コロナ禍で迎えた新年。日本の移動を支える550万人に自工会豊田章男会長が送った言葉。
2021年1月8日。日本自動車工業会(自工会)をはじめ、部品製造、自動車販売、バスやタクシーなどの輸送、そして燃料や保険に至るまで、自動車に関連する諸団体のホームページに、自工会 豊田章男会長から自動車業界で働く550万人に向けたメッセージが動画で掲載された。
この「550万人」という言葉は、元日から放送開始となったCMや新聞広告でも使われている。
なぜ、この「550万人」に向けたコミュニケーションが始まったのか? その想いが、今回のメッセージ動画に込められていた。
日本経済を支えてきた自動車業界
昨年12月17日。記者の質問に答えた自工会 豊田会長は、コロナ禍で日本全体の就業者数が減少する中、自動車業界は雇用を増やしている事実を訴えた。
新型コロナウイルスの猛威で社会に不安が広がる中、感染に細心の注意を払い、たとえ日が当たらなくても、「ありがとう」と言ってもらえることがなくても、一人ひとりが努力を積み重ね、雇用を守り、日本経済が停滞しないように支えてきた。
自動車業界が動けば、もっと日本の力になれる。もっと世界の力になれる――。CMでも、今回のメッセージ動画でも、そんなメッセージが表現されている。
ブランドや企業の枠を超えて、クルマを走らせる「550万人」を主人公にしたCMを、なぜつくろうとしたのか?
その想いが語られた豊田会長のメッセージを、トヨタイムズでも、動画と全文でお届けする。
正月広告に込めた想い
自工会 豊田会長 年頭メッセージ全文
日本自動車工業会会長の豊田でございます。自動車産業で働く550万人の皆様、あけましておめでとうございます。そして、ありがとうございます。
第3波の一層厳しい状況の中で、今もなお、私たちの命を守るために、懸命に闘っておられる医療従事者の皆様、現場で闘っておられるすべての方々に改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
コロナという脅威と闘いながらではありますが、皆様と新年を迎えられたことをうれしく思っております。
昨年は、世界中の人々が、「自由に移動する」ことができないということを経験しました。同時に、「移動できることの有難さ、幸せ」を実感した年でもあったと思います。
さらに、もう一つ。私たちの「移動」は多くの仲間によって支えられているということに気づかされた年でもありました。では、動画をご覧ください。
クルマを走らせる 550 万人。
部品を含め、その製造・販売・整備などに関わっておられる方々が237万人。
タクシー、バス、トラックなどの輸送に関わっておられる方々が269万人。
ガソリンスタンドや自動車保険などサービスに関わっておられる方々が35万人。
たくさんの仲間が働くことで、はじめて、私たちの移動が実現しています。
だからこそ、新年を迎えるにあたり、浮かんだ言葉は、「おめでとうございます」というよりも「ありがとうございます」という想いでした。
これは私だけではありません。
昨年、コロナ危機に直面したとき、「一緒に乗り越えよう」「自動車で日本を元気にしよう」。そう言ってくださった部品工業会、車体工業会、機械器具工業会、販売協会連合会。皆様もまったく同じ気持ちでした。
そこで、今年のお正月には、自動車産業を支えてくださっている皆様に感謝の気持ちをお届けしようということにいたしました。
先ほど見ていただいた動画は、リアルな現場で働く方々を撮影させていただきました。そのとき、たくさんのお話も伺わさせていただきました。
皆様の力強いお言葉から、逆に、私たちが元気をいただいたように思っております。
だからこそ、この動画は、皆様への感謝の気持ちをお伝えするだけではなく、「新しい年を迎えて、頑張ろう」という 550 万人の皆様へのエールになればとも思っております。
550万人の力を結集するとき
ここで、自動車産業がどういうものなのか、数字で見てみたいと思います。
自動車産業が生み出す雇用は550万人です。日本で働く10 人に1人が自動車産業に関わっていることになります。
国に納めている税金は15兆円。そして、経済波及効果は2.5倍。自動車生産が1増加すれば、全産業が2.5倍、増加することになります。
これは、自動車産業が動けば、日本の多くの産業が動くということを示しております。
コロナ危機が続く中でも、自動車産業と日本経済が回復に向けた道のりを何とか進んでいけるのは、550万人の皆様お一人お一人が、それぞれの現場で、懸命に努力し、仕事をしていただいているからだと思います。
昨年、菅総理が、「2050 年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言されました。
地球環境問題の解決に向けた総理のご英断に敬意を表しますとともに、私たちは、その実現に向け、全力でチャレンジしたいと思います。
これは、「すべての自動車が電動車になればいい」という単純な話ではありません。
むしろ、その自動車を生産するために使われる電気。その電気をつくるときに出る二酸化炭素の量を減らすことが大変重要になります。
だからこそ、みんなが一緒になって、カーボンニュートラルを実現する道筋を考え、そして、国家をあげて取り組むことが大切だと思っております。
ホームタウン、ホームカントリーと同じように、地球というホームプラネットを大切にし、次の世代に、美しい故郷を残していくために、この取り組みを支えていくのが私たちの役割であり、責任であると思っております。
コロナ危機の前から、「100 年に一度の大変革期」を生き抜くために、私たちは、一緒になって、CASE と呼ばれる技術革新に取り組んでまいりました。
変革の準備はできています。今こそ、自動車産業550万人の力を一つにするときだと思います。
550万人の一歩が明日につながる
今年は東日本大震災から10年。東京オリンピック、パラリンピックの開催も予定されております。震災からの復興、コロナからの復興が大きなテーマになる年です。
「誰ひとり取り残さない」という姿勢で、国際社会が目指している「SDGs」の取り組みを加速させる年でもあると思います。
「私たちは動く」。たとえ立ち止まったとしても、また動き出すことが大切だと思います。
お一人お一人が自分以外の誰かのために去年できなかったことを1つだけやってみる。もう一歩、踏み出してみる。みんなの一歩をあわせると550万歩になります。
私たちの一歩は、日本、そして地球の明日につながっていると思います。
そして、一歩、踏み出してくれた仲間に対して、「ありがとう」と言い合える。そんな自動車産業、そんな日本を皆様と一緒につくりたいと思っております。
そのために、私自身も、変革に向けた更なる一歩を踏み出す覚悟です。
コロナとの闘いは厳しさを増しておりますが、こんな時代だからこそ、「深刻にならず、真剣に」。みんなで心をあわせて、2021 年を、少しでも明るく、少しでも楽しくしてまいりましょう。
くれぐれも健康・安全第一で。今年もどうぞよろしくお願いいたします。本当にありがとうございます。