2019.06.19

「大切にしたい2つの価値
~株主総会:豊田章男からのメッセージ~」 前編

晴天に恵まれた613日。愛知県豊田市のトヨタ自動車本社にて、過去最高の5546名の株主の方々が出席し、第115回定時株主総会が開催された。
会場に展示されたセンチュリーGRMN、GRスープラ、4代目スープラが出迎えた。

会場に展示されたセンチュリーGRMN、GRスープラ、4代目スープラ

今年の株主総会では、12名の方々から18の質問が出された。トヨタイムズでは議長である豊田の発言を中心に今年の株主総会を振り返りたい。

今回の総会では、特に会場の空気が変わった瞬間があった。最近の痛ましい交通事故を受け、トヨタ車の安全性と安全技術の開発に関する質問が出た時だ。

株主総会を振り返る

「交通事故死傷者ゼロを実現しなくてはいけない」

質問

ここのところ、高齢者が運転する車が暴走して歩行者をはねたりするような、大変痛ましい悲しい交通事故が頻繁(ひんぱん)に報道されています。プリウスは大丈夫でしょうか?
運転者がミスしても怪我をさせない、ちゃんと止まってくれる防衛運転が出来る車の技術開発がどこまでできているか教えてほしい。

議長の豊田社長
==豊田社長==

ご質問ありがとうございました。

交通事故でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、お悔やみ申し上げます。また、お怪我をされた方々の一日も早い回復をお見舞申し上げます。

いつも交通事故で犠牲になられる方は、幸せな生活を直前までおくられていた方だと思います。本当に幸せな生活が一瞬にして変わってしまう。自動車会社に関わる者として、心を痛めております。この件に関しましては、副社長の吉田より回答申し上げます。

トヨタの究極の願いは交通事故死傷者ゼロ
==吉田副社長==

プリウスの事故に関しまして、ご心配をおかけして申し訳ございません。私も最近の悲惨な事故の報道を見ると大変心が痛む思いです。トヨタの究極の願いは、交通事故死傷者ゼロであり、この目標に向かって、日々、安全なクルマづくりを進めておりますが、まだまだ道半ばだと思います。

また、直近の高齢者の事故は、喫緊(きっきん)の社会課題だと認識しています。1つ目のご質問のプリウスの事故に関して、個々の事故に関し、警察の調査に対して全面的に協力をしています。

トヨタはお客様の安心、安全を第一に厳しい基準で、厳しい評価を行い、世の中に車を出しています。それは、プリウスも他の車も同じです。つまり同じ基準で出しているということでございます。

プリウスは環境車ということもあって、年配のお客様を中心に大変多くのお客様にご愛用いただいております。大変多くのお客様にご愛用いただいている一方で、残念ながら事故も目立つ。そのことに関して大変心を痛めております。今後とも、お客様の声に耳を傾けて、もっともっと安全なクルマづくりを進めて参ります。

2つ目の質問についてです。一般道で車が歩行者や自転車を検知して、危ない時に自動でブレーキをかける、トヨタセーフティーセンス。駐車場で障害物があり、お客様がペダルを踏み間違えたり、アクセルを踏み込み過ぎたり、危ない時に自動ブレーキをかけるインテリジェントクリアランスソナー 。この2つのシステムの実用化を進めています。大変高い設定率で推移しているところですし、実際に市場での事故低減効果も出ています。

世の中の実際の事故では、こうした先進システムが付いていない車が大変多く、後付けの踏み間違い加速抑制システムを昨年末にプリウスとアクアから導入をはじめました。今年の年内までに12モデルに展開をしていこうと考えています。

安全な車社会のために我々は出来ることをすべてやります。安全なクルマづくりに加えて、ドライバーへの啓発、交通インフラの整備。この三位一体の活動を国と一緒になって頑張って参りたいと思います。何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。

==豊田社長==

私たちが実現しなくてはならないのは、交通事故死傷者ゼロの世界だと思います。自動運転をはじめとする先進技術の開発に力を入れているのもそのためです。本日アメリカのトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)のフェローであるギル・プラットがおりますので、この件に関して、補足をしたいと思います。

