本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回は、スッキリした眠り。一体なぜトヨタが!?
働く時間が短くなるほど、脳は疲労
有志メンバーの熱い想いでスタートしたTOTONE。ターゲットとしているのは多忙を極めるエグゼクティブをはじめ、情報過多でストレスが溜まりやすい現代人だ。
近年、働き方改革が進み、脳の疲れは改善されたように思える。しかしそこには思いもよらぬ落とし穴があるという。
ADPT AD-1福山グループ長
勤務時間が短縮されると “脳疲労が高まる”可能性があることが調査でわかってきました。
予定時間内に仕事を終えるために、ちょっとした隙間時間も惜しんで考え続けたり、Web会議で会議室への移動時間もなくなってしまったことで、脳がサボる時間を奪っている可能性があります。
日本の社会課題は働き方改革だけでなく、脳を休ませる休み方改革も進めることにあると思います。一日が心身ともに充実することで働く人の幸福度を上げていきたいです。
この後、なぜたった15〜30分の仮眠でスッキリするのか、意外な事実が明かされる。
仮眠で、脳のキャッシュメモリをクリア
日本では、脳の働きが落ちていても我慢して働き続ける習慣がある。しかし短時間の質の高い仮眠をとることで、スッキリ目が覚めることが期待されるという。
ADPT AD-1 井上プロジェクト長
エナジードリンクやコーヒーでも一時的に脳が回復したように感じますが、長持ちはしませんし、単純作業はできても、じっくり考えることが必要な複雑な作業までは十分にできない可能性があります。
“深すぎず浅すぎない、意識がなくなるほどの仮眠”を30分以内に取ることが重要だと言われています。
一方で姿勢や温度、照明、騒音、安心感など、どれひとつ欠けても仮眠の質は低下しやすい傾向があります。職場などでもこれらの条件を満たせば、“理想の仮眠”を最短15分で取れるのではないかと考えました。
ベッドより、クルマのほうが眠りやすい未来?
筆者もTOTONEを体験。そして不思議に思ったことがある。狭い空間にも関わらず快適なのだ。最終的には車内への搭載が考えられているこの技術、耳を疑うような内容が語られた。
ADPT AD-1福山グループ長
寝室と比べて、クルマの中は広さが限られているからこそ、トータルでの空間設計や環境制御が容易です。狭い空間だと寝返りが難しいと思われますが、寝返りの目的のひとつは温熱や湿度を調整することなので、クルマならシートベンチレーター(座面の通気機能)で対応できます。
つまり、狭いほうが実はよく眠れるかもしれない。ベッドや寝室で世間一般が持つイメージとは真逆の世界が広がる可能性があります。また、車内で子どもがよく眠るのは、適度に揺れるクルマが眠る環境に適しているからなのかもしれません。
今後の技術開発によっては、“夜に目的地と自動運転をセットして、快適に眠りながら移動し、朝から元気いっぱいに行動”という世界がくるかもしれません。
クルマづくりで培った技術を活かし、寝室よりもよく眠れる狭い空間を見出そうとする開発チーム。取材の最後に二人が加えたのは、トヨタそのものの可能性だった。
「この商品開発が認められたように、トヨタには志を受け入れる風土があり、イノベーションを起こす力があるとTOTONEを通じて示したい」。
取材したWoven Planet日本橋オフィスだけでなく、すでに9社の企業で実証実験を行い高い評価を得ているというTOTONE。現状はまだ試作品の段階だが、来年の一般販売を目指して開発が進んでいる。脳疲労という多くの人に関わる社会課題だからこそ、今後の広がりに期待したい。
次回は、「病院内を朝からスイスイ動き回るロボット」についてレポート予定だ。なぜ、トヨタが病院のロボットを?乞うご期待!