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豊田社長が学園生に伝えた「大切にしてほしい」こと トヨタ工業学園卒業式(後編)

TOYOTA NEWS 2021.03.16 UPDATE

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学園生の笑顔のために

コロナ禍で行われた、トヨタの企業内訓練校であるトヨタ工業学園の卒業式。学園生が楽しみにしている式典後の豊田社長との交流も感染対策を取って実施され、これで終了となるはずだった。

学園生一人ひとりと会話しながら、社員手帳にモリゾウスタンプを押す。 緊張した面持ちで卒業生代表の言葉を述べた今福さんも満面の笑顔に

ところが、豊田社長は再び学園生が待機するホールへ戻り、壇上に上がってマイクを取った。突然始まった豊田社長と学園生のフリートーク。そのやり取りの一部を紹介する。

豊田社長

ご卒業おめでとうございます。

学園生

ありがとうございます。

豊田社長

おめでとうございまーす!

学園生

ありがとうございます!

豊田社長

おめでとうございまーす!!!

学園生

ありがとうございます!!!笑

豊田社長

これがいいよね。学園のよさ。(式典のときは)堅いけど、普通のティーンエイジャーですから。人間らしい。せっかくの機会ですので、僕の話を聞くのもいいんですが、何か僕に聞きたいことがある人?

(「はいっ!」と元気よく手が上がる)

学園生

EVFCV、電気を使ったクルマに時代が変わっていく中で、社長はやっぱり「ガソリン車が好きだ」とおっしゃっているのを動画で拝見しました。僕もガソリン車が好きで、もっとクルマ好きを増やしていきたい。どうしたらいいですか?

豊田社長

「クルマが好きだ」ということを全身で表現していけばいいと思う。全身で。僕はもう65歳のシニアなのに、まだクルマが好きだということを全身で表現しています。 電動化だとか、CASEとか、環境問題とか、いろんなことを言われる中で、音を出して走るクルマが好きだと平気で言っています。

最後にどんなクルマを選ぶのかはお客さまが決めることでしょ? トヨタはフルラインでいろんなものをつくっていて、それだけ選択の幅がある会社なんです。

みんなはこれから、いろんな分野の仕事を担当すると思います。まず、その与えられた仕事と自分自身は縁があったと思ってください。それで、その仕事を好きになることが必要なんじゃないかなと。それに加えて、クルマが好きっていうことを表現していけばいいと思います。

学園生

社長になるにはどうすればいいですか?

豊田社長

まず僕をまねして、僕を抜くことじゃないの?(笑)だから僕がやれる程度のことをやっているうちは抜けないね。抜けないだろうな。まずこちらを、100%研究して全部勝たなきゃだめだよ。だから頑張ってね。

でもね、何年か待っていれば必ず死ぬから(笑)。長期戦に持ち込むか、それとも若い社長になりたいんだったら徹底的にやることだね。頑張ってね。

学園生

配属がエンジン開発の部署ですが、いずれWoven Cityなど、電動化に対応する職場にも行きたいと思っています。エンジンと電動化につながりはないと思うけど、エンジンで学んだことを生かすためには今後どうしていったらいいと思いますか?

豊田社長

自分で考えてください! ただ、エンジンもモーターも、クルマを動かす心臓であることは間違いないでしょ。まぁ、それくらいだね、ヒントは。なんて言っているけど、僕も回答は知らないんだよ。

式典の厳かな雰囲気から一転、会場にはたくさんの笑顔と笑い声があふれた。どんな状況でも立ち止まらず、腐らず、新しいやり方を考え、新しい道を進んできた学園生たち。この子たちにとって少しでも記憶に残る卒業式にしてあげたい。笑顔にしてあげたい。豊田社長のそんな想いが表れた行動だった。

大切なのはやっぱり・・・

そして、この質問をきっかけにクルマの電動化の話に。

日本のクルマがすべてEVになると、日本の今の発電能力ではまかなえないこと。充電に時間がかかるため、ガソリンスタンドよりも多くの充電ステーションが必要で、その整備に莫大な費用がかかること。

そもそも、火力発電の比率が高い日本では、発電時に多くのCO2を排出しており、同じクルマでもその国のエネルギー比率によって、ライフサイクルで考えたときのCO2排出量が変わるということ。

この話の続きに、豊田社長から未来を担う次世代のリーダーたちへのメッセージが込められていた。

豊田社長

これが今の現実です。地球温暖化とかいろんなことがあって、(化石燃料を)燃やすことを少なくしていこうじゃないか、環境を未来の子供たちに残すにはどうするんだと考えると、自動車業界としてもいろいろやっていかなきゃいけない。だけど、EV化すれば済むというのは間違っています。

エネルギー政策をどうしなきゃいけないのか。それから、クルマだけEVにしても仕方がないのであって、世の中の産業の構造をどう変えていくかという難しい話があると思います。

こういうときにメディア報道とかいろんな先生方のお話もあるんだけれども、大切なのはやっぱり「現地現物」でしっかりと事実を押さえていく。そういうことを学園でも学んだでしょう。

だから「誰かがこう言っていた」「ここに、こう書いてあった」「はて、どうなんだろう?」と、まず自分で事実を押さえるという行動をしてみる。それはぜひお願いしたいと思います。

そういう情報をどう使うか、それで誰を喜ばせるために何をすべきなんだ?ということが、今後大事になると思いますし、私みたいに先が見えた人間よりも、あなたたちは未来がある、未来が。そういう人がやっぱり正しい未来を創っていくんじゃないのかなと思いますから、頑張ってくださいね。

健康に気をつけて、そして感謝の気持ちを忘れないように頑張っていただきたいと思います。おめでとうございました!

学園生

学園生、起立!礼!(全員)ありがとうございました!!

豊田社長

ありがとう!

モリゾウスタンプを押してもらった社員手帳には、それぞれの卒業後の決意が書かれている

豊田社長は、昨年の香川編集長の取材にこう答えている。

「現場さえしっかりしていれば100年に一度の大変革期、いろんな変化があっても大丈夫だと思っている」

卒業した学園生たちは、将来トヨタの現場のリーダーになる人材である。次の時代を引っ張っていく彼らに大切にしてもらいたいこと。

豊田社長の想いが詰まったメッセージで卒業式は締めくくられた。

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