様々な会社から集いEVを考える職場を豊⽥章男が訪問 その2

2019.12.18

ZEV B&D Labという部署をサプライズで訪れた豊⽥。そこで急遽始まったQAセッションの内容を、紹介していきたい。

ZEV B&D Labという部署をサプライズで訪れた豊⽥。
そこで急遽はじまったQAセッションの内容を、ここからは紹介していきたい。

質問者
この組織の⽬的は、まずはお客さまに対して魅⼒ある EVをお届けすることは当然なんですけども、こういった組織構成で、従来にない開発のスキームをつくり上げることだとも思っています。
それ以外に、豊⽥社⻑がこのZEV B&D Labに期待することが、もしありましたら、ここのみんなにひと声かけていただきたいなと思います。

豊⽥
「お互い学び合える姿勢」そして「ありがとう」と⾔い合える世界。これが僕、全てだと思いますよ。

とかくこういう職場になると、「どっちが知ってるか」「誰が知ってるか」とか…、

「俺のほうが、すげえだろう?」とかやってるでしょう?
ね?やってるでしょう?

質問者
はい。

豊⽥
それはある⾯、すごいと思っててもいいんだけど、⾃分がすごいと思った瞬間に、そこで成⻑が⽌まります。これは僕の持論。

⾃分より、さらにすごい⼈がいると思ってると、絶えず好奇⼼を持ち、絶えず貪欲にいろいろ求めようとするんですよ。ぜひそういう環境にしてほしいなと思います。

ここへ来て、僕の第⼀印象は、誰がどこの出⾝だかよく分かんない。
これがいいんですよ。これがいいと思うし、そこに、ベテラン層、若い層、いろいろな⼈がいる中で、ベテランから学ぶこと、そして若⼿から学ぶことがある。全てにおいて学べると思います。
だからそれを個⼈個⼈、おひとりおひとりが持つこと。

ただ、組織ですから責任者っていうのはいると思います。
だけど責任を取ること以外においては、ヒエラルキーをなくして、そしてどこの会社がとか関係なしに仕事を進めていくことが、僕は⼀番⼤切なことなんじゃないのかなと思います。

質問者
分かりました。どうもありがとうございました。

そして質問の内容は、この訪問の直前まで⾏われていた東京モーターショーまで話題は広がった。

質問者
先⽇のモーターショーの経営会議(東京モーターショーでのトークショー)でも話題に上がっていましたが、電動⾞にはHV、PHV、FCV、EVといろんな種類があります。その中でもEVに対する、「社⻑の本⾳の思い、お気持ち」があればぜひお聞かせ願いたいなと思います。

豊⽥
嫌な質問するね。(笑)
僕、実は⾹川さんと⼀緒にトヨタブースでやってたトークショーでも、お客様から「社⻑の好きな⾞はどんな⾞ですか?」っていうのを聞かれました。

それで、なんて⾔おうか悩みました。ところが横にいたのが⾹川さんだったこともあって、本当のことも⾔いましょうかって⾔ったのが、「⾳が出てガソリン臭い⾞」だったんですよ。そしたらそれがSNSとかで、バズりました。

普通、環境に良くて、それも⾃動運転でって⾔うでしょ。ところがそれを⾔わないことが、どういう理由かをぜひ皆さんとシェアしたいんです。
私は、やっぱり古い⼈間で、⾞が好きなので、⾞は⾳と匂いでしょ…。そういうリアルな世界での⾎が流れているんですよ。

でもその⾞が好きな本⼈がCASEというものに対して、特に電動化に対しても積極的にいこうとしているんです。
以前、86(ハチロク)を電気⾃動⾞にしてくれた⾞に乗せてもらったことがあって、「どうですか?」と印象を聞かれました。そのときの僕の印象は、「電気⾃動⾞だな」でした。
電気⾃動⾞になると、どの⾞も同じ乗り味になっちゃう可能性があるんです。でもそこは(クルマ好きとして)こだわりたいんですよ。電気⾃動⾞であろうがFCVであろうが、⾳が出ない、それで環境にいい⾞でも、それぞれのOEMのブランドの味というか、そのブランドの価値みたいなものをどうやって出すかそこにこだわりたいと思っています。それこそ、この部署の⼈たちにやってほしいなと思います。
単に電気⾃動⾞とするとコモディティーのようになる可能性があると思うんですよ。

