コラム
2021.08.24

【パラリンピック競技紹介】魅力を知れば、観戦がもっと面白くなる!

2021.08.24

いよいよ開幕する東京2020パラリンピック。それぞれ独自の魅力がある全22競技のルールや見どころを紹介する。

日々厳しいトレーニングを重ねてきた選手たちが、最高の結果を目指して自分の限界に挑む東京2020パラリンピック。パラ陸上競技や車いすテニスなど健常者の競技に近いルールを採用する競技から、ボッチャやゴールボールといったパラリンピックならではのスポーツまで、22の競技が開催される。

車いすやバイク(自転車)といった道具を使いこなす華麗なテクニック、選手ごとの身体能力を生かしてチームを構成する戦略性、ルールの制約があるからこそ生まれるスピード感やダイナミックな動きなど、パラリンピック競技にはまた独自の魅力がある。これまでパラリンピック競技を見たことがないという方も、テレビで実際の競技の様子を目にすれば、その迫力に驚くだろう。

そんなパラリンピック競技のルールや見どころを紹介しよう。

独自の魅力がある!パラリンピック競技を紹介

アーチェリー
弓を使う「リカーブオープン」、上下端に滑車がついた弓を使う「コンパウンドオープン」、そして四肢に障がいのある選手を対象とした「W1」の3部門。口で弓を引く選手、足で弓を支える選手など、障がいに応じた多様な競技スタイルも見どころで、弓をいかに体の一部として使いこなすかが高得点のカギとなる。

※英語字幕

陸上競技(トラック)
陸上競技のトラックでは短距離、中・長距離、リレー種目が行われ、視覚障がいや四肢の欠損など障がいのクラス分けは多岐にわたる。ガイドランナーと走る視覚障がいクラス、義肢が使用できる肢体不自由のクラス、カスタマイズされた競技用車いす使う車いすクラスは、腕と上半身の力だけで操作する選手の力強さも見どころのひとつ。

陸上競技(フィールド)
陸上競技のフィールドには「跳躍競技」と「投てき競技」がある。前者は走高跳、走幅跳の2種目、後者は砲丸投、やり投げ、円盤投、パラリンピック独自のこん棒投の4種目。視覚障がいのクラスでは選手を案内するエスコート役や、助走の方向や踏切位置を声や手拍子で伝えるコーラー役とともに戦う。

陸上競技(マラソン)
マラソンはとても過酷な競技。視覚障がいクラスで選手と伴走するガイドランナーや、車いすクラスで使用される競技用の車いす(レーサー)は、まさに身体の一部。ガイドランナーと選手はピッチや歩幅を合わせるなどコンビネーションも大切。レーサーを使う選手は、腕の力だけで走りきる並外れた体力が必要となる。

バドミントン
パラリンピックのバドミントンはシングルスとダブルスが行われ、前者は車いす2クラスと立位4クラスの全6クラス、後者は車いすクラスと立位クラスの2クラスに分かれる。シングルスの車いすクラスは、選手の巧みな車いすさばきが見どころのひとつ。立位クラスでは強靭な上半身を活かした豪快なスマッシュにも注目だ。

ボッチャ
ボッチャはパラリンピック特有の競技で、その戦略性の高さから「地上のカーリング」とも呼ばれる。白い「ジャックボール」を目標に6つのボールを投げ、いかに多くのボールを近づけられるかを競いあう。戦略は無限にあり、日々新たな戦法が生まれているのも特徴。最後までストーリーの読めない試合展開が見どころだ。

カヌー(スプリント)

カヌー競技には長さ5m20㎝、最小幅が50㎝の「カヤック」と、カヤックよりも2mほど長くアウトリガー(浮き具)が付く「ヴァ―」がある。1本のパドルで左右を交互に漕ぐカヤックに対し、「ヴァ―」は1本のパドルで左右どちらか片方のみを漕ぐのが特徴。どちらもカヌーと一体化した力強いパドリング技術に注目だ。

