営業利益3兆円の見通しも示した2023年3月期決算。クルマの電動化が進む中、記者との質疑から見えてきた新経営チームの戦略とは。
Ⅲ:生産台数1,010万台の道筋
――1,010万台の生産見通しだが、どのように達成するのか?
宮崎 副社長
お客様からいただいている反応と、我々が今後市場に投入していこうとしている商品を考えると、1,010万台ぐらいまでの数字を基準にできると思っています。
一年前の今ごろは、どの半導体がいつ欠品するか全くもって見えていませんでした。生産を開始した月で、突然部品が切れて生産台数を失うことが、去年の今ごろは続いていました。
この1年で、まずリスク半導体を見えるようにして、その半導体を代替生産できるように設計変更しました。販売サイドもリスク半導体ではないものを搭載しているクルマを積極的に売るようにしてきました。
その結果、足元はまだまだ完全ではありませんが、我々で半導体をマネージメントできる能力が大幅に改善してきたこともあり、新たな基準として今期は1,010万台という数字を示すことができた。
我々が求めているのはお客様の笑顔。そのために現場で一人ひとりしっかりお客様と絆を深めていく。この地域軸経営と、そのもとになる商品軸経営の結果が、1,010万台につながっています。
Ⅳ:BEVの競争力強化と中国市場
――トヨタはハイブリッドを含めて稼げる車種がたくさんあることが武器。BEV(電気自動車)を含めた車種で、しかも全地域で一定の稼ぎを出すのが、トヨタのスタンスなのか?
佐藤社長
クルマをコモディティ化させないために、ご指摘いただいた通り、ハイブリッドの技術は、我々の強みです。
今後、成長領域だと思われる新興国では、CO2を低減する技術でありながら、収益基盤の確保と、「もっといいクルマづくり」を地域密着で行っていく両面から非常に重要だと思っています。
一方で、我々が掲げております「マルチパスウェイ」は、どこか特定の領域に特化することなく、地域のニーズに寄り添って、その地域に一番適した形のソリューションを提供していくことが大切だと思っております。
ハイブリッドのみならずBEVにおきましても、我々らしいクルマづくりが大事だと思っています。
クルマ屋ならではのBEVのあり方を、今一生懸命模索しているところ。
パワートレーンが電気に置き換わっただけではないモビリティを、BEVという概念の中でつくっていく。力を入れて取り組んでいく前提で新組織も立ち上げてまいります。
――世界最大の中国市場をどのように見て、この市場でどうシェアを維持、拡大していく考えか?
宮崎 副社長
実績期を振り返りますと、半導体をうまく手配できなかったことと、中国固有の、年初からのコロナの影響などがあり市場が一時期冷え込むシーンが所々ありました。
結果、日本から出している中国向けのレクサスの台数が減ったのが、前期の数字の背景です。
ただ、中国は現地での事業があります。それも含めた中国事業で見ると、実は去年も台数は苦しい中でしたが、前年に対してシェアは確実に伸ばしてきているのが実績です。
まだまだ中国ではハイブリッド、PHEV(プラグインハイブリッド車)も含めてお客様からご愛顧いただいています。
昨年レベルで9%ぐらいまでシェアは伸びてきております。
今後もマーケットとしては厳しい競争環境が続くと思いますが、中国のお客様に愛されるクルマ、お客様に喜んでいただけるような売り方、お客様との接点の持ち方、これを追求しながら事業を伸ばしていけるように頑張っていきたいと思っております。
――上海モーターショーにも赴き、(中国の)電動化シフトに対してどのような印象を受けたか?
中嶋裕樹 副社長
上海モーターショーに行った時に、正直驚きを隠せない部分がたくさんありました。
特にBEVなどの電動化が進んでいることの競争よりも、それが当たり前になったうえで、差別化の要素としての知能化において、競争が非常に活発に行われている印象を持ちました。
中国のお客さまが、先進的と思われるものを、いかにタイムリーに提供していくか。
例えばインフォテイメントの部分だとか、デジタルコックピットといわれる開発におきまして、日本から対応していくと時間がかかるので、「(開発現場を中国に置いて)現地化を加速していこう」、「現地の仕入先様のお力も借りながら進めていこう」と決めたということです。
決算報告が行われた10日、トヨタは「クルマ屋ならではの次世代BEV」の開発と事業を加速させるため、新たに「BEVファクトリー」を設置し、クルマ開発センターの加藤武郎センター長がプレジデントに就任することを公表している。
中嶋副社長は質疑応答の中で、加藤プレジデントを「かつて中国でもBEVを開発していた」と紹介するとともに、「次世代BEVで未来を変えていきたい」というコメントも披露した。