今、我々ができる3つのこと 自動車4団体合同会見 豊田会長メッセージ

2020.04.10

コロナ感染拡大に自動車産業はどう向き合うか―。自動車工業4団体が結束して緊急記者会見を開いた。

コロナ対応で改めて心に刻んだこと

今回、コロナの脅威を前に、我々は“必要なものが思うように手に入らない”という状況に陥りました。

例えば、マスクも、そのひとつですし、医療用シールドも、そうです。

こうなった時に「自分たちで、必要なものを作れる」ことの大切さに、我々は、改めて気がつきました。

なぜ作れるのか? それは日本にモノづくりが残っていたからです。リアルなモノづくりの現場は、絶対に失ってはいけないんだと、改めて、強く心に刻みました。

モノづくりを失わないための新たな試み

全世界的に車が売れない日々が続き、稼働を止めざるを得ない工場も出てきました。

もし、これが続いてしまえば、経営が立ち行かなくなる仲間も出てくるでしょう。

しかし、その中にも未来に向けて絶対に失ってはいけない要素技術やどんな機械にも真似できない技能を持った人材が存在しています。

それらが外に流出したり、途絶えてしまえば、我々が目指す未来は、きっと何年も遠のいてしまいます。

手遅れになる前に、タイムリーにそれらを新たな資本と結びつけていかないといけません。その時に必要なのは本当に残すべきものはなにか? を見極めていく“目利きの力”です。

おそらく、その力は、モノづくりを理解している、我々、自動車4団体自身にしかありません。

我々の持つ目利きの力と、自動車の未来に賭けようとしてくださる資本を組み合わせていくファンドを考えていければと思っております。

人や技術のマッチング

また、この目利きの力があれば、人材のマッチングということもやれるのではないかと思っております。

なにか高い技術・技能を持っている人が、不幸にも働く場を失おうとしていたら、自動車産業内で、それを必要としている企業とマッチングしていく。

自動車産業の中で、モノづくりを守っていくと同時に、少しでも不幸を減らして、幸せを増やしていく。

こんな仕組みを回していければと考えております。

移動する価値の再発見

先日、家の外に咲く花を見て「元来、春は待ち遠しい季節だったんだ」と改めて思いました。

寒い日が過ぎ去り、春になれば暖かくなって、人々は、外に出られます。この時、人は「ああ、やっと外に出られる!」と感じ、“移動できる楽しみ”を、実感するのだと思います。

今は外に出られない厳しい冬のような日々が続いています。その中で、多くの人は「移動する」ことの嬉しさを再発見しているのではないでしょうか。外に出られること、好きなところに行けることは、本当に素晴らしいことです。私も、改めて、それを実感しています。

MOVEという言葉には「動く」という意味もありますが、「心を動かす」「感動する」という意味も含まれています。この2つが同じ言葉に込められているということも、本当に納得ができると思いました。

この冬が明けた時、多くの人が、今まで以上に、移動を楽しめるよう、我々は車を、もっと素晴らしいものにしていかないといけません。

経済環境も、冬が続いています。それも、かなり厳しい冬です。とにかく生き延びなければ、春を迎えることができません。自動車産業が生き延びていけば、多くの人に、その影響を繋げていくことができます。

私が生まれる前、終戦時の話ですが、戦争で人も減り、工場も失ったトヨタは、それでも、なんとか生き延びていくために、作れるものは、なんでも作ったそうです。

鍋やフライパンをつくり、更には、工場周辺の荒地を開墾して芋や麦までつくっていました。

スバルでも、農機具や乳母車、ミシン、バリカン等、あらゆる生活品を作っていたとも聞きました。

売る車がない販売店も、食器など、なにかしら生活に必要なものを仕入れ、人々に売っていたそうです。

我々の産業には、生き残るための、粘り強いDNAがあるはずです。なんとしても踏ん張って、生き残っていきましょう!

今、我々ができる3つのこと

そして、春を迎えた時、すなわち、コロナウイルスが終息した時、さあ!これから外に出られる!という時に、経済をいち早く復活させる一番の原動力になっていきたいと思っております。

冬だからといって縮こまっていたら、足腰が弱ってしまいます。とにかく今やるべきことを、しっかりやってまいります。

今、我々ができることは3つです。

「医療従事者とそのご家族に感謝し、少しでもサポートをしていくこと」

「経済を回し続けるために、なんとしても事業を続けていくこと」

そして、「春がきたら、その一番の牽引役になるべく準備を進めていくこと」

この3つに、全力を尽くしてまいります。

皆様、よろしくお願いいたします。本日は、ありがとうございました。

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