7/18-19に富士スピードウェイで併催された、スーパーフォーミュラとKYOJO CUPを特集。スタジオゲストに阪口晴南選手と富下李央菜選手を迎え、熱いレースとなった2日間を振り返った。
7月24日のトヨタイムズスポーツは、国内最高峰の2つのフォーミュラレース、スーパーフォーミュラ(SF)とKYOJO CUPを特集した。
日本最速のSFからは第2戦で2位に入った阪口晴南選手、女性ドライバー限定レースのKYOJOからは開幕戦で初優勝を果たした富下李央菜選手が生出演。両カテゴリーが併催され、3つの予選と5つの決勝レースが行われた富士の熱い2日間を振り返った。
阪口晴南に“しゃべり”の大御所からプレッシャー
サーキットでの速さをひたすら追求し、タイヤと運転席はむき出し、前後のウイングが特徴的な形状へと進化を遂げたフォーミュラカー。その2つのトップカテゴリーで戦う、人気と実力を兼ね備えた新世代のドライバーが今回のゲストだ。
KYOJO CUPを走る富下李央菜選手は、2017年に小学5年でカートデビューした現在20歳。昨年からスーパー耐久にも参戦しており、ST-2クラスでシリーズ2位。KYOJOでこれまでの3シーズンは2位が最高だったが、今年5月の開幕戦で予選・スプリント・ファイナルを全て制するパーフェクトウィンを飾った。
スーパーフォーミュラに2021年からフル参戦している阪口晴南選手は、アイルトン・セナが名前の由来だという27歳。しばらく苦しい時期が続いたが、今年はもてぎでの第2戦で2位となり、5年ぶりに表彰台に立った。スーパーGTでも2022年からGT500にフル参戦している。
富下選手が10年足らずのキャリアでKYOJOにて優勝したことに、阪口選手は「成長が早すぎて、もうおじさんびっくりしています」とコメントしていた。一方、その阪口選手が2歳で初めてカートに乗ったことに、富下選手は衝撃を受けた様子。どちらも、ただ者ではないことは確かだ。
阪口選手の出演にあたり、大先輩である脇阪寿一さんからのサプライズVTR(7:21から)が披露された。今年のル・マン24時間レースの解説を一緒に務めた阪口選手に対し、「次呼ばれるためにどういうコメントをするか、視聴者の皆さんが何を求めてるかを考えてスタジオに臨んでいただければ」と、あえてプレッシャーをかけるメッセージが送られた。
“しゃべれるドライバー”の第一人者から、後継者として指名された形の阪口選手。「どちら様ですか?」と見事に切り返し、「大事なことをコメントいただいた」とアドバイスを受け止めていた。今回の放送では、阪口選手の言語化能力にも注目だ。
【1日目】ドライバーを悩ます雨
7月18・19日、富士スピードウェイにはSF史上最多の延べ5万6000人が来場し、かつてない熱気に包まれた。SFの第6戦と第7戦に加え、KYOJOの第2戦も併催。さらに、天候不良で代替開催となったSF第3戦の決勝も行われ、モータスポーツファンにとってはぜいたくな2日間となった。
土曜日は3つの予選と2つの決勝レースが行われ、阪口選手と富下選手に密着取材していた森田京之介キャスターも大忙し。朝から降っていた雨がやみ、午後には再び雨がパラつくという、ドライバーにとっては難しい1日だった。
阪口選手は2つの予選で6位、8位と好位置につけた。第6戦の決勝は、ホンダ勢が先行する展開で、なかなかペースが上がらない。それでも7位を死守し、トヨタ勢では3番目でフィニッシュ。レース後は、「単純にペースがなかったです。明日ガラっと印象が変わるようなことをできるように頑張りたいなと思います」と、翌日のレースに雪辱を期していた。
富下選手は第1戦からの好調を維持していたが、予選は路面が乾いていく中で逆転を許して4位。スプリントレースでは、徐々にトップに迫り、残り2周となった9周目の第1コーナーで先頭を奪う勢い。だが、タイヤが接触してしまい大きくスピン。13位に後退してレースを終えた。
「悔しいですね。ペース自体は悪くなかったので、本当にもったいなかった」とインタビューに答えていた富下選手。ショックな展開の直後だったが、取材のスタンバイをしている森田キャスターらの姿が目に入って、すぐに対応していたそうだ。
目まぐるしい土曜日の予選とレースの模様は9:55から。
ライバルチームの監督も脱帽、ピットインの好判断
スタジオでは結果を振り返り、天候が変わる中でのピットインの判断が話題に。阪口選手は「途中で降ってくると、ウエットタイヤに変えないにしても、アウトラップ(ピット直後の1周)のロスが大きいんですよ。降っていない時に、いかにタイミングよく入れるかが重要になるレースだったかなと思います」と説明する。
