クルマづくりの熱意を胸に集まったエンジニアたち1.2万人が一堂に会する「技術者の一日」。79年前から受け継がれるクルマづくりの精神、技術を通して人と人がつながるこの交流会について取材した。
トヨタ自動車誕生の10年後、1947年から続く「技術者の一日」というイベントがある。クルマに使われている技術や、未来のモビリティにつながるかもしれないテクノロジーなどが並び、エンジニアが説明し、交流する場となっている。
終戦直後の混乱の中、衣食住にも事欠くような時代に、自動車づくりへの熱意を胸に抱えたエンジニアたちが集い、始めた。
技術系は「木曜会」、製造系は「七日会」と名付けられたその集まりは、研究報告や実験の発表、討論会、講演会を毎週開いていたという。
1947年に2つの会を統合し、トヨタ技術会(ト技会)が誕生した。79年経つ今でも、この精神は大切に引き継がれている
人中心で技術と技術が重なり合う交差点
ト技会の現在の会員数は約24000人。技術力向上や社会貢献を目的として、活動を続けている同会について、豊田章男会長は70周年記念誌に「『専門や領域を超えて、もっといいクルマをつくるため、声を掛け合い高めあう。トヨタらしさとは何かを追求する』。これがトヨタ技術会の設立の精神であり、皆さんが先人から受け継がれた活動そのものだと思います。」と寄せている。
会社の規模が大きくなった近年では、さすがに毎週とはいかないものの、エンジニアたちの自己研さん、社内親睦の場、交流できる機会として、「技術者の一日」は続けられている。
79年目となった今年は、トヨタ本社地区の4会場で2日間に渡り開催された。
この会に参加するのはトヨタの社員だけではなく、グループ会社、海外事業体、協力会社など、2日間で訪れたのは約12000人で昨年から倍増、コロナ禍前と同等の規模に回復した。
今年のトヨタ技術会 委員長を務めるCV統括部の鈴木寛之部長は、今年の狙いについてこのように話す。
鈴木委員長
もともと行われていた木曜会・七日会の伝統を引き継ぐのがこの「技術者の一日」です。
技術と技術が重なり合う交差点に人が集う場、そこで語り合える場をつくっていきたい。そのような「場」を一過性で終わらせず、その先につなげていきたい。
そういった意味で、企画のメンバーが偶発的な出会い、人と人とをつなぐ場を定期的に提供することにこだわってくれています。
展示される技術は、ものづくり、未来のモビリティ、AI、ロボティクス、エネルギーマネジメント、電動化、水素、カーボンニュートラル、サーキュラエコノミー、車両など、多岐に渡る。
鈴木委員長
先端先進のトレンドのようなものの展示会ではなく、技術を見て、触れて、身近に感じてもらう。それによって会話が生まれるということを意識して構成してくれました。
研究発表会は、若手の登竜門の位置づけとしていつも多くの募集があります。今回は展示にも協力してくれた技術者の発表が最優秀賞を受賞するなど、熱意と研さんの精神をいつも感じることができます。
講演会では、「働き方改革」と昨今言われている中、仕事への向き合い方、人間関係の在り方や行動変容につながるような気付きを持ってもらえたらと思っています。
設営メンバー、説明員、発表者、来場くださる方すべてが主役となって1日を過ごしてもらうことにこだわりながら準備してきました。
いろいろと見てほしいという想いから、会場をもっと増やしたいという話も出たのですが、人と人をつなぐという意味では、コンパクトにまとめておくことも大切だと思い、1日でしっかり回れて、会話ができる会場サイズも工夫してくれました。
一期一会で受け継ぐタスキリレー
ト技会の会長を務める中嶋裕樹副社長も会場を訪れ、各ブースを回り説明員と議論をしていた。会場で「技術者の一日」について話を聞いた。
中嶋副社長
ト技会自身が毎年毎年、委員長を含めて入れ替わるという一期一会(の活動)なんです。そこに集まったメンバーでしかできないことを1年間やってくれています。
特に「技術者の一日」では、トヨタの技術屋が前を向く力を最大限引き出そうと、毎年、手を変え品を変え企画を工夫して、頑張ってくれています。
長い間やっていると「トヨタ魂」みたいなものが見えてくるんですよ。まだ確固たるものが見えているわけじゃないけど、技術屋が自分たちの技術で世の中を良くしたいという想いは伝わってくるようになりました。
この1日だけではなく、一人ひとりの日々の業務に役立ててもらうことが僕たちの大きな目的ですが、それはまだ道半ばです。
でも、この1日があることで、将来の日々を頑張れる人材を育てるものだと信じて毎年頑張ってやっています。
会場には、近健太社長も訪れた。近社長は時間をかけて、それぞれの説明員から熱心に話を聞いた。視察後の近社長はこのように述べた。
近社長
若いメンバーの志、想い、そういったものに(触れて)、僕らもどうサポートしていけばいいんだろうと考えさせられますし、勇気をもらいました。(回って見られたのは)短い時間でしたけど、ぐっときました。
展示はつながることを意識した説明がすごく多かったです。個別、個別で(技術を)突き詰めていくことにプラスして、その人たちの力がもっとスケールするため
に、いろいろな人たちとつながって共有する。
そうすることで、その人も大きくなるし、トヨタ全体としての力が大きくなる。みんなが、そう意識してやってくれていることを心強く思いました。