近健太 社長は社長就任後、初めて迎えた決算発表で何を語ったのか?
8日、オンラインで行われたトヨタ自動車の2026年3月期の決算説明会。
米国関税や中東情勢など大きな環境変化が起こる中、説明会では、宮崎洋一 副社長がトヨタを再び成長軌道に戻すための取り組みと決意を示した。
続けて、4月にトヨタ創立から13代目の社長に就任した近健太 社長が「持続的成長」に対する強い想いを語った。メッセージの全文を紹介する。
【近社長メッセージ】失敗を恐れず挑戦できるよう背中を押すのが私の役割
近社長
私からは、トヨタの経営に対する想いをお話しさせていただきます。
4月に社長に就任して以降、開発、認証、工場、仕入先、販売店など現場を回っております。そこには、多くの課題に向き合いながらも、「もっといいクルマ」を目指し、懸命に取り組んでいる仲間がいます。
人材を育成する力、TPS(トヨタ生産方式)を突き詰めようとする改善風土、問題解決手法の浸透度、全員参加の取り組み、他責にせずにやり切ろうとするエネルギーなど、トヨタの現場力は改めてすごいと思いました。
もちろん、それでも、課題は山積みです。
例えば、管理・間接の職場は、まだまだ強くなる余地が大きいと感じています。
自分たちの技能は何か? をもっと突き詰めることで、現場を「管理」するのではなく、自ら現場に入り、オペレーションを支える。
帳簿上で数字を「管理」するのではなく、現場で実際に原価を下げていく。
管理する仕事から、価値を生み出す仕事へ。トヨタの仕事の原点、TPSに立ち返る必要があると感じております。
製造業の強みは、モノと現場があることだと思います。
ラインのスピードを見れば、モノが売れているかどうかわかります。異常が起これば、ラインが止まります。モノが壊れたり、不良も出ます。
次から次へと課題が生まれ、一日として同じ日はありません。
目の前の課題を解決しなければ、お客様にクルマをお届けすることができない。
現場には逃げ場はありません。
だからこそ「この状況を改善したい」という強い気持ちが生まれ、知恵と工夫を引き出し、考える力を持った人が育ちます。
そうした環境をつくっていくこと、そういう環境にどんどん人材を送り込むことも、私の役割だと思っています。
豊田(章男)社長と佐藤(恒治)社長のもとでの17年間は「もっといいクルマをつくろうよ」を合言葉に、「商品」と「地域」を軸にした経営に取り組み、グローバル・フルラインアップの自動車メーカーとしての基盤を確立した期間だったと思います。
その結果「カーボンニュートラル」と「すべての人の移動の自由」どちらも目指すことができます。
「もっといいクルマをつくる人を増やす」
私は、それがトヨタの持続的成長のエンジンであり、私の使命だと思っています。
私はクルマの運転は素人ですが、評価ドライバーの方から運転指導を受けることがあります。
「ブレーキは速く走るためにある」「いいブレーキがないとアクセルは踏めない」
これはそのときに豊田会長から言われた言葉です。
私はアクセルとは、成長のための投資を緩めずやり切ることだと思います。グローバル・フルラインアップ、マルチパスウェイ、水素社会、AIやロボティクス、ウーブン・シティ―。
全てが重要であり、開発の現場でも、その実現に向けて必死に挑戦する仲間がいます。
新しい技術、新しいプレイヤーが数多く登場している今は、何が正解か分からない時代です。
だからこそ、多くの仲間が失敗を恐れず挑戦できるよう背中を押すのが私の役割です。
振り返ると、会長の豊田が社長に就任した2009年当時、リーマンショックの影響で赤字に転落した直後、まさに会社存亡の危機でした。
当時、私は豊田の秘書を務めておりました。
「赤字だと何もチャレンジさせてあげられない」
そう言って、誰かが悲しむ決断、「やめる」決断ばかりをしてきた豊田の姿を見てまいりました。
それを今まで忘れたことはありません。
そして「急成長しても、急降下すれば多くの人にご迷惑をおかけする」と言って、「持続的な成長」にこだわってまいりました。
この基盤があるからこそ、外部環境が不透明さを増す今の状況においても、腰を据えて改革に取り組みながら、次の成長への手を打ち続けることができるのだと思います。
自動車産業は裾野が広く、多くの雇用を創出する基幹産業です。
そしてモビリティは将来にわたって、人と社会になくてはならないものです。
だからこそ、トヨタはしっかりしなければならない。そして「トヨタが成長することはいいことだ」と多くの方々に思っていただかなければならない。
550万人の仲間はもちろん、世界中のステークホルダーの皆様とともに、持続的に成長する。
それがトヨタに求められる経営だと、私は思っております。
この数カ月間、いろいろな職場を回る中で、たくさんの人が話しかけてくれて、たくさんのことを教えてくれました。
このように、自分に意見を言ってくれる仲間を大切にして、皆様から「決断しましたね」「責任を取りましたね」と言っていただけるよう努力してまいります。
多くの仲間が挑戦できる場を大切にし、会社も人も成長し続けるトヨタを目指し、みんなで心を合わせて努力してまいります。
引き続き、皆様のご支援を賜りますよう、お願い申しあげます。