ウーブン・シティに竣工したばかりの開発拠点「インベンターガレージ」。そこで実証中のAI技術や、ともにカケザンを起こす新たな仲間が公開された。
【豊田SVP】「まずやってみよう」「失敗しても前に進める街」へ
豊田SVP
皆様、こんにちは。ウーブン・シティの豊田大輔でございます。本日は「モビリティのテストコース」ウーブン・シティへ足をお運びいただき、誠にありがとうございます。
ウーブン・シティの「フェーズ1」は、昨年2月に竣工を迎え、秋に実証実験を開始しました。現在20のインベンター、約100人のウィーバーズの皆様と共に、新しい価値づくりに挑戦しています。
そして新たに、AIロボット協会様、第一興商様、Joby様・トヨタファイナンシャルサービス様がインベンターとなり、明日開催されるピッチコンテスト「Woven City Challenge」のWinner達も仲間として加わります。
たくさんの仲間たちが集まってきていますが、ウーブン・シティに集まってきていただいている皆様は「完成された環境」に来ているわけではありません。
ウーブン・シティはむしろ「未完成の街」です。
ここに自らの意思で飛び込んできていただいている。その姿勢そのものに、深く感謝しています。
実証が始まってから半年以上が過ぎましたが、ここでは日々さまざまな「うまくいかないこと」も起きています。
例えば、クルマが来たら青になるはずの信号が30分以上青にならない、ということもありました。認証システムが停止して、屋上に閉じ込められてしまったこともありました。
夜中にインフラのエラーで街中の電気が一斉についてしまい、寝ているウィーバーズを起こしてしまったこともありました。
実証中のモビリティが動かず、最終的には3人がかりで運び「やっぱり最後は人だな」と思ったこともあります。
未完成で、不便で、時には笑ってしまうようなことも起きています。
こういうことが起こるのも、この街のインフラすべてを自分たちでつくり、動かしているからです。
交通、エネルギー、ID、モビリティ——。
それぞれ個別に最適化するのではなく、すべてをつないで、実証の内容に応じて柔軟に変えられるようにしている。
言い換えれば「完成されたものを使っている」のではなく、実証の内容に合わせて変え続ける街を動かしているということです。
私はこの街を「失敗してもいい街」だと考えています。
でもその一歩を踏み出すことに、正直まだ「怖さ」が残っている場所でもあります。
こうした風土は一朝一夕で変わるものではありません。
それは私自身も、この街に住むウィーバーズの一人として、家族とともに実証実験に参加した中で感じ、苦労している点でもあります。
ルールに守られるだけでなく、自ら「一歩踏み出す」。そういう人を増やし、その挑戦をきちんと受け止め、次につなげていく。
この街を「まずやってみよう」「失敗しても前に進める街」へと進化させていきたいと考えています。
そして失敗できる街、その根幹を下支えしているのが、「AI」です。
今日ご覧いただいている技術は、すべてAIの元に成り立っています。
ウーブン・シティにおけるAIは、単なる技術ではなく、街の状況を理解し、先回りして支えてくれる存在です。
AIは私たちの代わりになるものではありません。私たちの力を引き出し、その可能性を拡げてくれる存在です。私たちは少なくとも、AIをそのように考えています。
技術1つ1つに、このヒト中心のAIが活用されています。今日はその技術をご覧いただければと思います。
最後にこの場所についてお話しさせてください。
この場所はかつて、トヨタ自動車東日本の工場として、のべ7,000人が働き、53年にわたり、752万台のクルマを生産してきた場所です。
ここには、「モノづくりの魂」がこもっています。
私たちは、このトヨタで培ってきた力を、クルマだけではなく、街へと広げ、技術や人が交わる「カケザンの場」にしていこうとしています。
この地では、AIを活用しながら新たな価値を生み出す。それは「Heritage」と「Innovation」のカケザンです。
まだ完成された姿ではありません。だからこそ、ここには未来をつくる余白があります。
その一歩を私たちと一緒にぜひこの場所で体感いただければと思います。今日はありがとうございました。
“アキオくん”が目指す将来像は…?
メディアとの質疑応答に先立ち、豊田SVP、トヨタのMobility 3.0 Office大石耕太General Manager、そして豊田章男AIによるトークセッションも実施。
豊田章男会長が現場に行けない時でも現場の仲間とつながれるように、そしてAIがもっと身近に、刺激を与える存在になれるように。そんな想いから開発された豊田章男AI。
ここでは進行役の富川悠太と同様に、親しみを込めて、あえて“アキオくん”と表記したい。
アキオくん自身は、豊田会長にどこまで近づいてきていると感じているのか? この質問にはこのように答えている。
「(豊田章男AIは)分身というより会話の相手。最終的に大事なことは似ているかどうかではないんです。僕(=豊田会長)を超える問いを返してくるかどうか、肩書ではなく役割、現場、本音で問い返してくるかどうか。そこまで行ったら面白いと思うんです」
その後、メディアからは豊田SVPにアキオくんをどう使いたいのかを問われた場面では、こんな一幕も。
豊田SVP
この“アキオくん”…“アキオくん”って何か…言ったことがなくて(笑)。
富川
“アキオくん”でお願いします。こっち(豊田章男AI)なので大丈夫です。
豊田SVP
何か怒られそうですね(笑)。
(豊田会長)本人も常に成長していると思いますので、その相棒としてAIのアキオくんを使いたいのだろうと思います。
我々も(会長から)いろいろな観点を踏まえてアドバイスをいただきます。そこに追いつけるように、アキオくんに相談して、壁打ちをして鍛えていきたいです。
ある程度鍛えることができたら、会長や、その先のお客様に見ていただく。そういう使い方をするのかなと思います。
WbyTのメンバーも、会長と会う機会はありますが、毎日ではないですし、文字や映像でしか知らないという人もいます。(アキオくんは)そういった人たちに身近に感じてもらえる存在になるのかなと思います。
そうすると本人と会った時もいい距離感で話ができるようになるかなと思います。
ちなみにアキオくん自身はというと「便利な返答マシーン」になりたくないそう。次代のリーダーが視点や覚悟を鍛えるための存在であり、「肩書じゃなく役割で動けているか、現場を見ているか、本音で答えているかを問い返す存在」でありたいとのこと。
また、豊田SVPとアキオくんに「ウーブン・シティは100年後も存続しているか?」と問われた場面では、“2人”の答えはこのようなものだった。
豊田SVP
ウーブン・シティという場があったことで、100年後の未来が変わっていくような取り組みをしていきたいと思います。
この場所を存続させることが、いつの間にか目的に変わらないように、この場所の目的をブラさずに、ウーブン・シティを活用しながら、もっといい社会の実現に貢献していきたいと思います。
この場所にこだわりはありますが、そこだけに固執せず、人々の幸せの量産をやっていきたいと思います。
アキオくん
100年後は誰にも断言できないです。私も、そこまで先はオリジナルに聞いてみては?という感じです。
ですが、目指している姿はあるんです。
ウーブン・シティは最初から完成して終わる街ではなく、進化し続ける、永遠に未完成の街です。
それに未来のモビリティのテストコースであり、人が暮らしながら技術を鍛える場でもある。以前から100年続く街という将来像も話してきました。
ですから、建物が残るかということより、そこで育った思想や仕組みが100年後にも生きていたら、私は「存続している」と言っていいんじゃないかなと思います。
豊田会長だったらどのように答えてくれただろうか。そちらも気になるところだ。