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⾃⼯会 佐藤新会⻑ 国際競争⼒強化へ「新7つの課題」

2026.01.23

⾃動⾞⼯業会(⾃⼯会)の新会⻑に就任したトヨタの佐藤恒治社⻑。新体制で取り組む「新7 つの課題」とは。

コミュニケーションも新しく

都内で実施したメディア説明会は、定例の会見のように正副会長が壇上に上がることなく、記者団と同じ目線で実施された。

佐藤新会長は「メディアの皆さまとの関係性をより深く、意義のあるものにしていきたいということで、コミュニケーションの在り方も皆さんに意見をいただきながら工夫して、質を高めていける様に取り組んでいきたい」と狙いを説明。

今後は定例の会見に加え、双方向の説明機会を継続的に設けるとし、「今日はその第1回目のトライ」と位置付けた。

組織運営についても、さまざまな課題にスピード感を持って取り組むため、定例化している理事会を見直していく考えを示したほか、世界情勢に対応していくために海外の自工会とも連携を深めていくという。

説明会では時に正副会長との間で笑顔がこぼれる場面もあり、片山前会長が築いてきた本音で話し合える関係が深まっていることを感じさせた。

「新7つの課題」は、どこまで本気か?

ここからは記者との質疑応答の内容を紹介していく。

Q. 「新7つの課題」はどれも極めて大きな課題であり、なおかつ終わりがないものばかり。特に優先したい課題があれば教えてほしい。

佐藤新会長

おっしゃる通り、どれも大きな課題で、優先順位をつけるのは大変難しいです。

喫緊の課題で言えば、「重要資源・部品の安定調達」(テーマ①)みたいなところは、足元の供給リスクに対してしっかりとサプライチェーンを守っていく、という観点で短期的に取り組むべきことも多々あると思います。

長期的にはBCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)の観点から、複線化や備蓄もしっかりと議論して構えていく。元素ごとに状況は違いますので、one by oneで、具体を短期と中長期で決めていく。これがテーマ①では大事になります。

税制(テーマ⑥「自動車関連税制 抜本改革税制」)については、環境性能割が廃止の方向で議論が進んでいます。これは消費、国内の需要喚起にとっては非常に大きなきっかけになると思います。

一方で、自工会として掲げている税に対する3本柱にこだわり、自動車税あるいは重量税は引き続き議論しています。そこについては、自工会のスタンスを明確にし、税制の議論を続けていくことが、短期的にはあると思います。

どう取り組むべきか含めて、いろいろな意見があるのは、サプライチェーン全体での競争力向上(テーマ⑦)。賀詞交歓会のあいさつでも少しお話しさせていただきましたが、やはり考えるべきは国際競争力だと思っています。

日本のサプライチェーンは非常に幅広く、深く、専門性が高い。個々の会社さんが持っている技術力は非常に高いのですが、それが本当に国際競争力につながっているか。10年後に勝てる日本の勝ち筋につながっているのかという議論は改めて必要だと思っています。

マルチパスウェイが強みになるようなサプライチェーンを、競争力を上げながらつくっていくために、いま変えていくべきことは何か?という議論を、部工会(部品工業会)ともやっていかなければならないと思っています。

三部敏宏 副会長(ホンダ)

①(重要資源・部品の安全保障)と⑦(サプライチェーン全体での競争力向上)は、展開によっては非常に大きなリスクになると思います。

日々ルールが変わっていく、過去我々が経験していなかった相当不安定な地政学的なリスクを孕んでいる中で、我々はどう生きていくのか。正解がない中で、自工会の意義は非常に大きいと思っています。

過去の我々のままではもう通用しないという時代に差し掛かった。今まで以上に自動車工業会の位置づけが重要になってきていると思います。ぜひ皆さんと情報交換をさせていただきたい。

今年は大変な1年になると覚悟しています。社会を変えていかなきゃいけない、そういうレベル感かなと思います。

BCPについては、災害時の対策についても質問が上がり、佐藤新会長は業界全体でカバーしていく仕組みの必要性について言及。三部副会長は、調達の複線化という方向性を示しつつ、国も巻き込んだBCP強靭化の重要性に触れた。

Q. テーマ⑦(サプライチェーン全体での競争力向上)が、競争と協調を考える上で一番ホットなところだと思う。どこまで協調できるのか?

鈴木俊宏 副会長(スズキ)

一例ですが、当社はかなり昔、ある会社さんと「クルマの共同開発をやりましょう」「部品の共通化をやりましょう」と(いう話になった)。

そうしたら、灰皿しか共通化できませんでした。

その当時だからでしょうが、今はそう言っていられない。特に半導体は、自動車業界でも共通化して数を稼がないと、(世界と競争するうえで)どうにもならない時代だと思っています。その中で、使う/使わないという機能の選択をうまくやれるようにしていくような取り組みはやっていくべきだと思います。

