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一人ひとりのドライバーのために 安心安全に懸ける技術者の想い

2023.09.28

トヨタの先進予防安全技術パッケージ「Toyota Safety Sense」。誕生と進化の裏にある技術者たちの奮闘と想いに迫った。

〈PDA〉「かもしれない運転」をサポート

TSSは、トヨタブランドとしては、2022年のノア/ヴォクシーから第3世代に突入し、初代では3つに大別されていた機能も10以上に増えた。

その中で、新しく加わった機能が「プロアクティブドライビングアシスト(PDA)」だ。

PDAは導入以来、機能を増やしながら現在では3つの運転支援が備わっている。1つ目は先行する歩行者や自転車がいる場面で、近づきすぎないようにする操舵や横断時の減速。2つ目が車線内走行時の常時操舵支援。3つ目が先行車との車間距離を取ったり、信号がある交差点での右左折時の減速。

コンセプトはドライバーへの“さりげなく優しい支援”。

交通事故ゼロを目指していく中で、緊急時に急制動をかけて回避する機能開発は続けてきたが、実態として事故はまだ発生している。

PDAが備える機能の中で、歩行者などへの接近回避技術に携わる藤田和幸グループ長(先進安全技術開発部第5開発室)は、「普段お客様は、危なくなってからブレーキを踏むようなことをされているかというと、そうではない。あらかじめ速度を落としていたり、警察の講習などでも言われている『かもしれない運転』をしている。そういった早めに危険に近づかないようにする運転をクルマの方でもサポートすること」と開発目的を話す。

〈PDA〉仲間と共に

ただ、さりげなさ過ぎると支援の意味がなく、サポートし過ぎるとドライバーにとって煩わしくなる。

車線内走行時の常時操舵支援では、凄腕技能養成部にも開発に協力してもらった。世界中の道の走り方を知る熟練ドライバーの意見も取り入れるなどして、数多くの運転パターンを検討。ドライバー個々の運転スタイルによる影響を最小化し、共通してサポートできる機能はどうあるべきか、議論と改善を重ねてきた。

見えてきたのは、初心者ドライバーに多く見られる不安・負担につながる運転パターンへのサポート。濱口剛主幹(自動運転技術開発部第2開発室)は、開発経緯を振り返った。

濱口主幹

開発途中から、いろいろな運転パターンを見て、検討してきました。

分かってきたことは、運転初心者と上手い人に大きく分けたとき、“上手い人っぽく”支援するというのは、ある程度受け入れられるということ。

個別の差は、上手い人の中での(運転スタイルへの)こだわりが要因で生まれることが分かったため、共通のサポートでも、多くの人に恩恵を届けられることが可能になりました。

初心者や運転に不慣れなドライバーが、肩の力を抜けるように支援することで、気持ちに余裕が生まれ、事故低減につながっていく。緊急時だけに注視するのではなく、普段の運転から安全をサポートする技術開発が進んでいる。

交差点などでの減速支援を進めてきた栃木康平グループ長(自動運転技術開発部第3開発室)もまた、開発にあたり多くのトヨタの仲間の協力があったという。

試乗してもらった人数は、国内外延べ100人以上。年齢や性別もバラバラ。技術系だけではなく、営業職などの事務系、販売店の従業員からも意見をもらった。

「『さりげなさすぎてもっと支援が欲しいよね』という方もいれば、『ちょっと(支援が)強すぎてさりげなくない』といった声もいただきました。いろいろな方々に乗ってもらった声を踏まえて、どの程度の減速のさせ方とか減速量みたいなものであれば、違和感がなく、かつ嬉しさが感じられるか。データだけではなく、やはり最後はクルマに乗って、ご意見をいただきながら決めてきた」と振り返る。

生まれたばかりのPDA。藤田、濱口、栃木の3人は、さらにお客様の声も取り入れながら改善していくと口をそろえた。

一人ひとりのドライバーに寄り添う安全技術

ドライバーの安全安心を第一に、日々開発に奮闘するエンジニア。開発している機能は違えども、そこには一人ひとりのドライバーに寄り添おうとする姿があった。

池田主査は「ドライバーを無視した安全技術というのは全く意味がない。ドライバーの運転行動を分析しながら、周辺状況に応じて最適な支援をしていく。その結果として事故を減らしていけるというのが、(トヨタの安全技術が)目指すべき姿だと思う」と語った。

こうした奮闘が実り、TSS3世代を搭載したノア/ヴォクシーは20235月、自動車アセスメントで最高得点を獲得し、ファイブスター大賞を受賞。予防安全性能や衝突安全性能などが対外的にも評価された。

三位一体で取り組むトヨタの安全。次回は「人」にフォーカスを当て、啓発活動や運転講習について探っていく。

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