トヨタイムズスポーツ
2026.09.16
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「アジア大会だからできる挑戦」がある。中距離のエース田中希実が3種目に挑む

2026.09.16

目前に控えたアジア競技大会で、1500m 5000m 10000mに出場する陸上の田中希実選手を取材。トップアスリートゆえの葛藤から、アジア大会だからこそできるレース展開まで、ざっくばらんに語ってくれた。

9月11日のトヨタイムズスポーツは、第20回アジア競技大会(愛知・名古屋2026)の開幕を目前に控え、メダルが有力視される陸上の田中希実選手のインタビューをお送りした。

3年ぶりに豊田自動織機に復帰した田中選手にとって、今大会の舞台は縁の深い瑞穂の競技場。世界との壁に悩みながらも思考を続ける日本中距離のエースが、3種目に出場するアジア大会への抱負を語る!

思い出の瑞穂で1500m 5000m 10000mに出場

今年で創立100周年を迎える豊田自動織機に、田中選手が戻ってきた。学生時代から同社のサポートを受けており、逢妻グラウンドは田中選手にとってホームの練習場所。大学卒業後に豊田自動織機に入社し、プロとしての活動を経て今年4月に再入社した。

くしくもアジア大会は会社の地元の愛知・名古屋で開催され、田中選手は3種目の出場を予定している。
・女子10000m決勝 9月24日(木)21:25〜
・女子1500m決勝 9月26日(土)22:15~
・女子5000m決勝 9月28日(月)20:43~

これまでに数々の日本記録を更新し、オリンピックや世界陸上を何度も経験している田中選手だが、アジア大会への出場は意外にも初めて。会場となる名古屋市瑞穂公園陸上競技場は、思い入れのある場所でもある。

「全国中学大会だったり初めての日本選手権も瑞穂だったり、自分にとっての初めてのアジア大会がまた瑞穂というのが感慨深くて。また豊田自動織機の100周年にも重なっていて、1周回って来たという感慨があります」

アジア大会だからこそできる勝負

一方で今年の田中選手は、難しいシーズンを送っている。6月に瑞穂で行われた日本選手権では、1500mで7連覇を達成。だが5000mはゴール前で抜かれて2位で、連覇が途絶えた。

「これ以上の記録って日本人やアジア選手に出せるのかなって、自分でも疑問に思うようなタイムを出してきたので、次はどこに目標を置けばいいのかっていうところがあった。それこそ1周回ってすごく難しくて。勝ちたいっていう気持ちに貪欲ではなく、やっぱり現実というのか5000mでは負けてしまった。そこで負けて悔しいと思う方が、自分にとっても順当なことだったので、また前を向くきっかけになったのかなと思います」

国内から世界に目を向けると、トップ選手が集まる大会では、高い壁に直面している。記録を狙いたいと思っていても、田中選手よりもタイムの良い選手たちが勝ち負けに徹するため、スローペースの展開で最後のスプリント勝負となってしまう。「他の選手の力を借りないと記録が出ない状況だけど、記録は出させてもらえないし、順位も取らせてもらえない展開が多い」と田中選手は語る。

東京2020オリンピックの女子1500mで、日本人初の決勝進出を果たし8位入賞。当時と比べて世界のレベルは上がっており、「あの頃は4分を切れば世界の背中を捉えられるという感覚があったんですけど、今は4分を切ってもまだ世界の背中が見えない状況に戻ってしまっている」と、悩みは深い。

だからこそアジア大会では、国内の大会や世界陸上とは違うレースを見せられるのではないかと考えている。

「記録という面では、1人で最初から飛ばしてというのはすごく難しいです。日本記録を1人で出せる力があったら、集団で走ったときに世界記録を出せるぐらいの力ということになってしまうので、それほどの力は今の私にはないと思う。ただ、記録ではなくて勝負となったときに、他の選手に合わせるのではなく自分でレースを作るのは、アジアだからこそできるのかなと思っています」

写真:第13回木南道孝記念陸上競技大会

スピードとスタミナのバランスとは

選手としての自分自身について、順位を争うよりも記録の勝負が好きなタイプで、スピードよりもスタミナの適性があると田中選手は自己分析する。「自分の中ではだいぶスピードを高めてきた自負はあっても、これ以上どうスピードを出せられるかが分からない域に来てしまっていて。そこでどう戦うかは模索中」と話した。

スピードとスタミナの両方をどうやって鍛えるか。両者のバランスについて、1500mを例にこう解説する。

「1周目、2周目を超えたときにすごくきついですし、最初にドンと入ったスピードをいかに持ちこたえるかがポイントになってくる。慣れてきたら意外ときつくないときもあるので、そこが1500mの不思議なところ。それがスタミナだと思うんですけど、スピードに対する余裕だとも考えられる。スピードが高まってるから、ある程度のペースで入ってるのに楽に感じるっていう部分もあるし。本当に境目がなくて、それが何かのきっかけでカチッと合ったときに、あと1周2周行けるかもというのがときどき訪れる」

今回のアジア大会は、10000mの次に1500mを走り、調整が難しい日程。3種目へのチャレンジは、今後の田中選手の糧となるはずだ。

「アジア大会では1500mがポイントになってくるんですけど、今後に世界陸上やオリンピックで自分が一番適性があって戦える種目って何だろうと考えたときに、5000mだったり、ゆくゆくは10000mだったりする。そういった種目を鍛えるためには、自分が世界の胸を借りるという意識じゃなくて、自分から動かしていくことをしながら力を高めていける舞台はアジアしかない」

人との縁が成長へとつながる

インタビューの最後に森田京之介キャスターは、「機織り機がこの会社の原点。機を織るときには縦糸と横糸があって生地は強くなっていく。田中選手が成長していく中で、縦糸は何で横糸は何なのか」と、豊田自動織機にちなんだ質問をぶつけた。

「私は人の縁にすごく恵まれてると思うので、横糸はずっと一緒にいてくれる家族。それだけじゃなくって、(縦糸は)今まで出会った人であったり、これから出会うであろう人であったりとか、その時々のご縁の場合もあれば過去から未来まで続いているご縁もあったり。そのご縁があるから今があるという部分も含めて、布として成り立っていくような感覚でいます」

ちなみに田中選手は、高校では情報繊維科で学び、機織り機に触れる機会もあったそうだ。

「そのときは何とも思わなかったことが、今につながっていると感じたり。それがすごく面白くて、物語になっている部分と。節目のタイミングでたまたま今こうして全てが重なってるときに、これがこれからにつながってくんだなというのを、すごく感じています」

田中選手は、9月13日に行われた全日本実業団対抗選手権の800mで、自己ベストと大会記録をともに更新して優勝。アジア大会に向けて順調そうだ。このタイミングで愛知に戻った縁から、新しい物語が始まることを期待せずにはいられない。

いよいよアジア大会、期間中は毎日コンテンツ配信

トヨタイムズスポーツの次回(2026年9月18日)は、いよいよアジア大会が開幕する前日。豪華ゲストを招き、18時からYouTubeで生配信する。さらに10月4日までの会期中は、生配信や大会レポート動画を毎日配信する予定。熱狂渦巻く会場の模様やトヨタグループのアスリートたちの活躍をお届けする!

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