自転車競技(トラック)
自転車競技には男女とも4つのクラスがあり、さらに障がいの程度により分類される。下肢に重い障がいのある選手はハンドサイクル、バランスがとりにくい脳性まひの選手は三輪自転車、視覚障がいの選手は2人乗りのタンデム自転車を使用。トラック競技はスピード感が特徴で、選手たちは時速60キロ以上で走り抜ける。

自転車競技(ロード)
自転車競技のロードレースにはトラック競技と同様4つのクラスがあり、さらに障がいの程度により分かれている。ハンドサイクル、三輪自転車、タンデム自転車など選手の障がいにより異なる自転車を使用。ロードレースは長距離を走るため、スタミナを考慮したペース配分や駆け引きに加え、天気や道の状況も勝負のポイントとなる。

馬術
馬術は、馬場内で決められた動作を行い、歩行の正確性や動きの美しさを競う。肢体不自由または視覚障がいの選手が対象で、男女の区別はない。障がいの内容や程度に応じて5つのグレードに分けられ3種目で競う。高得点を獲得するには騎手と馬との強いパートナーシップが欠かせない。優雅でスムーズな動きは信頼と絆の証。

5人制サッカー
5人制サッカーは、全盲のフィールドプレーヤー4人とゴールキーパーの5人のチームで競い合う。フットサルと同サイズのコートには、ボールが出ないようフェンスを設置。選手たちはボールの音やガイドの指示など「音」を頼りにプレーする。試合は静寂の中で行われるが、ひとたびゴールが決まると大歓声が巻き起こる。

ゴールボール

ゴールボールは、1チーム3人で戦い、1試合24分でゴールを奪い合う。コートはバレーボールと同じ広さで、選手は全員がアイシェード(目隠し)で視覚を遮断する。選手たちは鈴入りのボールの音を頼りにプレーし、3人の足音や床をたたく音など、すべての音に作戦がある。見えないからこそ生まれる駆け引きに注目だ。

柔道
柔道は、視覚障がい者同士が戦う競技。試合時間は4分、男女ともに体重別の階級制で競う。試合は、お互いに相手の襟と袖をつかんだ状態から始まり、両手が離れると組んだ状態に戻される。手から伝わる相手の力加減やかすかな動き、さらには息づかいまでも察知して瞬時に大技を繰り出すこの競技は、一瞬たりとも気が抜けない。

パワーリフティング
パワーリフティングは、下肢に障がいのある選手が男女体重別のクラスで分かれ、パワーを競い合う。台上であおむけの状態からバーベルを押し上げ、主審が「ラック」と合図するまで正しい姿勢で静止。上半身だけで自身の体重のおよそ3倍の重量を持ち上げるこの競技は、パワーと技術、そして、一瞬の集中力が試される。

ボート

ボート競技は、障がいの程度とボートの種類別に3種目が行われる。「PR1シングルスカル」の選手は腕と肩のみでボートを漕ぐ。「PR2ダブルスカル」は胴体と腕・肩を使う選手が、男女でペアを組んで競う。「PR3舵手つきフォア」は胴体と腕肩に加え、脚も使う選手が男女2人ずつと舵手の5人編成で行われる

射撃
射撃競技は、「ライフル」または「ピストル」による射撃で得点を競う。ライフルには「立射」「膝射」「伏射」があり、車いすの選手はいずれも座って撃つことが可能。ピストルは自分の腕で銃を保持する「SH1」とスタンドを使う「SH2」に分かれている。技術力に加え、集中力を極限まで高めた選手たちの射撃に注目。

シッティングバレーボール
シッティングバレーボールのコートの広さは、通常のバレーボールの約3分の1で、ネットの高さは1mほど。障がいの程度は重度と軽度に分かれ、コート上の6選手のうち軽度障がい者は1人まで。レシーブ以外は臀部が床から離れてはならない。距離が近くプレーがスピーディで、素早い反応と的確な判断が勝利へのカギとなる。