イヴァン・エスピノーサ 副会長(日産)

「OEMはコンポーネンツ(部品)の協力ができない」という考えが長くあったかと思いますが、世界は急速に変わっています。我々も変わらなければ競争力を保つことができない。

分野によっては競争するか協調するか、それぞれの判断に委ねられるところもあるかと思いますが、世界経済のブロック化が進んでいる中で、我々の身を守るためにも、協力できるところは協力していく。それによって規模のメリットを発揮する、そしてスピードを上げる、コスト競争力を上げていくことが必要。これが我々リーダーの共有するスピリットでもあります。

設楽元文 副会長(ヤマハ)

サプライチェーンの中では、一例としてエンジンが大きな変革を起こすアイテムとして扱えるかと思っています。例えば二輪はエンジンの各社間の共有をしています。

四輪でも2社間ではあるかと思いますが、数社で取り組んだときにサプライチェーンの変化が起こるのであれば、それは協調領域として日本各社でそれをやる。

そういうテーマ設定をしながら、学びを得て、これをまた部品に入れていくという循環ができると、多分サプライチェーンの変化は出てくる。個社ごとにそれを維持・キープしている時には、変化が起きないので、そのブレークスルーが出るかどうか。

片山副会長

国際競争力はとてつもなく大きな問題で、サプライヤーさんの部品の価格という部分もありますが、同時にOEM自体の競争力が国際的に問われている。そういう現実に直面している危機感が非常に大きくあります。

現状がベストということではなく、それを乗り越える上で、まずOEMとして何ができるか。それからサプライヤーさんに対して何を期待するか。我々は(サプライヤーさんと)運命共同体の部分がありますから、本当に真剣に議論する段階にあると思っています。

本当に難しいテーマだけど、やっていかなければ、みんな大変なことになる。そういう覚悟でやる。

取り組む姿勢として「やる」ということで議論しています。本当にそういうところまで来ています。大変ですが、やるしかないと思っています。

マルチパスウェイを世界にどう発信するか?

Q. 世界の自工会との連携で、どういったことが変わるのか?

佐藤新会長

日本は、マルチパスウェイに対する取り組みのリーダー国だと思っています。

しかしながら世界の環境が動いていく中で、我々が協調領域をつくれているか、あるいはマルチパスウェイの意味するところを共有できているかというと、まだ不十分なのかなと。

各国に対して、「マルチパスウェイに取り組んでいくべきだよ」「日本にはこんなソリューションがあるよ」、「パートナーシップを組んでやっていけば、もっとスピードが上がるよ」というような発信を我々からもして、国際的にマルチパスウェイが浸透していくような動きを取りたいという想いでいます。

松永明 副会長(自工会)

マルチパスウェイについて、(広島での)G7サミットで方向性が出ましたが、その前に、各自動車団体、ヨーロッパG7諸国が共同でマルチパスウェイが重要だとまとめました。

日本が提案国ではありますが、各国の自工会と一緒に方向性を出していく。これが有効ですし、そういうつながりができてきています。

各国で保護主義的な方向が出ていく中で、もう一段高いレベルで協調していこうというのが今回の発想です。

一方で鈴木副会長は、国内でのインフラの課題についても補足。

鈴木副会長

ヨーロッパに行ってガソリンスタンドを見たときに、そこではCNG*を売っていて、充電設備もある、エタノール燃料もありました。
*Compressed Natural Gas(圧縮天然ガス)。天然ガスを圧縮した燃料。CO2や窒素酸化物の排出量が少なく、環境に優しい燃料として、バスやトラックなどの天然ガス自動車に使われる。

それを見たとき、日本はどうかといえば、自工会は確かにマルチパスウェイと叫んでいますが、そのような対応はできていません。

そういうところも含めて、世界に(マルチパスウェイを)発信するのも重要ですが、日本としてマルチパスウェイ、マルチエネルギーをどう進めていったらいいのかを発信する、あるいは産業をまたいで推進するための横串協力できることが何かをもっと議論していく必要があるとも思っています。

「日本のモノづくりのど真ん中は人」

Q. 日本の人材を高度化し、生かしていくために、日本のモノづくりの強みである人間力をどう上げていくか?

佐藤新会長

日本のモノづくりのど真ん中は人です。

人の力が日本の工業、特に自動車の安全と品質を守り続けているんです。これは絶対に失っちゃいけない。

日本の自動車が高付加価値なものになっていこうとも、その基盤にあるのは安全と品質です。

これは人材が無形の価値として育てられ続けたからできている日本の強み、勝ち筋だと思っています。

「日本のモノづくりのど真ん中は人」「絶対に失っちゃいけない」。言葉に力が入る。

自動車産業に従事する仲間の頑張りに報いるだけでなく、新たな仲間を迎え入れるための取り組みにも注力していくことも語った佐藤新会長。

国際競争力の源泉である人の力で、勝ち筋を描いていく。

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