トヨタの国内全工場が停止した小島プレスへのサイバー攻撃から1年。誰も経験したことのない危機をどう乗り越えたのか。舞台裏に迫った。
2022年2月26日、トヨタ自動車の仕入先で、自動車の内外装部品の生産を行う小島プレスが、不正アクセスによるサイバー攻撃を受けた。クルマは部品がひとつでも揃わないと組み立てることができない。そのため、トヨタ自動車も国内の全14工場を停止せざるを得ない事態に。
“生産を止めない、納入を止めない”を合言葉に、被害を最小限に抑えようと奮闘した小島プレスの社員。その甲斐もあり、トヨタ自動車の工場停止は1日にとどまり、約1か月後にはシステムもほぼ復旧した。
それから1年が経過し、小島栄二社長や社員に、当時の復旧作業の様子や、今だからこそ話すことができる想いを語ってもらった。
「今となっては、あの事件を乗り越えることで、社内が一体感を持てた」と振り返る小島社長。ネットワークシステムを遮断し、アナログ作業に逆戻りしたことで、ベテランから教えてもらえた仕事の本質。そして社員の心を一つにしたカレーとは?
サイバー攻撃直後は、これまでのシステムを利用した業務が一変。部品の納入先や時間は“紙かんばん”を打ち出しての管理に、段ボール箱いっぱいの設計図なども手作業で仕分け・配布しなければならなくなった。
若手にとっては、経験したことのない作業ばかり。それを支えたのがベテランの存在。小島社長はベテランから仕事を教わったからこそ、「どの情報を誰に最短で伝えるか、仕事の本質に気付かせてくれた」と振り返る。
影響は意外なところにも。これまでシステムで管理していた社員食堂も使えなくなり、提供できたのはレトルトのカレーのみ。それでも社長も社員も、“同じ釜の飯”を食べることで深まった一体感。「ありがたかった」「救い」と当時を思い出す社員の笑顔、一皿に込めた小島社長の想いは、動画でぜひ確認してほしい。
サイバー攻撃の被害から4日後には、豊田章男社長が小島プレス本社を訪れ、「(トヨタ自動車と小島プレスが)一丸となって復旧にあたろう」と言葉をかけたという。
そんな両社の深い絆のルーツは、それぞれの創業までさかのぼる。そこには、トヨタが大切にする仕入先との「共存共栄」「相互繁栄」にも通じる歴史があった。
「世界のトヨタから」は、静岡県裾野市に建設中のWoven Cityの最新情報を紹介する。