コラム
2018.12.04
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Athlete Stories 宇野 昌磨選手「自分が限界と決めるまで、自分に限界は無い」

2018.12.04

フィギュアスケートで活躍するトップアスリート、宇野 昌磨選手(20歳、スポーツ強化・地域貢献室)。平昌2018冬季オリンピックの銀メダリストとして迎えた新しいシーズンは、好調な滑り出しだ。

※本記事は、トヨタグローバルニュースルームに2018年12月4日に掲載されたものです

フィギュアスケートで活躍するトップアスリート、宇野 昌磨選手(20歳、スポーツ強化・地域貢献室)。平昌2018冬季オリンピックの銀メダリストとして迎えた新しいシーズンは、好調な滑り出しだ。

メダリストとして迎える新シーズン

10月20日からグランプリシリーズ2018-2019(以下、GPシリーズ)が開幕し、フィギュアスケートの新シーズンが本格的にスタート。宇野は、先日行われたGPシリーズ第4戦のNHK杯に出場し、ショートプログラム(以下、SP)およびフリースケーティング(以下、FS)で好調な滑りを見せ、初優勝。126日(現地時間)よりカナダで開幕するグランプリファイナルへの出場を決めた。

昨シーズン、平昌2018冬季オリンピックで銀メダルを獲得したことで、「周囲の反応は少し変わったと思うが、試合での自身の滑りに大きな変化はなかった」と宇野は語る。シーズンオフ中も様々なアイスショーに出演し、その演技で人々を魅了してきたが、メダリストとしての気負いは感じられない。練習量が多いことで知られる宇野だが、「例年に比べ、シーズンオフ中から怪我もなく、練習も順調に進んでいる」と、良い手応えを感じているようだ。

“完成”や“限界”を自分で決めない

5歳でフィギュアスケートを始めてからスケート中心の生活をしてきた宇野だが、「スケートにおいて“不可能”と感じたことは一度もない。“完成”や“限界”という壁はまだ見えてない」と言う。 「自分が限界と決めるまで、自分に限界は無いのではないかと思う」と、宇野は言葉を続けた。

あえて目標を設けないことも、自分自身に挑戦し続けるストイックさにつながっているようだ。「毎年毎年、そして1日1日少しずつでも成長していたい」と願う彼にとって、ゴールを持つことは“完成”や“限界”をつくるのと同じことかもしれない。自分の無限の可能性を信じており、そのためには目標すら足枷になるのだ。

“完成”や“限界”を自ら決めず、更なる高みを目指して技術や表現力を磨き、目の前のこと (試合や課題) に着実に取り組んでいく。それこそが宇野の強みだ。

「絶対に後退をしたくない。ずっと前に突き進んでいきたい」。その言葉に宇野の想いが集約されている。

フィギュアスケートは、今季大幅にルールが改正された。新ルールではミスにより大きく減点されるため、選手はこれまで以上にジャンプ、スピン、ステップの技や演技全体の完成度の高さが求められる。宇野に、今シーズンを闘っていく新プログラム「天国の階段(SP)」と「月光(FS)」の見どころを聞くと、「全体を見てください」との答えが返ってきた。プログラムの完成度に目を向けてほしい、というメッセージとして受け取った。宇野は新ルールを障壁とは捉えていない。むしろ、無限の可能性を追いかける宇野のスケート哲学に合っているのではないかと感じた。

楽しむことを忘れず、先を見据えて

「基本、僕は人の考えをあまり聞きません。全部自分で考えて、答えを導き出すことが大事だと考えています。」宇野に大切にしている考えや言葉を聞いたところ、この答えが返ってきた。人の意見を聞き入れないということではない。自分なりに解釈して、自らの責任で答えを決めるのだ。

試合前に必ず行なっていることも尋ねたが、特に決めごとはないという。宇野は試合前、その時の周りの環境に合わせて、自分の気持ちに素直に従うことを尊重していると教えてくれた。他の選手の演技を観たいと思えば観るし、とりわけ集中したい試合は自分の世界に篭る。他の選手の演技を観ても、「プレッシャーはそこまで感じない」と言う。闘う相手はあくまで自分だと思っているからだ。無理に集中力を高めるようなことはしないし、ゲン担ぎもしない。良い演技をするために、むしろ「リラックスして挑む」ことを優先しているようだ。

こうした宇野とのやりとりからは、その強さやまっすぐさから“独立不羈(どくりつふき)”の精神を感じたが、ふと見せる笑顔からは、ただ純粋にフィギュアスケートが好きという気持ちも伝わってくる。フィギュアスケートを長く続ける中で、「すごく楽しいと感じる瞬間が何度も、何度もある」と笑顔で語るからだ。努力によって成果が感じられることは、練習を多く重ねる宇野にとって、何ごとにも代え難い喜びなのだろう。宇野は自分の信じる道を貫き、真剣にフィギュアスケートと向き合っている。それが演技への自信に繋がり、成長も苦労もすべてを楽しんでいるようだ。

まだまだフィギュアスケート人生は長い」と、宇野はハッキリとした口調で言った。

次の4年後のオリンピック冬季競技大会に向けて、宇野のチャレンジの幕は上がったばかりだ。

編集後記
発言や醸し出す雰囲気から“かわいい・自然体・マイペース”といった印象を持たれることの多い宇野選手。実際に会った彼は、哲学的とも言える独自の考え方があり、非常にストイックな人物だった。物心ついたころから氷上で努力を続けてきたトップアスリートとして、彼の貪欲さや芯の強さ、メンタルの強さが垣間見えたインタビューだった。

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