今回の「熱中症からの救出篇」では、「お店に来ていただく方全員に、気持ちよく帰っていただきたい」という販売店スタッフの想いが、ある親子を襲った突然の危機を救うことになった。
誰かの幸せを願うことで生まれた実話
どれだけ時代が変わってもトヨタが変わらずに持ち続ける「お客様第一」の想い。クルマの話にとどまることなく、人の毎日の生活にまで寄り添いたいという願いが込められた「かけがえのない一日」シリーズでは、豊田章男の直筆での宣言篇以降、お客様から寄せられた販売店スタッフとの実話を紹介していく。
今年5月の決算説明会で豊田が語った「世界中で、自分以外の誰かの幸せを願い、行動することができるトヨタパーソンを」という言葉をまさに体現している販売店スタッフたちの実話である。
今回の「熱中症からの救出篇」では、「お店に来ていただく方全員に、気持ちよく帰っていただきたい」という販売店スタッフの想いが、ある親子を襲った突然の危機を救うことになった。
一刻を争う、熱中症からの救出劇
東京、蒲田。季節外れの暑さとなった2年前の10月。当時77歳のお母様とその娘さんが幹線道路沿いを散歩していた。すると、暑さでお母様が体調を崩され、ついには喋ることも歩くこともできなくなってしまったという。
近くに休める日陰や水分補給のための自動販売機もなく、一刻を争う事態にどうしたらいいか困った娘さんは、慌てて近くにあったトヨタのお店に駆け込み「母が熱中症のようで、お水をいただけませんか?」と助けを求めた。スタッフは、歩道に座り込むお母様の元へ急いで駆け寄り「店内で休んでください」とお店の中へと招き入れた。
窓から離れた日の当たらない場所にイスを並べ、足を伸ばして休んでいただきながら、濡れタオルや清涼飲料水などで応急処置。その甲斐あってか1時間ほどでお母様は元気になられ、一同安心。ご自身の足で歩くこともでき、スタッフに笑顔で見送られ店を後にされた。
そして後日、感謝のメッセージがトヨタに届いた。
クルマに乗らない方にも、頼られる存在へ
この時の販売店スタッフが、トヨタモビリティ東京 蒲田仲六郷南店(当時、トヨタ東京カローラ蒲田店)に勤める井口氏だ。話を聞いてみると、なぜ慌てることなく冷静に熱中症の応急処置を行えたのか、その理由が見えてきた。
当時は平日の14時頃、次々と業務をこなしていく中での突然の出来事だったのだが、井口氏自身がかつて熱中症になりかけた経験があり、応急処置の知識を持っていたためスムーズに対応。
目の前の緊急事態に向き合いつつ、周りのスタッフとも連携し冷静に落ち着いて対応するその姿が、お母様を救うだけでなく、慌てる娘さんに大きな安心を届けることにもなった。
「このような緊急事態は初めてだった」と話す井口氏。元はエンジニアだったが、自ら希望してお客様とダイレクトに向き合えるフロント業務も兼任するようになった。まさに井口氏の“もっとお客様に寄り添い、相手の立場になって行動したい”という意識が咄嗟の場面でも活かされ、今回の救出劇につながったのだ。
この時、一緒に応急処置に加わった副店長の菅氏は日頃からスタッフに「すべてのお客様から、ありがとうと言っていただけることをしよう!」と話しているそうだ。お店のスタッフ全員が、このような想いで日々お客様と向き合い、町いちばんのお店を目指す。だからこそ、クルマに乗る方だけでなく、乗らない方にも頼られる存在になれたのだろう。
何かが起こってからではなく、何も起こらない安心を
井口氏の勤める蒲田の町は年配のお客様も多く、暑さが本格的になるこの時期「体調に気をつけてくださいね」と一人ひとりに丁寧に声がけを行っているという。基本的なことではあるが、町の人の安心を願うからこその一言なのだ。
たとえば、夏の点検ではエアコンの作動をいつもより念入りに確認するなど、何かが起こってからではなく、何も起こらないことを願い、お客様に気づかれないところで“当たり前の安心”を支える。
また、この仕事のやりがいを聞いてみると意外な答えが返ってきた。「あまり深く考えていない」と井口氏は語るのだ。
基準はあくまで目の前のお客様に満足いただくこと。自分のやりたいことをまず考えるよりも、日々向き合うお一人お一人の笑顔をなにより大切にしたいと動く、井口氏のむしろ実直な答えと受け取れた。
最後に「お客様と親しくなり、プライベートな話をしていただけると嬉しいです」と笑顔で話す姿が印象的であった。
熱中症になられたお母様と娘さんから、「必死の思いでトヨタのお店に駆け込みました。あの時に助けていただけなかったらどうなっていたか分かりません。感謝の気持ちでいっぱいで本当に嬉しかったです」とメッセージをいただいた。
「かけがえのない一日」では、井口氏のように目の前のお客様のことを想い、一人ひとりの幸せを願うトヨタの販売店スタッフとお客様との実話を、今後も紹介していく。