本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。なんと今回は、養豚!?
「えっ、クルマとブタの共通点?」
関連性をイメージしづらいこの2つだが、ある共通点がある。それはクルマづくりも養豚も、いくつもの作業工程がある点だ。
日本一の豚肉生産地・鹿児島県では、クルマづくりの改善を畜産業にも取り入れようとチャレンジが始まっている。これらの改善は、あらゆる仕事で活用できるので必見です!
自動車会社が何しに来たんだ
近年、資材高騰や人材不足、疫病など、畜産業を取り巻く環境は厳しくなっている。
また、ブタは暑さに弱く猛暑の影響を受けやすい。さらに力作業が多いが高齢化は加速…。
だからこそ、作業をラクにしつつ生産効率を高めるトヨタ生産方式(以後TPS)を導入する必要があった。
JA鹿児島県経済連 西村亘平さん
畜産業は、昔ながらの「見て覚えろ」という勘やコツに頼ることが多いです。でも今後の人材不足を考えると“誰でもできる仕事”にすることが大事でした。
とは言っても、ベテランにはそれぞれのやり方がある。客観視できるトヨタさんなら固定概念を取り払えると思いました。
はじめは鹿児島弁が強すぎて、何を話しているかわかりにくかったと思いますけど(笑)。
地元の産業を守るため、西村さんは使命感に燃えていた。しかし、現場はすぐには変われない。当初は「自動車会社が何しに来たんだ?」「今さらやり方を変える必要はない」という声も多かったという…。
トヨタの工場で、カローラⅡやファンカーゴなどの組立作業を長年担当し、改善業務も経験してきたのが川手だ。今は生産管理手法や工程改善ノウハウで、農業の生産性向上に貢献しようとする部署に所属している。
アグリバイオ事業室 川手浩二 シニアエキスパート
当初は「なぜこの作業をしていますか?」と聞くと「ずっとこうしてきたからだよ!」という声も多かったです(笑)。
でもトヨタは、農家さんの困りごとを改善するためにTPSでお役に立ちたい。それが地域のためになるし、若者が希望を感じてくれれば農業に活力を与えることにもつながると思うんです。
具体的には下記の改善が行われた。なんでもないような改善が、大きな効果を発揮しているから驚きだ。
倉庫を整理整頓するだけで時間短縮
モノの置き場所を決めると、探す時間を月換算で4.5時間も削減できた。「いつか使えるかも」と保管していたものも不要だと気づけ、紛失リスクも減っていった。
たった1つの衝立で、安全&大幅時短
広い通路中央に衝立をつくると、200kgもあるブタが暴れずに一列で歩くようになった。人間が怪我をするリスクが低減し、移動時間はなんと34%短縮。改善、恐るべし!
道具をまとめた台車で作業をラクに
子ブタの「体重測定」「分娩処置」の2台の台車を1台に集約。作業ごとに台車を交換する必要がなくなり柵をまたぐ回数が減った。腰への負担軽減と安全性を向上させつつ月12時間もの作業時間を削減。
ブタさんの移動を安全&スムーズに
砂利道だと歩くのを嫌がりまっすぐ進まなかったが、コンクリートにして、柵で道を狭めるとまっすぐ歩くようになった。1回の移動に4人で1時間以上かかっていたが、2〜3人で30分へと時短。
農場長の高田さんは、改善の効果をこう評す。
JA鹿児島県経済連 根占子豚供給センター 高田昭弘 場長
200kgもある母ブタが突進してくると大怪我のリスクもあります。敷地は広いし人員は限られ、ブタの移動も大変でした。人材不足や高齢化も進んでいたので、これらの改善でとても助かりました。
当初は、ずっと続けてきたやり方を変えることに反発もあったが、改善で自分たちの仕事がラクになると、一気に雰囲気が変わったそうだ。
ところで、1匹のブタさんには、何個おっぱいがあるか知っていますか?
取材現場で「え、そうなんですか!」と我々も驚いたのだが、その答えは…。