2019.10.16

変わる「もっといいクルマづくりの原点」 ~下山 開発車両試乗記(ヤリス編)~

トヨタは新型車ヤリスを世界初公開し、20202月中旬に日本で発売すると発表した。925日の記事(INSIDE TOYOTA #34)では、マスタードライバーの豊田章男社長が発表前のカローラツーリングをテクニカルセンター下山で試乗したことを紹介したが、実は同日、ヤリスの「味見」も済ませていた。今回は、試乗のエピソードに触れながら、ヤリスへの豊田の想いをお伝えしたい。

「ヒエラルキー」への挑戦

「いいねぇ」。ヤリスの開発車両から降りた豊田が、笑みを浮かべながらカメラに語った。「乗った瞬間に、ひとクラス、ふたクラス上になって登場した感がある」。それこそ豊田がこのクルマに求めていたものだった。

皆さんは、前身のヴィッツにどんなイメージをお持ちだろうか。セカンドカー? エントリーカー? 営業車というイメージもあるかもしれない。豊田はヤリスでクルマの持つ「ヒエラルキー」に挑戦するという。「大きいクルマ=高級」、「小さいクルマ=安い」。クルマの大きさによって、無意識のうちに誰もが持っているこのようなイメージを覆し、「小さくてもカッコよくて魅力的」、「所有していることが誇らしい」、そう思えるクルマを目指してきた。今回の試乗で、そんな姿に近づいている手応えが得られたのは、豊田にとって喜ばしいことだった。

意外かもしれないが、ヴィッツは豊田のマイカーでもある。社長、そしてカーガイといったイメージから、高級車やスポーツカーに乗っている姿を想像する人も少なくないと思われるが、普段使いのクルマはiQやヴィッツなどのコンパクトカーだと言う。「マスタードライバーのセンサーの基準はコンパクトカーに合わせておいた方がいい」というのがその理由だが、豊田は過去に「もっといいクルマづくりの原点はコンパクトカーにある」とも語っている。

コンパクトカーに求められるもの。それは、より多くの人に移動の楽しさや自由を提供するために、小さなボディサイズで安全性や快適な室内空間を実現すること。排気量は小さくても、快適な走りを実現すること。そして何より、それらを手頃な価格で実現すること。つまり、クルマづくりの競争力が顕著に表れるのがコンパクトカーづくりだ。経営者として、マスタードライバーとして、トヨタのクルマづくりのベースを確認するために、意識して小さいクルマに乗る。

今回ヤリスに乗った印象を「もうちょっと乗っていたい、もうちょっと会話してみたいと思わせるクルマ」と表現した豊田。それは「もっといいクルマづくりの原点」と語ったコンパクトカーのレベルが底上げされていることへの手応えでもある。ヤリスはコンパクトカー向けのTNGAプラットフォームの頭出しとなる車種であり、Toyota Compact Car Company初の新型車となる。また、生産はトヨタ自動車東日本の岩手工場で行われ、仕入先や販売店とともにオールトヨタで東北の復興、地域の活性化に貢献していく使命も担う。新たなステージに入ったトヨタのクルマづくりを象徴する一台が、今回のヤリスと言えるかもしれない。

豊田章男 ヤリスを語る
ヤリスで挑む クルマのヒエラルキー