中日スポーツ・東京中日スポーツWeb「トーチュウF1 EXPRESS」とのコラボ企画第9弾は、女子高校生ドライバー佐藤こころにスポットライトを当てる。
中日スポーツ・東京中日スポーツWeb「トーチュウF1 EXPRESS」とのコラボレーション企画第9弾は、女子高校生ドライバーとして「KYOJO CUP」を戦った佐藤こころにスポットライトを当てる。1月末にはKYOJOメンバーと一緒にアラブ首長国連邦(UAE)で開かれたドバイ24時間レースに初挑戦。初めてづくしの4輪デビュー戦で貴重な体験をした。
佐藤が初めての4輪レースに挑戦できたのは、香港に拠点を置くレーシングチーム「KCMG」と、「TOYOTA GAZOO Racing(TGR)」のコラボレーションで実現。昨季のKYOJO CUPでランキング上位5選手(下野璃央、翁長実希、斎藤愛未、佐藤こころ、佐々木藍咲)に対し、願ってもない育成機会となる海外レース参戦というご褒美が贈られたようだ。
普通自動車の免許も持たない佐藤は初めてのことばかりだった。「海外レースも、ハコ車(ツーリングカー)に乗ったのも全部初めてでした。私たちがエントリーしたのはこのレースでは1番遅いクラスだったので、速いクルマをうまく避けるのが難しかったです。最初の走行では初めてのことがたくさん重なって頭がパンクしそうになりましたが、走るにつれて慣れていき、最終的には安定して走れたと思います。もちろん課題はたくさんありましたが、みんなで最後まで走りきれたことがすごくうれしかった」
アクシデント絡みで全体の走行時間が少し削られたようだが、5選手とも1時間20分のスティント(走行機会)を3回経験。KYOJOの初代女王で現在はスーパーGTや海外レースにも参戦する小山美姫が、KYOJOドライバーのまとめ役になって、経験が少ないドライバーに対してさまざまなサポートを行ったという。
佐藤は夜間走行や、チームとの無線を使ったやりとりなども初めての経験だった。それでも数々の貴重な経験は刺激的だったようで、これまでフォーミュラ一辺倒だった興味が、ハコ車を使った耐久レースにも広がったという。また、貴重なアドバイスを受けた小山をリスペクト。「分かりやすく何でも教えてくれました。(私も)小山さんのようになりたいです」と目指すべき先輩に出会えたようだ。
KYOJO2年目の昨季は2度の表彰台を経験し、ランキング4位という好結果を残した。4輪初年度だった2024年は、大苦戦で1ポイントも稼げずランキング外。そこからシリーズで使う車両がフォーミュラカーになった昨季は「ラストチャンスだと思って、すごい頑張りました」と大きな成長を果たした。
4歳で始めたカートでは、デビュー戦で優勝するなど確かな戦績を残してきた。日本自動車連盟(JAF)のジュニアカート選手権では初めての女性ウイナーになるなど存在感をアピールし、2023年の全日本カート選手権FS-125では男性に交じってランキング5位を獲得。16歳になった2024年にJAFから限定Aライセンスの発給を受けてKYOJOに参戦した。初年度は試行錯誤の連続だったようだが、「毎戦学ぶことが多く、ものすごく楽しかった」と、経験を積むごとに4輪レースで必要なことをみるみる吸収していった。
レース活動を始めたのは、ロードレースの参戦経験がある両親の影響という。父の大介さんは全日本選手権を戦い、母の隆子さんも地方選手権を経験。佐藤は「子どもにモータースポーツを経験させようとしていたのですが、父がバイクで大けがをしたこともあり、まだ安全性が高そうな4輪のあるレーシングカートを始めました。私は最初のレースで勝てたこともあり、どんどんとレースの世界にのめり込んでいきました」と当時を振り返る。
レース活動に力を注ぐため、単位制の「飛鳥未来きずな高校」神戸キャンパスに進学した。登校が限定的なため、出席日数などを心配せずにレース活動に集中。この1年はトップドライバーもトレーニングに活用するドライブシミュレーターを積極的に行ったという。「知人の助けも借りて、週1~2回は通いました」と実走経験の少なさを補った。
4月からは兵庫県の自宅にほど近い大学へ進学する。レース活動も、昨季と同じ体制でKYOJOへの参戦が決まっている。「開幕戦から優勝を争いたいです。昨年は2度表彰台に上れましたが、いずれも3位でしたから」と、初戦から女王を見据えた戦いを思い描く。
将来の目標は、国内最高峰のスーパーフォーミュラへの参戦という。「4輪レースはスーパーフォーミュラを見て憧れました。私の『夢』です。でも、まずは与えてもらった環境で一番いい結果を残していきたい。絶対に妥協せず、諦めず集中して戦っていきたい」。大きな夢を実現するため、確実なステップを刻み続けていく覚悟をにじませた。
ただ、まだ3月に18歳を迎える高校生。この先に待ち構えるだろう、世界の広さは実感できていない。「まだ自分の視野が狭いというか、今はとにかく可能性を広げていきたいし、存在感を発揮していきたい」。憧れる小山のように、自らの力で世界への扉もこじ開けられるドライバーになるため、目の前の戦いを一つずつ制していく。