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2020.02.12
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トヨタ春交渉2020 要求申し入れ ~「家族の話し合い」を目指して~

2020.02.12

2月12日、組合から会社へ賃金・賞与の申し入れが行われた。本年もここから、トヨタの労使交渉がスタートする。

2月12日、トヨタ自動車労働組合から会社に対して、賃金・賞与(ボーナス)についての申し入れが行われた。本年もここから、トヨタの労使交渉(いわゆる“春闘”)がスタートする。

トヨタの労使交渉は、年に1度限りの“一過性の話し合い”ではない。年間を通じて、全社や職場など、さまざまな単位で実施してきた労使コミュニケーションの“総決算”の場である。議論するのは、賃金や賞与といった組合要求だけではなく、モビリティ・カンパニーへの変革やアライアンス時代を生き抜くための課題などについて、労使が本気で、本音で話し合う。

「今回ほど距離を感じたことはない」。昨春の労使協議会で、社長の豊田章男が発した言葉だ。「会社は従業員の幸せを願い、組合は会社の発展を願う。そのためにも、従業員の雇用を何よりも大切に考え、労使で守り抜いていく」。これこそ、トヨタが忘れてはならない労使の「共通の基盤」であり、1962年に会社と組合が締結した「労使宣言」の精神でもある。しかし、今のトヨタを見つめ直して、両者が本当に同じ基盤に立てていると言えるのか? 根底の部分に抱いた疑問を豊田はこう表現していた。

昨春の申し入れでは、組合は夏と冬あわせて6.7カ月分の賞与を要求したものの、交渉は決着せず、冬の賞与については継続協議となった。秋に再度設けられた協議会では、まだ意識が変わっていない、行動に移せていない組合員もいる“まだら模様”の状況ではあったものの、組合の西野勝義執行委員長の「変われていない人たちを守るのではなく『変えていく』」という宣言と、強固な労使関係を築いていく決意への期待を込めて、満額回答という形で決着した。

そういった流れの中で迎える本年の労使協議会。組合は組合員や職場の声を吸い上げるとともに、オールトヨタでの一体感や競争力強化の観点を踏まえて議論を重ねてきたことを申し入れ書にしたためた。

西野勝義執行委員長

自動車産業が大変革期にある中、将来にわたって、お客様や関係先の皆さまからトヨタを選び続けていただけるよう、会社は生き残りをかけて、さまざまな変革を進めている。このような中、この1年の職場の取り組みに目を移せば、さまざまな職場で労使がこれまで以上に会社の競争力をいかにして高めていけるかを本音で議論し、クルマの両輪のごとく、行動に移してきた。また組合員一人ひとりにおいては、やめよう・かえよう・はじめよう運動をはじめとした活動をベースに自身の意識・行動を変革してきている。

こうした厳しい経営環境やこの1年間の組合員の取り組み、ここ数年での物価上昇を含めた日本の経済状況などを踏まえた上で、職場役員と丁寧な議論を通じて、組合員一人ひとりが「会社を変えていこう」と思い続けることをいかにして後押しできるかを考えぬき、要求案を構築してきた。要求を構築するあたり、大切にしてきたのは、以下の3つの観点である。

1.「全ての人の力」を最大限に引き出していく。

2.競争力強化に向けた課題について労使で徹底的な議論を尽し、解決に結び付けていく。

3.社会全体での労働条件の底上げに向けた、労働組合としての役割を果たす。

労使協議会では、この3つの観点を引き続き大切にしながら、Woven Cityに集約されるモビリティ・カンパニーへのモデルチェンジという会社施策がより加速するよう、労使が直面している会社の課題を集中的に議論したいと考えている。

今回の申し入れでは、賃金制度維持分を上回る賃金の引き上げについて、人事評価に応じて配分する新たな形での要求がなされた。これは昨春の労使協議会で議論になった「全員一律」の考え方を見直したものであり、「もっと頑張りたい、もっと成長したい」というメンバーのやる気を引き出し、報いたいという想いを形にしたものだった。

組合の申し入れを受けた議長の河合満副社長(総務・人事本部長)は1年間の取り組みを振り返り、次のように語った。

河合満副社長

昨年の春の交渉では、豊田社長から「これほどの距離を感じたことはない」という非常に厳しいコメントがありました。それから1年間、労使専門委員会における、これまでにはないスピードでの課題解決、労使拡大懇談会での少人数での率直な意見交換、全社挙げての創意くふうの強化、組合員の皆さんの「やめよう・かえよう・はじめよう運動」など労使で懸命に「変わる」べく取り組み、秋の交渉でもあったように、少しずつではありますが、従業員一人ひとりの意識・行動が変わりつつあります。

一方で、トヨタが将来にわたって必要とされ、応援される会社であり続けるために、今、我々が成し遂げなければならないことは、「モビリティ・カンパニーへのモデルチェンジ」というこれまでにない大きな変革であり、チャレンジです。

令和という新時代を迎え、そして、Woven Cityという明確なビジョンが示された今年は、年頭挨拶において、豊田社長も申し上げたように、この会社で働くすべての人の行動をモデルチェンジしていくまさにラストチャンスであります。そのためにも、本年の労使協議会については、出席者や議論の進め方なども含めて、これまでの慣習にとらわれることなく、何としてでも、変革やチャレンジを妨げている課題を解決していく場としなければなりません。

「従業員は家族」。これは、創業者の豊田喜一郎の言葉であり、社長の豊田に受け継がれている想いだ。昨春の協議会で豊田はこう語った。「悩みや困りごとがあれば、素直に打ち明けることができ、答えは出なくとも、ともに悩み、ともに打開策を模索していくのが家族だと思う」。「家族の話し合い」を目指す労使交渉をトヨタイムズではレポートしていく。第1回の協議は2月19日に行われる。

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