だけど、そうさせない電気⾃動⾞はなに?というものをぜひつくっていただき、ここから出てきた電気⾃動⾞は、「やっぱりトヨタはトヨタの味、トヨタの⾞だね」と⾔えるような⾞に。どうやるかは、分かりませんよ。分かんないけど、そういうものにはこだわってもらいたいなと思います。

質問者
ありがとうございます。

次に⼿をあげたのは、SUBARUからトヨタに出向に来て開発に携わっている社員。

質問者
私、SUBARUから来てちょうど1年ぐらい経ち、トヨタとSUBARUの⾵⼟の違いを感じています。豊⽥社⻑の SUBARUに対する社員の印象というか⾵⼟というか、どんなことを感じていらっしゃるか、もしあればお聞きしたいなと思いまして。

豊⽥
この間、(SUBARUの)中村社⻑と⼀緒に三鷹の技術センターに、協業のアナウンスをした後に⾏ってきました。そこでも必ず聞かれるのが今の質問です。
僕が思ってるSUBARUは、全員「SUBARU愛が強いな」ということ。SUBARU愛というのは、会社に対する愛と、⾞に対する愛。そして、⽔平対向と四駆がSUBARUの味ならば、やっぱりそこに愛を感じるんですよ。それが私の印象。ただし⽋点はね、しつこいこと。

会場(笑)。

豊⽥
恵⽐寿のSUBARU本社に訪問⾏ったときに、あるSUBARUの社員から聞かれました。「豊⽥さんはいろいろ⾒て、SUBARUのいいところばっかり⾔ってるけど、悪いところ教えてくださいよ」って。それで僕は、「⼈間には⻑所と短所があるんだ」と伝えました。「99の短所を持っていて1つの⻑所がある⼈」か「99の⻑所と1つの短所がある⼈」、どっちになりたいかっていうと、私⾃⾝は99の短所の塊の⼈間だから、1つの⻑所を伸ばして、そこは誰にも負けない⼈間になりたいと⾔ったの。

よくいるでしょ、あの⼈いい⼈だけどあの⽋点は許せないって⼈。そういうふうにはなりたくないってことを⾔ったんです。だからSUBARUはSUBARU愛と四駆と⽔平対向への愛を持ち続けていけばいいじゃんと⾔ったら、「その答えを聞いてなおかつ聞きますが、SUBARUの⽋点はなんですか」って聞かれたの。

豊⽥
だから僕は即、「そのしつこさ!」って⾔ったの。そうしたら皆さん納得されてました。(笑)

会場(笑)。

豊⽥
しつこさは⽋点であるけども、僕、⻑所でもあると思うんですよ。そのしつこさ、粘り強さ。やっぱりお互いともに株を持ち合いましょうという、どっちが上、どっちが下じゃない関係を(トヨタとは)結びました。中村社⻑以下、SUBARUのトップ経営陣は⼤変な決断をされたと思っています。
だからそういう意味で、こうやって⼀緒に仕事をしていくというのが⾮常に⼤切になりますので、お⼒を貸していただきたいです。

そして今度、中村社⻑が来るの、この職場に。私、SUBARUの職場を回ったときに、中村社⻑が、トヨタの社⻑が来てるんだからいらっしゃいませぐらい⾔えよっていうの。これはお願いです。中村社⻑が来たときに、皆さん声を合わせて「いらっしゃいませ」って⾔ってください。そうするとその後、すごい話がやりやすくなりますから。(笑)

だから中村社⻑の姿を⾒た瞬間に、これはもうやらせで結構なので、普段からやってますみたいな顔をしながらやってください。「いらっしゃいませ」って。お願いします。(笑)

後⽇談になるが、実際に中村社⻑がトヨタに来られた際の映像がこちらだ。
この場に豊⽥はいなかったが、来られた⽅に笑顔になって欲しいという豊⽥流のコミュニケーションの取り⽅だった。

次回は、豊⽥の⾞の販売に対する想い、従業員の育成についての質問を紹介したい。

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