日本の移動を支え、未来に向けて行動してきた自動車産業。550万人の仲間たちに伝えられたメッセージとは。
2022年1月5日、日本自動車工業会(自工会)は、年頭にあたり、豊田章男会長による自動車産業550万人に向けたメッセージ動画を公開した。トヨタイムズでも、動画と全文でお届けする。
共感の輪を広げる年へ
豊田会長
自動車産業で働く550万人の皆様、明けましておめでとうございます。そして、ありがとうございます。今年も、私たちはこの言葉から始めたいと思います。
昨年は、新型コロナウイルスとの闘いを続けながら、カーボンニュートラルへの挑戦が始まった年でもあったと思います。その中で、想いに共感する仲間が集まり、未来のためにみんなで行動してきた1年だったと思います。心より感謝申し上げます。
今年も、仲間を増やし、さらに共感の輪を広げる1年にしたいと思っております。そんな想いを胸に、自動車工業会の新たな体制がスタートいたします。こちらの映像をご覧ください。
流された映像は、自工会の新体制を発表した、昨年11月の記者会見でのやりとり。新体制で副会長を務める6人が、それぞれの想いを語るシーンだ。
豊田会長
片山さん、日髙さんは、経緯を私とともに見ておられましたので、どうしてこういうプロセスになったのか、お二人からご説明をお願いしたいと思います。
片山正則 副会長(いすゞ自動車・代表取締役社長)
新しいモビリティ社会、新しい自動車産業の基盤をどうつくっていくかという中で、大型車、軽自動車、二輪車、それに加えて、日産、ホンダ(が副会長を務める)という形が、我々が今から解決、行動していかなければいけない課題について、議論をした結果だと思っております。
大型4社は、前回の体制から大きく意識が変わりました。今直面しているカーボンニュートラルやCASEに対しては、乗用車とトラック系で(優先順位の)前・後ろがあるわけではない。
私どもも、しっかりと意見を言わせていただくという形に、大型車委員会自体が大きく変わっております。そういった流れで、非常に自然な形で総意として決まったと理解しております。
日髙祥博 副会長(ヤマハ発動機・代表取締役社長/社長執行役員)
協調領域を明確にしながら、自工会が本当にチームとして取り組んでいけるかどうかが問われる局面でした。自工会は、しょせん呉越同舟の組織なのか、それとも協調領域を明確にした上で、1つのチームとして戦っていけるのか。
いろいろなお考えがあるなかで、実は会長・副会長が事前に集まって、「本当にみんなでチームとしてやっていけるのか」という話し合いが持たれております。
その中で、会長・副会長7名が、協調領域を日の丸で戦っていこうと決意を固めた上で、今日の記者会見に臨んでいることを、付け加えさせていただきたいと思います。
鈴木俊宏 次期副会長(スズキ・代表取締役社長)
人々の日々の暮らしを支えるだけでなく、ラストワンマイルを支える軽自動車が果たす役割は非常に大きいとも思っています。
自工会のメンバーのひとりとして、軽自動車に期待される領域をしっかりとつくり上げる。「下駄」として賢く使っていただける軽自動車を極める取り組みを、ステップを踏んでしっかりと推進していきたいと考えております。
三部敏宏 副会長(本田技研工業・取締役/代表執行役社長)
2050年のカーボンニュートラル達成に向けては、待ったなしの状況ではありますが、決して有事というネガティブなことではなく、新しい領域も含め、それに取り組む絶好のチャンスだととらえて、ポジティブに受け止めながら進めていきたいと思っています。
これから豊田会長はじめ、自動車工業会の皆さんとともに、変革の主体者となり、時代をつくっていこうと思っております。
豊田会長
COP26のとき、別件ではあるものの、現地に行っておられた日産 内田社長に、臨場感も含めて、補足いただきたいと思います。
内田誠 次期副会長(日産自動車・代表執行役社長兼最高経営責任者)
会長ありがとうございます。あの同じ時期に現地におりましたムードとしては、我々が気候変動に対してどういった対応ができるかという社会的な責任を含めて、考えさせられるような現場であったと思っております。
各社の強みをベースに、幅広い技術や選択肢を活用したロードマップや中期戦略の策定、さらには、自動車業界の枠を超えて、どういう連携をして、取り組んでいけるのか。
こういう論議を、自工会の皆様、産業を超えた方々、また、政府と進めていくことが急務と痛感しておりますし、ここにいらっしゃる皆さんとともに、進めていきたい気持ちでおります。
永塚誠一 副会長
カーボンニュートラルに対する危機意識は、5団体の中で大変強いものがございます。
自工会は、自動車5団体で協力して、勉強会の開催に着手をしているところで、5団体のメンバー以外の多くの中小企業の皆様方にも、参加いただいています。
カーボンニュートラルは、頭では分かってはいるものの、自分の会社の実業として何をしたらいいのか、あるいは、どこまで、いつまでやらなければいけないのか。さまざまな悩み事がおありだと伺っております。
仕入先の皆様方の困りごとを丁寧にお聞きし、ともに知恵を出し合い、サプライチェーン全体での相乗効果を生みながら、一歩一歩進めてまいりたいと考えています。
私たちには、仲間がいる
ビデオメッセージに戻り、豊田会長は、自動車産業への想い、未来への想いとともに、ある言葉を550万人に送った。
豊田会長
副会長の皆様がお伝えされたこと。それは、「未来は、みんなでつくるもの」であるということです。
自動車は先人たちが人生をかけてつくってきた産業です。自動車がつくりだす豊かな未来を夢見て、みんなで切磋琢磨してまいりました。
私たちもまた、人生をかけて、今の仕事をやっております。私は、どんなに時代が変わったとしても、日本を支えてきた自動車産業の仕事と人財を未来につなげていきたい。そう思っております。
正解がない今の時代、変化への対応は、簡単なことではありません。でも、私たちには仲間がいます。コロナ危機に直面したときもみんなで一緒に動くことで、「経済復興のけん引役」を担うことができました。
新年にあたり、感謝の気持ちとともに、この言葉を皆様にお伝えしたいと思います。「私たちは、できる」。
550万人が行動を起こせば、未来の景色は、きっと変えることができる。「豊かな日本」と「美しい地球」を子どもたちに残すことができる。私は、そう信じております。
今年も安全・健康第一で、楽しく、明るく仕事をしてまいりましょう。皆様、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
「私たちは、動く。」というメッセージとともに、自動車産業550万人の結束を呼びかけた昨年。
「550万人の一歩は、550万歩になる」。この想いを胸に、コロナ危機対応でも、カーボンニュートラルでも、たくさんの仲間たちが一歩を踏み出してきた。業界の枠を超えて、一緒にチャレンジする仲間が増えてきた。
2022年、この歩みを止めることなく、たとえ困難に直面しても、みんなで未来を切り拓いていく。そんな決意を共有し、自動車産業550万人の新たな1年が始まった。