余地があると見られていた。
今回の自己株式取得について、同日開催された投資家への決算説明会の中で、東崇徳 経理本部長は、その狙いをこう語った。
東 経理本部長
株式市場の状況も踏まえて、しっかり還元していくことをお伝えしたいという意図で発表した。個人株主を含め、多くの皆様にトヨタの株を持っていただいている。ファンドの他に、年金資産として持っていただいている方々も数多くいる。
(中略)
どうすれば投資家・株主の皆様に還元できるのか、色々な意見を伺ってきた中で、自社株買いや安定的で持続的な増配など、多様なニーズを確認している。ひとつの方法だけではなく、組み合わせながら皆様に還元したい。市場としっかり対話し、取り組みを見直しながら、考えていく。
トヨタは、多様な株主から、地域住民、仕入先、販売店、従業員まで、世界中にいる多くのステークホルダーとともに事業を行っている。「自動車はみんなでやっている産業」。その想いのもと、今回は株主還元のあり方について検討を重ね、第1四半期のタイミングで自己株式取得を決めた。
成長投資の継続は…
資本効率の向上を進める一方で、成長投資の歩みを緩めることはない。
5月の2026年3月期決算発表で示したとおり、持続的な成長軌道を実現するため、「稼ぐ力」の強化に向けた投資を着実に進めている。
その1つが、HEV需要の拡大に対応する生産能力の増強だ。2026年4~6月は、トヨタ・レクサス販売台数の電動車比率が55.3%となり、その大半をHEVが占めた。通期のHEV販売は、初の500万台超を見込んでいる。
HEVの旺盛な需要に応えるため、日本では2027~28年にかけて約60万台規模の生産ラインを次世代電池へ切り替えるなど、性能とコスト競争力を磨きながら、供給能力を増やす計画だ。30年に向けて、さらなる増強の検討も進めている。
もう一つの取り組みが、生産車種の再編。
地域ごとの需要に迅速に対応するため、地域に根差した競争力のある生産体制の構築を進めている。
7月7日には北米トヨタがテキサス工場への36億ドルの追加投資を発表した。将来的な需要拡大が見込まれるインドでも新たに2つの工場を建設するなど、地域ごとの供給体制を強化していく。
持続的成長に向けて
こうした自己株式取得や成長投資を継続できるのも、もっといいクルマづくりで培ってきた商品力、そして強固なキャッシュ創出力と財務基盤があるからこそ。
それらの基盤を活かして、ROE*20%をひとつのモノサシとして、モビリティカンパニーへの変革を加速する考えだ。
*Return On Equity:自己資本利益率。最終的なもうけを示す「純利益」を、株主などから集めたり、利益を積み立てたりした、返済義務のない資金である「自己資本」で割ったもの。「%」で表される。
投資家との対話の場で、こうした取り組みへの考え方を問われた東本部長は、次のように語った。
東 経理本部長
(ROEの)分母(となる自己資本の面)では、この数年で、政策保有株を相当縮小している。このような見直しとともに、自社株買いや配当のあり方を考えていく。分子(となる利益の面)では、まずハイブリッド車の能力増強、バリューチェーン収益の拡充、そしてロボティクスの領域における取り組みなど、トヨタグループを挙げて進めていきたい。
「成長と還元の両立」「多くのステークホルダーとともに」。その想いを結果で示すべく、トヨタらしい持続的成長に向けた挑戦は続いていく。