2025年5月に一部改良されたカローラ クロスに搭載された新機能「シグナルロードプロジェクション」。あなためがけた機能の開発秘話と開発者の想いとは。
交通事故削減のために、ランプができること
1966年の誕生以来、世界150以上の国と地域で販売され、グローバル累計販売台数は5,700万台を超えるカローラ。
国境や世代を超えて、多くの人の生活に寄り添い続けてきたこのクルマに、安全性向上に寄与する機能が新たに搭載された。
2025年5月発売の新型カローラ クロスに採用された「シグナルロードプロジェクション」だ。
ターンランプの点灯に連動し、進行方向を示す3つのシェブロン(矢羽根)形状を路面に照射。夜間の見通しの悪い交差点などで、歩行者や周辺車両に自車の存在と方向転換先を分かりやすく伝える技術である。
トヨタとともにシグナルロードプロジェクションを開発した小糸製作所によると、着目したのは、夜間の交差点で起きる事故だった。
暗くなると、ドライバーの表情が外部から見えにくくなり、互いのアイコンタクトが取りづらくなる。
小糸製作所 北澤由希子
“交通事故の削減のために、ランプで何かできないか” それが、私たちとしての使命でした。
既存のウインカーも右左折の合図は発しているものの、もっと直感的に、誰が見ても誤解なく伝えられるものがあれば、事故はさらに減らせるのではないか。
路面に矢印を描けば、小さなお子さんから高齢の方まで、どんな方が見ても、こちら側に進むのだと伝えることができるのではないかと考えました。
以来、自動車の安全性能を研究する公的機関・交通安全環境研究所と効果を検証し、照射する位置や明るさを両社で議論しながら、当初は円形や四角などを検討していた形状も、目にした人がより直感的に認識できるシェブロンに絞り込んでいった。
北澤とともに開発を担当した小糸製作所の谷健太郎は、シグナルロードプロジェクションの技術的挑戦について語る。
小糸製作所 谷健太郎
当初は3つのシェブロンをそれぞれ独立した光源で描く、3灯構成を想定していました。
しかし、カローラ クロスへの搭載を前提に、よりコストを抑えるべく、1つのLEDで3つのシェブロンを照射する、シンプルな構造に挑戦することにしました。
試行錯誤のうえたどり着いたのが、「全反射」という光の現象を生かすことだった。
これにより、1つのLEDと2つのレンズで構成されるシンプルな構造で、ヘッドランプ内部へ柔軟に搭載可能なコンパクトなサイズを実現した。
谷は、「このパターンをつくるレンズについては、ほぼすべてが新しい試みでした」と当時を振り返る。
誰もやっていないなら、自分たちで
シグナルロードプロジェクションのカローラ クロスへの搭載は、トヨタ社内で新機能を考える有志活動において、ある体験談を耳にしたことがきっかけになった。
TC統括部 関修司主幹
夕暮れ時に、同僚が大通りからコンビニに入ろうとした瞬間、道路脇の植栽の向こう側から現れた自転車と接触してしまったんです。大事には至らなかったのですが、その出来事から、「路面に進行方向を示す矢印が出ていれば、自転車側も気付けたのではないか」という話になりました。調べたところ、小糸製作所をはじめとするランプメーカー各社が同様の技術を検討していることが分かりました。
2022年に現在の製品企画へ異動し、改めて小糸製作所からこの技術紹介を受けた関は、こう振り返る。
関主幹
これはチャンスだと思いました。
かねてから実現したいと考えながら、なかなか形にできずにいた技術です。
まだ誰も世に出していないのなら、自分たちがやるべきだと思いました。
関の背中を押した言葉とは。