==ギル・プラット フェロー==

フェローのギル・プラットです。AIならびに自動運転を担当しています。ただ今のご質問は、実は、私にとっても直接関わる質問です。

3つの理由があります。1つ目は、私が小さい時に同級生の一人が私の目の前で、自動車事故で命を落とすのを目撃したことです。2つ目は、その車を運転していたドライバーが道端に座り込んで泣いているのを見たことです。3つ目は、それから年月が経って、成人した時に、自分の父が高齢により安全な運転ができなくなり、車のカギを取り上げなくてはならなくなった経験をしたことです。この3つの理由から、ぜひ、こうした問題を解決したいと思って、トヨタに入りました。

いまは、何百人ものトップクラスのAI研究者がアメリカ、日本で「ガーディアン」というドライバーの運転サポート技術を開発しています。私たちの夢は、まさにこのガーディアンがトヨタセーフティーセンスをレベルアップさせ、さらに安全に、悲惨な事故を回避するとともに、死亡や負傷を予防することです。同時にそういった事故を起こす、ドライバーにとっても悲惨な経験を予防したいと思っています。

また、安全な運転が出来なくなった高齢者に、自由な移動によって自立を維持できるようにしたいと思います。私たちの社会にとって非常に大事な技術だと思っていますので、ガーディアンの技術をトヨタ車のみならず、どこのメーカーの車にも提供したいと考えています。これでご質問のお答えになっていれば幸いです。

==豊田社長==

自動運転などの未来に向けての技術開発を進めている一方で、「今困っている現状をどうにかしてほしい」という方もいらっしゃいます。日本には、車がなければ成り立たない地域がたくさんあるとも思います。

そうした中で全国のトヨタ販売店のネットワークが何かお役に立てるのではないか、それぞれの地域の困りごとをサポートできるような施策も現在検討中ですので、何とか今解決できることも、未来への技術開発も、両方を進めて参りたいと思います。

いずれにしましても、皆様のサポートなしにはいきません。何よりも交通事故死傷者ゼロになるまでの闘いになりますので、ぜひとも、そこまでやりとげるまでサポートをよろしくお願い申し上げます。

「軽自動車はライフライン。車をより求めやすい体制づくりを」

質問

国内販売について2点ほど質問させてください。2018年の車種別販売台数ランキングでトップ10入りした中の7車種が軽自動車ということがあったと思いますが、現状として軽自動車が良く売れていると感じます。社長はこの現状をどのように考えていらっしゃるか。軽自動車についてどのように思っていらっしゃるのか。
これだけ、人口減少が進んでいく中、若者の車離れが進んでいく中、軽自動車のシェアを奪うことで戦略的に進めていくという会社としての考えはあるのでしょうか。政府機関に自動車が有利に売れるような働きかけがあるでしょうのか。

軽自動車はライフラインの一端
==豊田社長==

道が車をつくるわけですが、日本という国は軽自動車のみ双方向で行き違い可能な道が80%ございます。軽自動車でないと走れない道がほとんどだということです。日本の場合、特に地方都市を中心に軽自動車でなければ生活できない。いわば、軽自動車はライフラインの一端であると認識しています。

そして、そういう軽自動車を基準にした、車をより求めやすい体制づくりも必要だと思います。
そのためには車体課税です。軽自動車を基準に、排気量が100CCずつ上がったら、少しずつ税金を上げていくようなシンプルな税体系に変えてほしいと、自工会を通じて、実はお願いをしております。

昨年、今までずっと車体課税に関しては、足される一方だったのですが、1300億円の恒久減税(一時的な減税でない)の約束をやっといただきました。ただし、1300億円が高いのか、安いのか。自動車業界で国に納めている税金は(年間)15兆円ほどになります。15兆円ほど納めているところで1300億円というのは、自動車業界からすれば、まだまだ始まりにすぎないのではないかと思っています。

軽自動車もほかの車も、より安全な車、そして、よりお求めやすい環境づくりを税金を含めて進めていくように、微力ではございますが、自工会とも協力しながらやってまいります。

質問はこの後も続く。後編では、次世代に向けた豊田の想いを中心に紹介する。