部員の約半分がトヨタ以外の会社の出向者で構成される電気自動車の開発と活用を考える部署へ豊田章男が訪れた。
先日、トヨタイムズでは、夏ごろに豊田が衣浦工場(INSIDE TOYOTA #40)や田原工場(INSIDE TOYOTA #42)を訪れた時のことを紹介した。それ以降も豊田は時間を見つけては社内の現場を訪れている。
今回、豊田はZEV B&D Labという部署を訪れた。
英字が並んだ聞きなれない部署名…、
ZEVとは「Zero・Emission・Vehicle」電気自動車のことを指し、
B&Dは「Business & Development」、Labは「Laboratory」。
つまりは、電気自動車を単に製品開発だけでなく、その活用(ビジネス)も含めて、推進していくことを考えている部署である。
ここには他の部署とは異なる大きな特徴がある。
在籍人数総勢342名の中で、およそ半分にあたる158名が、トヨタ自動車以外の会社からの出向者で構成されている。
現場を訪れた豊田も冒頭に、そのことを前提とした自身の想いを語った。
この部署というのはちょっと特異なんですよ。
何が変わってるかっていうと、ここにはトヨタ自動車に入社した人、SUBARUに入社した人、スズキに入社した人、いろんな人がいるでしょう。
かつ、いろんな部署でいろんな生い立ちでやってたでしょう。
さらに、この職場は、今、聞くところによると、毎月毎月、人がどんどん増えている。
しかもトヨタだけではなくて、色んなところから集まってる。
今、私がこうやって眺めても、どなたがトヨタ自動車で、どなたがSUBARUで、
どなたがスズキでって全然分かりません。
それが僕は素晴らしいと思います。それはなぜか。
これは日本を元気にするため、そしてまた、日本がものづくりの世界、つまりリアルな世界の中で、そして自動車業界で世界から取り残されないために、こういう仕事をやってるという職場だからだと思います。
ある要素技術とか、ある電気自動車の一部の機能とかいうことも大切ですが、そこに1本、背骨のような、そういうものが通ってということが、皆さんがやってることだと思います。
いろいろ変化が多いということは大変だと思います。
だけど、ある面、エキサイティングでもあると思います。
やっぱり、まだ電気自動車っていうのは今後どうなっていくか分かりません…。
分かりませんが…、少なくとも世の中は電動化というものに進んでいくこと、そして自動化に向かっていくこと、要はCASEに向かっていくことだけは間違いないです。
そういう中において、この組織の先行きは分かりませんが、ここで働いている皆さんが、ここでの経験、ここでの体験、ここでの人脈、ここでの友情というものが、今後の皆さんのキャリアアップ、そして今後の皆さんの人生にとっていいものにしていくためには、やっぱり1人1人がそういう意識を持ってやっていただきたいというふうにも思います。
ですから、何か縁があって集まった仲間ですから、ぜひともこの瞬間瞬間を大切にして、この今を価値あるもの、もちろんそれぞれの会社にとっても、それぞれの出身部署にとってもそうですが、それより前に、皆さん個人にとって価値あるものにしていくことを、ぶれない軸にしていただきたいなというふうに思います。
豊田も言っていたとおり、この職場は、どんどん人が増えている。
なので、毎月、全員が集まって転入者の紹介が行われている。
今回は、その場に、豊田が突然現れて、マイクを握ったカタチだ。
突然、社長が現れて、熱い思いを語ったからだろうか、話が終わって、その場には少し静寂が訪れた。
しーん…。
なんか、せっかくですから「文句」とか「不安」とか「感想」とか、なんでもいいですから、せっかくの"生"です…、生(の豊田章男)ですから、生だし、本物(の豊田章男)ですから、なんでもいいから聞いてみてください。
QAセッションが急遽はじまった。
その場の司会を務めていた部長の豊島は、みんなからの質問を促そうとした。
挙手でお願いします。はい。
我々(マネジメント)には遠慮しないで…、皆さんの骨は拾いますから…(笑)
その豊島の一言に、すかさず豊田社長は「拾えるのか!?」と突っ込んだ。
そして、もう一度、豊田が語り出す。
骨拾うって言ってるけど、拾えませんからね…(一同笑)。
本当の"責任者"っていうのはこちら(豊田自身)しかいない。
要は、"責任者"っていうのは世間が認める責任者じゃないとダメなんだ。
会社の中の色んなヒエラルキーで「私が責任者です」と言ってみたって、
それでは世間が認めてない…。
だから私自身(豊田自身)が会社を辞めるとか、
私が責任を取るということを示さない限り、新しいことはチャレンジできません。
だから、もっといいクルマをつくったり、日本を元気にしたいって、さっき言ってたけど、あれが達成できるなら何やってもいいですから…。
そういうつもりでやったことで結果が全部良くなるわけじゃないの。
だから、そのために責任者がいるんでしょ。
だから、(部長も)そういう態度でやってくれれば、どんどん進んでいくと思いますよ。
厳しいセリフではあったが、いじられた部長に一同が沸き、その上で、「自分が責任を取るから、もっといいクルマをつくるためや、日本を元気にするためなら、何やってもいい」という社長からの言葉に、その場の雰囲気は大きく変わった。
そこからは、質問の手が、ひっきりなしに上がっていく。このQAセッションは、この後、1時間以上も続いていった。
次回記事では、QAの内容をいくつか紹介していきたい。