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2019.12.04
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WRCで共に戦った仲間達に、豊田章男が送ったメッセージ

2019.12.04

トヨタが世界ラリー選手権に参戦して3年目。今まで共に戦ってきた、チームを去る仲間への豊田からの感謝の言葉。

トヨタは2017年からヤリスで世界ラリー選手権に出場している。
今年が3年目のシーズンだった。

昨年はチームとしての勝利であるマニュファクチャラーズタイトルを獲得、そして今年は、3人いるドライバーの内の一人”オィット・タナック”がドライバーズタイトルに輝いた。

豊田章男はチーム(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team)の総代表という役割を務め、少なくとも年に一度は現地に赴き、チームメンバーと共に戦う。

オィット・タナック選手
オィット・タナック選手

昨年のフィンランド戦では、2017年から共に戦うヤリ-マティ・ラトバラ選手が3位を獲得、そして、オィット・タナック選手が優勝。
一緒に表彰台に上り、シャンパンを掛け合って、勝利を喜んだ。

先日(2019年11月27日)、ニュースリリースで2020年シーズンのドライバー体制が一新されることが報じられた。
そのリリースに今年の3人のドライバーの名前の記載はなかった。

こうしたWRCのリリースでは、チームの代表がコメントを寄せることが多い。
例えば、勝った時は、必ず、豊田がコメントを寄せている。

今回のリリースでも豊田のコメントが載っていた。
普通なら新体制に対する期待が寄せられそうなものだが、そこに綴られていたのは、今まで一緒に戦ってきた仲間への感謝の言葉だった。

最初は、チーム立ち上がりから共に戦ったヤリ-マティ・ラトバラに向けて

ヤリ-マティ・ラトバラ選手
ヤリ-マティ・ラトバラ選手

ヤリ-マティ、3年間ありがとう。
僕が初めて、フィンランドに行った時、トヨタは、まだWRC復帰を決めていなかった。
はじめてのWRCに興奮していた僕は、選手を直接見たくてホテルのロビーで出待ちをしていた。
そこに現れたのがフォルクスワーゲンのヤリ-マティだった。
ドキドキしながら声をかけると、君は実に気さくにこたえてくれた。
話しながら、僕がトヨタの回し者だと気づいた君は、自分の乗っていたカローラやセリカの話を、とても嬉しそうにしてくれた。
こんなにトヨタのことを覚えていてくれている選手がいる内にWRCに戻らなきゃと、復帰への決意ができたのは、あの時だった。
トヨタファンの気さくなフォルクスワーゲンドライバーに出会えていなかったら、今、トヨタはWRCにいなかったかもしれない(笑)。

その2年後、君がうちのエースドライバーになってもらえると聞いた時は、不思議な縁に本当に感動したよ。
そして、今だから正直に言うと、最初のシーズンが始まる前、1年目から勝てるなんて思っていなかった。あの時は「1年かけて表彰台に上ろう」が我々の目標だった。
でも、初戦のモンテカルロで君はすぐにトヨタを表彰台に導いてくれた。その翌月には、表彰台の一番高い所にまで連れて行ってくれた。本当に夢のようだった。
昨年、やっとフィンランドで君と一緒に表彰台に上れたのはとても嬉しかった。
あとから写真を見返したら、オィットに渡されたシャンパンを僕は真っ先に君の方に向けていた。そのくらい君と上れたことが嬉しかったってことだと思う。
カローラやセリカをあんなに大切に乗ってくれている君だから、これからもトヨタのサポーターでいてくれると信じてます。よろしく。

シャンパンぶっかけ.jpg

ラトバラとの出会いがWRC参戦を決めたということが語られている。
トヨタの仲間になる前から続く5年間の想いが感謝と共に綴られていた。

続いて、1年間だけの仲間となってしまったクリス・ミークへ

クリス・ミーク選手
クリス・ミーク選手

クリス、君にも、今だから正直に話さないといけないことがあります。
君を迎え入れる時、ヤリスが転がったり、道を間違えたり、駐車場を走ってしまうんじゃないかと、すごく心配だった(笑)。
でも、君は、トヨタのために、しっかり仕事をしてくれた。どんな時でも限界までアタックしてくれたし、元エンジニアだからこそのアドバイスでヤリスを強くしてくれた。1年間ありがとう。

ラトバラに比べると短いが、冒頭にとても正直な想いが語られている。
ミークは、トヨタに移籍する前はシトロエンの選手だった。
以前、ミークの乗るシトロエンが1位のままで迎えた最終ステージ、ゴール間近でミークが道を間違えて駐車場に入り込んでしまったことがある。
そのことを最後の最後で茶化した。
ドライバー同士、そしてラリーを愛する者同士だからこそのリスペクトを感じる感謝の伝え方だ。

そして、最後が、今年チャンピオンを獲ったタナックに向けたメッセージ。

そして、オィット…。
チャンピオンという夢を君が叶えられたこと、自分のことのように嬉しく思う。そして、その手伝いをさせてもらえたことをトヨタは誇りに思っている。
僕は友山(GAZOO Racing Company プレジデント)と違って表彰台に上るのが苦手だったんだけど、昨年のフィンランドで君が初めて僕に高い所への上り方を教えてくれた。君のおかげで、やっとあの景色を見ることができたし、シャンパンがいかにベトベトするものなのかも知ることができた。本当にありがとう。
「目標を達成した今、環境を変えて次の挑戦に臨みたい。」という君の決断は本当に素晴らしいと思う。来年からは君がトヨタのライバルになる。強いライバルがいることは、僕らにとっての大きなモチベーションになってくる。
表彰台の上り方も、シャンパンの開け方も、しっかり教えてもらったから、次に表彰台で会う時は、上から君にシャンパンをかけることができると思う。また表彰台で会おう!

タナックはライバルチーム(ヒュンダイ)に移籍する。
敵になりゆく選手ではあるが、その決断に敬意を払い、強力なライバルとなる彼を自分たちのモチベーションにしていくと決意を伝えた。

そして、最後の文章に豊田章男の「負け嫌い」が表れている。

「また表彰台で会おう」

チーム代表が表彰台に上がるのは優勝した時しかありえない。

もし、豊田が表彰台でタナックに会うことがあれば、タナックは下の段からTOYOTA GAZOO Racingを見上げていることになる。

だから、豊田はシャンパンを「“上から”かける」と書いているのだ。
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