続けて「自慢していいですか?」と阪口選手。「これ(ピットイン)、僕発信なんですよ。ちょうど雨がやんで、この周ならアウトラップのロスがない。僕が入ったら次の周で周りも入ったんですけど、そこでアンダーカット(新しいタイヤを生かして逆転)ですよね。これは正直気持ち良かったです」と語った。
これには、番組を視聴していたルーキーレーシングの石浦宏明監督が反応。チャット欄に「セナの翌周にニレイ(福住選手)をピットに入れたのにアウトラップで抜かれた やっぱりセナさんは天才です」と生コメントしていた。
今回のKYOJO CUPからは、停止した状態からスタートする「スタンディングスタート」が導入されたことについても言及。走りながらスタートを切るローリングスタートとの違いや、スタート時の判断について、両ドライバーが解説した。
【2日目】悔しいマシントラブル
日曜日は3つの決勝レースが開催。まず、代替開催となったSF第3戦の決勝は、阪口選手が5番手から好スタート。3番手に浮上して初優勝が見える位置につけるが、17周目にトラブルに見舞われる。ギアボックスの異常でスローダウンし、ピットに戻ってそのままリタイヤ。「最善のバトルはしていたんですけど、機械のスポーツにそういったトラブルは付き物なので、しょうがないかなと思います」と阪口選手は悔しさを押し殺した。
KYOJOのファイナルでは、13番手からスタートした富下選手が少しずつポジションを上げ、6位まで浮上。終盤にセーフティカーが入り「まさに前にいた選手に仕掛けようとしてたところだったので、そこが心残り」と本人は悔しそうだが、多くの見せ場を作った。(結果は上位選手がペナルティで降格したため5位でフィニッシュ)
最後のレースとなったSF第7戦の決勝は、阪口選手は8番手スタート、午前中のマシントラブルも解消したが、ホンダ勢の牙城を崩せず、11位に終わった。
「2戦を踏まえて最後、大胆にトライしてみたんですけど、それが本来の自分たちのポテンシャルよりも下げてしまうような形になってしまった。思考が止まっていては離されていく一方だと思うので、前進してしっかりと戦えるように次はしたいとしたい」と話す阪口選手。レース後に体を冷やすためにプールに入り、そのままファンから見える場所でインタビューに答える姿が印象的だ。
日曜日のレースの振り返りは28:00から。
鋭い質問「無線ボタンを押してからキレる?」
SF第3戦のリタイヤの場面では、渡邊信太郎エンジニアが阪口選手の肩をポンポンと叩いて励ます光景も見られた。その悔しそうな表情をあらためて見て、阪口選手は「僕に初優勝をっていう想いをすごい強く持ってくれているエンジニアなので、一緒に悔しがってくれて胸が熱い」と語る。
富下選手からは、SFに対して鋭い質問が飛び出した。「選手が車に乗ってる途中でキレている映像が出てくるんですけど、あれって無線ボタン押してから怒ってるってことですか?」という質問に、阪口選手も苦笑い。
ボタンを押さなければ怒りの声は聞こえないわけで、「たぶん自分の怒りを共有したいんでしょうね。あとは、ちょっと微妙なアクシデントの時とかにアピールはあるかもしれないですね」と答えていた。
ほかにも、KYOJOで前の車を抜きやすくなっているマシンの設計や、SFのレースを面白くするオーバーテイクシステムの戦略(50:34 から)など、普段は聞けないドライバーによる解説が盛りだくさんの放送となった。
トップ奪還を期す富下李央菜
SFの次戦は8月8・9日にSUGOで、KYOJOは9月5・6日に富士で第3戦が行われる。阪口選手にとっては得意なサーキットで初優勝のチャンス。総合2位につける富下選手にとってはトップを再び奪うための大事なレースだ。
レース後も放送中も落ち着いた印象で、喜怒哀楽を表情にあまり出さない富下選手は「勝っても次のレースのことを考えちゃったりとかするので、ヨッシャーとかはならないですね」。悔しい場面でも「泣いたら負けだと思っているので」と、芯の強さが垣間見られた。
阪口選手は「トヨタイムズスポーツも先に出られちゃったし、いろいろ先越されてる」と前回の放送に出演した、仲の良い福住仁嶺選手をライバルに指名。放送中に石浦監督からのツッコミのコメントを受け、鋭く切り返すなど、交友関係の広さとコミュ力の高さをあらためて示した。
まだまだ熱いレースが続く、スーパーフォーミュラとKYOJO CUP。個性的なメンバーが繰り広げる人間ドラマも見逃すな!
毎週金曜日11:50からYouTubeでお送りしているトヨタイムズスポーツ。次回(2026年7月31日)は、TGRハースF1チームのTPC(旧型車を使ったテスト)を特集する。7月28・29日に富士で行われるTPCで、福住仁嶺選手がF1マシンに初めて乗る様子を密着取材。ぜひ、お見逃しなく!