本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回は未来のテストハウス!?
突然だが「三春の家」をご存じですか?「三春さん?…誰それ?」と思われるかもしれないが、個人のお宅ではないという。
ここは福島県郡山市からほど近い三春町。海外からも視察者が訪れるという築39年の実験的な家だ。
外観はごく普通の家だけど…
外から見ると普通の家。だが、実はすごい可能性を秘めている。東北大学とも連携して日本でも前例が少ない「水素でのサステナブルな暮らし」を実証しているのだ。
Woven Cityが未来のモビリティのテストコースなら、ここは“未来のテストハウス”。オール電化という言葉はよく聞くが、水素で?トヨタがなぜ家を?
驚くことに、みなさんが住んでいる家も、革新的な未来の家に変貌させることが可能だという。これは詳しく聞かない訳にはいかない!
福島県では1998年のピーク時から、人口が40万人も減少(2024年時点)。東日本大震災後の営農再開率は52.9%、水産業の水揚げ金額は震災前比で約3分の1まで落ち込んだ。
しかし、時間の経過とともに福島への関心や応援は薄れていく…。そこで2021年、福島県の内堀雅雄 知事の「福島のプライドを取り戻したい」という想いに豊田章男 社長(現会長)が共鳴。
その一環として、2024年からクリーンエネルギーの「水素を活用したサステナブルなライフスタイル」を目指す取り組みも始動。その拠点が“ミライにつなぐ三春の家”だ。
近ごろ、一部のメガソーラーが土砂災害のリスクで近隣住民に不安を与えるなど、クリーンエネルギーのあり方が問われている。だからこそ電気を「つくった」後に「貯める」「運ぶ」ことができる水素には大きな可能性があるのだ。
災害時、FCEVがあなたを守る
三春の家では、東北大学の柴山明寛准教授とも連携。燃料電池車(以下、FCEV)からの給電で、室内でどれだけ電気を使えるかの実証が進められている。
この写真のようにMIRAIからの給電だと、停電中でも一般家庭で約1週間、電気を使って暮らすことが可能。停電を“なかったこと”にするだけでなく、発電機と違って、騒音や排気ガスも出ない。
給電できるクルマは「移動できる電源」でもあるので、避難所や困っている人たちへ電気を届けることも可能。クルマから大容量を給電できるFCEV、恐るべし。
地元の販売店からはこんな声が。
ネッツトヨタ福島 大沼健弘 社長
震災当時の避難所で、家を津波で流され、ご主人や家族もいなくなってしまったご高齢の女性がいました。
あるとき避難所に物資を届けると「初めての家具だわ。ありがとう」と、パッと顔を明るくされたんです。私たちの仕事の源泉は、地域の皆さんに寄り添うことだと心から実感できました。
人・物・情報が移動しなくなると、本当に何もなくなります。地域の豊かさがあって初めて私たちの事業は成り立つわけで、自分たちだけが幸せになろうとすると世の中はおかしくなります。
福島の優しい人たちに囲まれていると本当にそう思えます。
あなたの家も、未来の家に?
三春の家では、クルマと家をつなぐV2H(Vehicle to Home)システムも採用。
安価な深夜電力をクルマのバッテリーに貯め、昼に使うことで電気代を節約。また、ソーラーパネルが設置されている家では、昼に余った電気をクルマのバッテリーに貯め、夜にその電気を使えば24時間クリーンな電気を自給自足できる。
さらに停電時は、クルマを「巨大な予備バッテリー」としても使えるので、災害に強い家にもなる。
能登半島地震では、ご高齢の方々が寒さに震えながら不安な夜を過ごし、700名以上もの方が災害関連死で命を落とされたという。だからこそV2Hの意義は大きい。
築39年の三春の家で実証されているように、みなさんが今住んでいる家も、クルマと家をつなぐだけで未来の家にバージョンアップできるというから驚きだ。
ただし日本では、大きな課題もあるという…