水泳
水泳競技は、障がいによって泳ぎのスタイルがさまざま。競技力に差が生まれないよう、障がいの種類や程度によって細かくクラス分けされいる。障がい別にリレー種目もある。義手や義足などの補装具は使わず、自分たちの体で最大限の推進力を生み出す。試行錯誤の末たどり着いた独自のスタイルで挑戦する選手たちの姿に注目だ。

卓球
卓球競技は、車いす・立位・知的障がいと大きく3つに分かれ、障がいの種類や程度によりさらに細かく分かれるが、競技に与える影響が同程度であれば、異なる障がいの選手が同じクラスになることも。杖を使う選手や、口でラケットを操る選手など、さまざまなスタイルが激突する。

テコンドー
東京2020パラリンピックで初めて正式競技となったテコンドー。上肢に切断や機能障がいがある選手が対象で、男女ともに体重別の3階級で戦う。胴体への蹴り技だけが有効で、頭部への蹴りは禁止。技の種類により点数が設定され、2分間3ラウンドで得点を競い合う。迫力満点の蹴り技と個性あふれる防御が見どころだ。

トライアスロン
強じんなスタミナと3種目への対応力が試されるトライアスロンは、バランスやペース配分が勝負を左右する経験と戦力のスポーツ。パラリンピックでは座位、立位、視覚障がいの3クラスが設定される。レース距離は短いので、よりスピード勝負に。一瞬たりとも気の抜けないスリリングなレース展開が特徴だ。

車いすバスケットボール
車いすバスケットボールでは、ダブルドリブルが無く、車いすのプッシュは連続2回まで認められる。障がいの程度により選手には1.0点~4.5点が割り当てられ、コート上でプレーする5人の合計持ち点は14.0点以内で構成される。障がいの程度が異なる選手たちのメンバー構成や、巧みなチェアワークに注目だ。

車いすフェンシング
下肢に障がいのある人を対象とする車いすフェンシング。「ピスト」と呼ばれる装置に固定した競技用車いすに乗り、上半身のみで戦う。フルーレ、エペ、サーブルの3種目があり、エペ、サーブルには団体戦もある。見どころは、剣さばきのテクニックとスピード。距離が近いため一瞬の駆け引きが勝敗を分ける。

車いすラグビー
車いすラグビーは男女混合の44で戦い、攻撃型と守備型の2種類の車いすを使用するのが特徴。激しいぶつかり合いが見どころで、ときに転倒する選手も出るなど迫力満点。ボールを持つ選手がトライラインを超えるとポイントとなる。選手たちには身体機能に応じて持ち点が割り振られ、設定された点数以下でチームを構成する。

車いすテニス
車いすテニスは男女の「シングルス」「ダブルス」に加え、比較的障がい程度の重い選手を対象とした「クアードシングルス」「クアードダブルス」が行われまる。2バウンドまでの返球が認められていること以外は、通常のテニスと同じルール。片手にラケットを持ちながらの華麗な車いす操作や多彩なショットが見どころだ。

パラリンピアンを間近で感じる、またとない機会

国際パラリンピック委員会の前会長で現在トヨタ社外取締役のフィリップ・クレイヴァン氏は、「人生の全く新しい側面を見せてくれる」のがパラリンピックなのだ、と強調する。多くの不可能に直面し、挑戦を続けてきたパラリンピアンの姿を見れば、大企業の社長からボランティアまで、あらゆる人がインスピレーションを受けるはずだ、という。

東京2020パラリンピックは、そんなパラリンピアンを間近で見て、接するまたとない機会だ。ぜひ観戦してみてほしい。

競技日程や選手情報はこちらから

Photo by Getty Images, AFP/Getty Images
※この記事は東京2020組織委員会の競技紹介を参考に作成しています

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